無人島がちょっとずつ建物で賑わっていく――チルで穏やかな街づくりシム『島の民: 新たな海岸線』プレイレポート

『島の民: 新たな海岸線』レビュー

 2025年7月11日に『島の民: 新たな海岸線』(原題:『ISLANDERS: New Shores』)が発売された。

 本作は2019年に発売された『ISLANDERS』の続編。穏やかなサウンドがまったりと流れるなか、自分のペースで街づくりができる素敵なゲームだった。

 ゲームプレイは非常にシンプル。建造物パックをクリックして、提示される選択肢の中からひとつの建物群を選び、好きなところにポンポンと置いていくだけだ。

 建物を建てることによってスコアと建造物ポイントが貰える。スコアは名前の通りだが、建造物ポイントは新しい建造物パックを手に入れるのに必要になる。貰った建造物を駆使してもポイントが足りず、パックを入手できなくなかったらゲームオーバーだ。

 ある程度スコアを貯めると、次のマップに移行できる。マップにはいくつも種類があり、どこも平たくて何でも建てやすい島から、マグマが滴る火山島、徐々に潮が引いて低地が見えてくる島など、さまざまに用意されている。

 建物にはそれぞれ効果があり、隣接したほうがボーナスが入るもの(家屋)、なるべく高いところに置くべきもの(灯台)、狭いところに置いたほうがいいものなど(シャーマンの小屋)、豊富に存在する。それらの特色を見極め、適するポイントに置いていこう。

 ゲームオーバーの概念はあるが、初回から高得点を目指していかなければ、そこまでシビアなゲームに感じることはないだろう。初めのうちはなんとなく景観が良くなるように気の向くまま建物を置いていくだけでも、街づくりシムで遊んでいる感じがする。遊んでいるうちに、徐々に建物同士のシナジーがわかってくることだろう。

 建物をいくつも建てていると「恩恵」を得ることができるようになる。これはスコアをブーストするためのもので、建物と同じくふたつの選択肢から好きなほうを選ぶことができる。建物の大きさを拡張するものから、同じ建造物が並んでしまったときのペナルティを消すものなど、それぞれに効果があるので、適したものを使っていきたい。

 ここまではゲームのルールを説明してきたが、本作の特長はなんといってもその雰囲気だ。のっぺりしたアートワークはそこまで美しいものではないが、淡い配色のレベルが多くて目に優しい。

 ぎっしりと詰まった市街地も、沖にぽつんと建てられた漁師の家も、それぞれ趣があり、色々な角度から眺めていたくなる。スコアが高くなることだけを考えて配置しているのに、「自分は島を設計する天才なのでは?」とうぬぼれてしまうほど素敵な仕上がりになるのだ。もちろん、サンドボックスモードも存在しているので、思いのままにマップを作ることも可能だ。

 ちなみに、筆者が好きなのは崖の家である。崖の壁面にしがみつくように建てることができる住宅群で、何とも言えない風情を感じる。

 サウンドも素晴らしく、穏やかな島国の感じがたっぷりと表現されている。75分という長い尺で流れるので、すぐに聞き飽きるということもないだろう。

 フォトモードも充実しており、作った街をじっくりと眺めることもできる。また、フォトモードのフィルターも別売りされているので、とことんまでスクリーンショットの出来にこだわることも可能だ。

 たまに起動してのんびりと島を作っていくのも良し、シナジーをしっかり覚えてスコアアタックに興じるのも良しの、見た目以上に懐の深いゲームだ。タイトルの翻訳がダサすぎるのと、ゲームプレイ自体に大きな変化がないので、飽きが来るのが早いというところが難点だが、チルい時間を過ごしたい人にぜひともオススメである。

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