『プロセカ』の“新たな魅力”も発見 楽曲がリアルな体験と結びつく『セカイシンフォニー2025』レポート

 『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(以下『プロセカ』)における毎年恒例の一イベントともなりつつあるコンサート、『セカイシンフォニー』。『プロセカ』に収録された楽曲の数々を荘厳なオーケストラサウンドで堪能できる『セカイシンフォニー2025』横浜公演が、今年も6月15日にパシフィコ横浜国立大ホールにて開催された。

 2021年の初開催から今年で5回目を迎える本コンサートだが、魅力のひとつでもあるのがオーケストラアレンジのボカロ曲と、コンテンツに登場する声優陣との生パフォーマンスだ。これまで各ユニットの面々が例年登場してきたなか、今年はようやくラストに出番が回ってきた「MORE MORE JUMP!」(モモジャン)から、桐谷遥役・吉岡茉祐と日野森雫役・本泉莉奈が出演(花里みのり役・小倉唯は急きょ出演見合わせに)。指揮・井田勝大氏率いる東京フィルハーモニー交響楽団&スペシャルバンドの情感豊かな演奏で、各楽曲や『プロセカ』というコンテンツの新たな魅力も垣間見えた充実の約2時間だったと言えるだろう。今回は上記日程より、昼公演の模様をレポートする。

 オープニングを飾ったのは、オーケストラ陣の演奏のみで届けられた「NEO(作詞・作曲:じん)」。さまざまな楽器が代わる代わる主旋律を担当し、楽曲自体の持つサウンド編成のメリハリも生演奏で聴くことでより如実に浮き彫りとなる。通常はエレクトロやバンドサウンドを主とするものが多いボカロ曲が、弦楽器をメインとするオーケストラアレンジとなり、その聴き比べを楽しめる点もこのライブコンサートの特色のひとつだ。

 「あの子たちのこれまでの軌跡を思い出しながら演奏を楽しんで」という初音ミクのMCののち、公演は例年通り4ユニットの楽曲をそれぞれ作中の物語とともに堪能できるコーナーへ。実際にゲーム内に収録されているストーリー映像から劇伴のようにオーケストラの演奏が始まり、そのまま2DMVや3DMVへと展開する音楽×映像の演出が醍醐味でもあるこのダイジェスト。より深い没入感の中で各ユニットのこれまでの歩みを辿れる点も、セカイシンフォニーの特徴的なポイントとなる。

 一番手となる「Leo/need」のステージでは、バンドのキーマン・日野森志歩の葛藤と向き合い、4人がプロデビューの目標を本格的に決意するシーンから「「1」(作詞・作曲:164)」「レグルス(作詞・作曲:ゆうゆ)」の2曲を演奏。

 続いての「Vivid BAD SQUAD」のハイライトでは「下剋上(作詞・作曲:Misumi)」と「blender(作詞・作曲:こめだわら×R Sound Design)」が披露されたが、冒頭に流れたのはプロセカ屈指の感涙シーンでもある、古瀧凪の死を知った白石杏が号泣する一幕。客席のあちこちから聴衆のすすり泣く声が聴こえ、それもより一層大勢の涙を誘っていた印象だ。

 続く「ワンダーランズ×ショウタイム」のコーナーにも、ややシリアスな緊張感あるムードはそのまま引き継がれる形に。鳳えむがいつもの天真爛漫さを潜め、真剣な面持ちで劇団経営という課題に向き合うユニットストーリーのワンシーンから、演奏されたのは「オールセーブチャレンジ(作詞・作曲:香椎モイミ)」と「サイバーパンクデッドボーイ(作詞・作曲:マイキP)」の2曲。

 そして前半最大の山場となったのが、「25時、ナイトコードで。」のダイジェストだろう。自らの秘密に苦しむ暁山瑞希に東雲絵名が寄り添うユニット屈指の名シーン再演に、映像が展開され始めた瞬間、会場全体で小さな悲鳴にも似た感嘆の声が挙がる。大勢が涙を拭いつつ「余花にみとれて(作詞・作曲:keeno)」「トリコロージュ(作詞・作曲:煮ル果実)」を奏でるオーケストラの美しい旋律に耳を傾けており、その光景は非常に印象的な公演のハイライトのひとつともなっていた。

 今年で5年目を迎える本公演だが、このような“今年だからこそ得られる感動”の積み重ねが、おそらく今日ここに集まる大勢の聴衆を虜にしている一因でもある。

 あらためて振り返ると、ここ数年間コンサート自体の演目構成の型はある程度近しい形に留まりつつあるが、各ユニットを取り巻く環境は日々展開される物語の中で少しずつ変化・成長している。時にキャラクターたちの最新状況をよりリアルタイムに体感したり、ユニットにとって特に意義深いワンシーンを今の地点で改めて追体験したり。公演に一度足を運んだことがあっても、演奏曲の違いのみに留まらないセカイシンフォニーが毎回もたらす“今年だからこそ得られる感動”を求め、数度に渡り足を運んでいるファンもきっといるに違いない。これまで毎年各ユニットが担当してきた、キャラクターを演じる声優陣とオーケストラによるコラボパフォーマンスも、まさにそんな“今年だからこそ得られる感動”の象徴的なコンテンツだ。

 4ユニットのハイライトののち休憩を挟んで、公演後半はモモジャンに大きく焦点を当てた内容が中心に。ステージに登場したゲスト声優2人の生アフレコを入口とし、冒頭に演奏されたのは「チームメイト(作詞・作曲:HoneyWorks)」。その後遥と雫の掛け合いやこの日欠席の桃井愛莉からのビデオメッセージという、アイドル・モモジャンらしさ満載のMCを経て、「イフ(作詞・作曲:ユリイ・カノン)」ほか2曲で構成されたメドレーが披露された。

 例年の公演と比較した際、今年特に印象的だった点はやはり客席の雰囲気だろう。モモジャンといえばコンテンツ内の各種公演・ライブの際も、やはりアイドルらしいコール&レスポンスで観客を盛り上げるのがユニットの最たる特徴でもある。ただ当然この日はオーケストラコンサートという厳粛な場も相まって、声優陣が登場した際も当初は控えめだった観客の反応。しかしステージ上のふたりからの呼びかけや煽り、そして映像演出に促されるように、徐々に客席には緑色のペンライトの明かりが増え、自然なクラップやコール&レスポンスの声が巻き起こっていく。

 メドレーの演奏後には表情を切り替え、素のトーンでMCトークを繰り広げるゲスト2人。例年、セカイシンフォニーでは各ユニットの声優陣を順番にゲストへと迎えてきたが、5年目にして待ちに待ったモモジャン回を迎えたことへの喜びや、この日急きょステージを欠席した小倉唯への思いと共にここに立っていることにも触れ、気持ちのこもった歌唱で「アンチユー(作詞・作曲:Chonozo)」をパフォーマンスし、公演本編の幕を閉じた。

 客席からのアンコールに応え、オーケストラのみで演奏された「QUEEN(作詞・作曲:kanaria)」「少女レイ(作詞・作曲:みきとP)」などゲーム実装曲5曲のメドレーを経て、再度ゲストのふたりがステージに登場。モモジャンとしてのラスト曲「アイドル新鋭隊(作詞・作曲:Mitchie M)」では、披露前にオーケストラコンサートとして異例の“オールスタンディング”を促し、戸惑いでざわめきつつも客席が総立ちになる一幕も。曲に合わせたコール&レスポンスで会場を一体感で包んだのち、初音ミクのMCを経てアンコールラストの「熱風(作詞・作曲:kemu)」の華々しくダイナミックな管弦アレンジで、昼公演は無事閉幕を迎えた。

 クラシカルなライブコンサートでありながらもしっかり会場内をユニットの色に染め、まさにプロセカというコンテンツ、そしてセカイシンフォニーならではの、非常にユニークな音楽体験を楽しめる空間となった本公演。また今年で各ユニットのゲスト出演も一巡し、来年以降はおそらく新たな形式での展開も期待されるだろう。端末の画面を飛び出し、日頃愛聴するボカロ曲とリアルな体験を結びつける貴重な場となる本コンサートは、今後もきっと大勢の観衆を魅了し続けていくに違いない。

オフィシャル写真撮影:国府田利光
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