『ZAIKO』がチケッティングとストリーミングの両軸で描く“成長戦略”
コロナ禍を経てふたたび躍進する、日本のライブエンターテインメント業界。
2025年はロッキング・オンのニューイヤー洋楽フェス『rockin'on sonic』から始まり、春以降はソニーミュージックの新しい都市型フェス『CENTRAL』やエイベックスが中国エンタメ企業とタッグを組んだ『STRAWBERRY MUSIC FESTIVAL TOKYO』、韓国発のEDMフェス『World DJ Festival Japan』など初開催されるフェスが控えている。
こうしたなか、イベント主催者と参加者をつなぐのが電子チケット販売プラットフォームである。紙のチケットではなく、デジタル化されたチケットを発券するチケッティングシステムを導入することで、入場者数や収益の管理、チケット販売データにもとづいたマーケティング施策の立案にも活用できるのだ。
国内最大の音楽イベントポータルサイト「iFLYER」のチケット販売機能を独立・分社化させ2019年からサービスを開始したZAIKOは、多言語・多通貨に対応した海外市場への発信力を強みに事業を展開してきた。
もともとはクラブイベントやフェスなどのチケットを取り扱うことが多かったが、近年はアイドルやお笑い、VTtuber、e-スポーツなど幅広いイベントをカバーするようになり、さらなる成長が期待されている。
ZAIKOを運営するZAIKO株式会社 代表取締役CEOの島田 和大氏に、ライブエンターテインメント業界の動向やZAIKOの事業戦略について話を聞いた。
業界を20年渡り歩いて感じた「コンテンツ大国・日本の可能性」
ーーまずはこれまで渡り歩いてきたキャリアやエンタメ業界の変遷について教えてください。
島田和大(以下、島田):この20年間、私はエンターテインメント、メディア、コンテンツをキーワードに活動してきました。この業界に興味を持ったきっかけは、日本の映画や音楽、アニメ、漫画などのコンテンツが世界規模で拡大し、国内の産業を支える時代が来ると考えていたからです。
私がユニバーサルミュージックに在籍していた2010年代は、Apple MusicやSpotify、Amazon Musicといったサブスクリプションサービスが登場し、世界的に音楽業界が大きく変わる転換期でもありました。
その後、会社の運営や組織作りを経験したいという思いからAmazon Musicへ入社し、音楽配信サービスのグローバルプラットフォーム運営や経営の仕方を学びました。
そして、ユニバーサルで得た業界の知見やネットワークと、Amazonで学んだディストリビューションの観点を組み合わせて、 ワーナーミュージック・ジャパンの代表取締役COOを拝命しました。
ーーZAIKOに入社したのはどのような経緯があったのでしょうか?
島田:ZAIKOの創業者であるマレック・ナサー氏から、私がワーナーミュージックのCOOを退任するタイミングで「アドバイザーになってほしい」と声をかけていただいたところから、ZAIKOに関わり始めました。
私自身、これまでエンタメ業界のなかでも大企業でキャリアを歩んできました。主に日本支社での勤務だったため、ヘッドクオーターは海外にあり、会社全体の直接的な経営に携わってきたわけではなかったのですが、ZAIKOは東京に経営の判断機能が集約されており、ベンチャー企業の経営とグローバル戦略の推進に関わることで、ビジネスマンとしてさらに成長できると感じたのが入社の決め手です。
ーーコンテンツ大国と呼ばれる日本の成長や可能性をどのように感じていますか?
島田:日本の音楽市場はアメリカに次いで世界第2位と非常に大きいため、日本国内である程度完結してしまい、海外展開へのインセンティブはそれほど強くありませんでした。しかし、ここ10年でYouTubeやSpotify、Apple Music、Amazon Musicといった世界的なディストリビューションプラットフォームやSNSが台頭し、日本のコンテンツがグローバルに展開され、さらに広がりを見せています。
音楽で言うと、以前は音楽を聴くにはCDを購入しなければなりませんでしたが、いまでは世界中の音楽がサブスクリプション型のストリーミングで簡単に聴けるようになりました。ストリーミングが主流になったことが、コンテンツ消費のグローバル化を促進した要因のひとつで、YOASOBIのような個のアーティストが大きな影響力を持つきっかけとなりました。
さらにYOASOBIの「アイドル」のように、音楽や映像が連動して波及していく現象も、ストリーミングプラットフォームによって、コンテンツの流通が容易になったからだと言えます。こうしたなか、日本のエンタメだけではなく、食や文化も含めたコンテンツには独自の強みがあり、海外の人々からも注目を集めています。現在はまさに、日本ならではの無形資産を海外に展開し、“Jカルチャー”を輸出していく重要な時期にいると感じています。