『PICO4』新たに“腰トラ”が登場 『VRChat』進出に見る、PICOの日本市場へのまなざし

PICOの発表会で感じた、日本市場への目配せ

 PICOが、ついに“腰トラ”をリリースする。正式名称は『PICO Motion Tracker Waist Version』で、その名の通り腰の動きをトラッキングするための専用デバイス。重量はたったの27gで、最大25時間の連続使用が可能ながら価格は5,900円(税込)と手頃だ。

 すでに『PICO4 Ultra』と『PICO Motion Tracker』を持っているユーザーなら、これを購入するだけで足と腰を追加した“6点フルトラ”環境(頭・両手・腰・両足6点による全身トラッキング)が完成する。「10万円ちょっとで始められるフルトラ」という、これまでにないコストパフォーマンスが見どころだ。トラッカーを体の前側か背中側につけるかで体の表現感がかわるところも使い勝手の良さがある。

ユーザーが待ち望んでいた“腰トラ”追加

 PICOは2024年に発売された『PICO4 Ultra』と『Motion Tracker』で、すでにフルトラ環境の“入口”を整えていた。本体と2個セットの『Motion Tracker』を合わせて頭と両手・両足による簡易フルトラを実現できるという発表は、初めてのヘッドセット購入を検討していた層や、買い替えタイミングを狙っていたユーザーの関心を集めた。

 しかし、多くのユーザー(特に『VRChat』ユーザー)が「腰にもつけられれば……」と感じていたのも事実。頭と両手のほか、腰と両足の3点を追加する6点トラッキングでのフルトラ環境で遊ぶ方が多いため、中には足用トラッカーをもう1セット買って腰に流用するユーザーもいたほどだ。今回の腰トラ登場は、こうしたユーザーの切実な願いにしっかり応える形となった。

『VRChat』内でのお披露目イベントに見る“本気度”

 これまでも『PICO4 Ultra』と『Motion Tracker』の軽量性・手頃さは評価されていたが、今回のリリースやその発表の仕方を見る限り、単なる新製品発表に留まらず、ひとつのメッセージも感じられる。それは、“PICOは日本のVRChatユーザーをしっかり見ている”という、明確なまなざしだ。

 リリースにあわせて行われた『VRChat』でのお披露目イベントでは、VRで活躍するパフォーマーたちが実際に『PICO4 Ultra』と両足と腰に『Motion Tracker』を装着した状態での歌やダンスを披露。その動きは滑らかで、『VRChat』上で行われる演目として過不足ない出来だった。

 手頃ではあったものの「トラッキングが飛びやすい」と言われていた『Motion Tracker』はOSアップデートによってトラッキング性能が向上しており、それも大きなポイントだ。イベントを通して一度もトラッキングが飛ばなかったので、日常使いなら十分に安心して使えるよう、しっかりと改良がなされていることのアピールの場としても機能していた。

日本市場へのアクセルを踏んできたPICO

 そもそもPICOは、中国ByteDance傘下の企業。これまではグローバル展開を進める中で、日本市場に特別力を注いでいるという印象はなかった(少なくとも、筆者の目線からは)。

 しかし『PICO4 Ultra』の発売以降は、『Virtual Desktop』に対応するなど日本のVRChatユーザーに“刺さる”アップデートを行ってきたり、大々的なセール販売を行ったりと、より積極的な展開を見せてきていた。

 今回の“腰トラ”発売に際しても、ヨドバシAkiba店において4月20日までの店頭体験キャンペーン、芸能人来店イベントを実施するなど、PICOが日本のVR市場を“見ているだけ”ではなく、“本気で獲りに来ている”――そんな姿勢が見えてくる。

「これでいい」から「これがいい」へ

 『PICO4 Ultra』自体は、ヘッドセット単体の価格で見れば『Meta Quest 3』よりも高価だ(PICOが89,800円、Quest 3は81,400円)。しかし、PICOは「最初からフルトラで遊びたいなら、デバイス側でトラッキングのシステムを構築して安価で提供しよう」という方向に舵を切っており、ヘッドセットと3つのトラッカーで合計10万円台となっている。

 『Meta Quest 3』を購入した場合、比較的安価かつそれなりの精度を出せるトラッカーを選ぶと4万円はくだらない上に、トラッカーの選択肢が多いぶん、セットアップの煩雑さや価格帯と精度のバランスで悩むこともある。

 もちろん、その分肘や胸にトラッカーを装着してトラッキング点数を増やしたり、より高性能なデバイスを選んだりと、選択の幅は広がる。しかし、軽くて、シンプルで、動作も安定していて、しかも安いとあれば、PICOのエコシステムは魅力的に感じる人も多いだろう。筆者の目線から見ても、これまで「フルトラって難しそう」と思っていた人にこそ、「これがいい」とおすすめしたい選択肢だ。

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