シリーズ最多同接を記録も評価は「賛否両論」 約2年ぶり最新作『ユミアのアトリエ』に感じた“過去作との共通点”

 3月21日、『ユミアのアトリエ ~追憶の錬金術士と幻創の地~』(以下、『ユミアのアトリエ』)が発売を迎えた。

 2025年屈指の注目作として期待されてきた同タイトル。現時点では、良い結果と決して良いとは言えない結果が交錯する、複雑な状況へと直面している。『ユミアのアトリエ』は事前の期待と相応の評価を獲得できるのか。シリーズの過去作が歩んだ道から、成否の分岐点を考える。

「アトリエ」シリーズから約2年ぶりの最新作が登場

『ユミアのアトリエ』ローンチトレーラー

 『ユミアのアトリエ』は、コーエーテクモゲームスが開発/発売を手掛ける人気RPG「アトリエ」シリーズの最新作だ。舞台は、錬金術によって繁栄を極めたものの、突如発生した謎の天変地異によって滅んだアラディス帝国。それから数百年後、同国を含む大陸では、「滅亡を招く危険な術」として錬金術が「悪」「禁忌」とされていた。主人公のユミア・リースフェルトは母の事故死をきっかけに、自身が錬金術士の家系であることを知る。「なぜアラディスは滅びたのか」。「なぜ錬金術は禁忌となったのか」。失われた歴史の真実を求め、ユミアは冒険の旅へと出かけていく。

 特徴となっているのは、シリーズならではの調合の仕組みと、2種類の攻撃距離「レンジ」を取り入れた新しいバトルシステム。伝統的な前者と、革新的な後者の融合によって、これまでの作品におけるゲーム性とは差別化が図られている。

 前作『ライザのアトリエ3 〜終わりの錬金術士と秘密の鍵〜』(以下、『ライザのアトリエ3』)以来、約2年ぶりのナンバリングタイトルで、おそらく「追憶」と名付けられるであろう、新たなサブシリーズの第1作となる。直近の作品をプレイしていなかったフリークにとっては、新たな物語のはじまりということもあり手を出しやすいタイトルである一方で、シリーズにとっては、得た評価によって今後の展開に影響をもたらす、試金石となるタイトルでもある。

 対応プラットフォームは、PlayStation 5/PlayStation 4、Nintendo Switch、Xbox Series X|S/Xbox One、PC(Steam)。価格は、通常版が税込9,680円(※)となっている。それぞれの公式ストアでは、製品版へとセーブデータを引き継ぐことができる体験版も配信中だ。

※通常版のほか、さまざまな特典が同梱された特別版も複数展開されている。詳細は公式サイトを参照のこと。PlayStation 4版とNintendo Switch版はすべてのバージョンにおいて、1,100円値引きされる。

プレイヤー数と評価のあいだにあるギャップ。成否の行方は今後の対応が鍵に

『ユミアのアトリエ』アバンタイトルムービー

 2025年でも指折りの注目作として期待が集まるなか、ようやくお目見えとなった『ユミアのアトリエ』。リリースからはまだ10日ほどと短い期間ながら、すでに前評判に違わない結果が見えてきつつある。

 Steamプラットフォームに関連するさまざまな情報を閲覧できる非公式データベース・SteamDBによると、同タイトルのSteam版は発売直後から、10,000〜15,000人ほどのプレイヤーに遊ばれている。この数字はシリーズ史上最多となるもの。現時点では、これ以上ないスタートダッシュを切っている現状だ。

 その背景には、体験版の好評からくる影響があると考えられる。Steamプラットフォームで展開されているシリーズ全作のピーク時の同時接続者数を比較していくと、同デモは6,068人で、前作『ライザのアトリエ3』に次ぐ3位につけている。このことからわかるのは、『ユミアのアトリエ』に関心を持っていた層の少なくない部分が、実際に体験版を手に取り、ゲームそのものを経験したうえで、購入/プレイに至っているという実態だ。広く支持されているシリーズでありながら、多くの変化を盛り込んだ同タイトルだが、その出来がターゲット層に受け入れられたことが好スタートの要因のひとつとなっているのだろう。

 また、前作『ライザのアトリエ3』や、同作が分類される「秘密」シリーズの好評も、スタートダッシュを後押ししていそうだ。特に前者に高評価が集まったことは、直接の理由のひとつと言えるのかもしれない。

 『ライザのアトリエ3』は「秘密」シリーズ3部作の最終章として発表されているため、リリース時には過去2作をすでにプレイしている層にしか手に取られなかった可能性がある。つまり、「秘密」シリーズとしての実際の訴求力は、(上述したシリーズの同時接続者数ランキングで4位に位置する)第1作『ライザのアトリエ 〜常闇の女王と秘密の隠れ家〜』(以下、『ライザのアトリエ』)の時点で、ある程度決していたともとらえられるのだ。

 ご存知のとおり、『ライザのアトリエ3』はその後、「アトリエ」シリーズ史上でも屈指の高評価を獲得した。プレイヤー数という観点ではおそらく、リリース時の瞬間風速以上に、発売からこれまでの長い期間に分散した特徴があるのだろう。同作の好評をもとに、「秘密」シリーズ3作が時間をさかのぼる形でプレイされ、総じて良い体験を提供したことが、次作にあたる『ユミアのアトリエ』の初動に前向きに作用した面がある。

 反面、評価に目を向けると、同時接続者数の好調とは対照的に、振るわない現状も見えてくる。Steamに寄せられたユーザーレビューでは、約35%が「不評」とし、中央のレビューランクである「賛否両論」へと分類されている(記事執筆時点)。彼らの声は概ね、「キャラクターデザインは素晴らしい」が、「調合やバトルに盛り込まれた新要素がイマイチ」「UIが悪く、不具合が多い」といったあたりへと着地する。システムそのものというよりは、バランスや仕上がりに対する不満が多い印象だ。

 シリーズのオールドファンのなかには、こうしたプレイヤー数、ゲーム性と評価の乖離に既視感を覚える人もいるのではないだろうか。2009年発売の『ロロナのアトリエ 〜アーランドの錬金術士〜』(以下、『ロロナのアトリエ』)は『ユミアのアトリエ』と同様に、大きな期待のなかリリースへと至ったが、実際には不具合が多く、当初は含まれるゲーム性相応の評価へと結びつかなかった。

 その後、「アーランド」シリーズの続編にあたる『トトリのアトリエ 〜アーランドの錬金術士2〜』(以下、『トトリのアトリエ』)『メルルのアトリエ 〜アーランドの錬金術士3〜』(以下、『メルルのアトリエ』)が成功を収め、シリーズそのものが一定のファンを獲得すると、第1作にあたる同作もふたたび注目を集めるようになり、リメイクをきっかけに再評価されることとなった。現在、Steamで配信されているリメイクをベースにしたDX版は、92%のユーザーに「好評」とされ、上から2番目のレビューランクである「非常に好評」へと分類されている。逆説的にはなるが、『ユミアのアトリエ』もまた、『ロロナのアトリエ』と同様に、UIの悪さや不具合といった不評点に対する修正を経て、ゲーム性が正当に評価されるときがやってくるのかもしれない。

『アトリエ ~アーランドの錬金術士1・2・3~ DX』プロモーション映像

 先にも述べたとおり、サブシリーズ全体での訴求力は、初作の評価に影響される面がある。『ロロナのアトリエ』での出遅れを持ち直した『トトリのアトリエ』のような例は稀だ。余談ではあるが、「アーランド」シリーズの第3作『メルルのアトリエ』は当時、「アトリエ」シリーズの最高初動を達成している。長く不倒となっていたその記録を破ったのは、『ライザのアトリエ』だった。

 『ユミアのアトリエ』は直面する課題をクリアし、「秘密」シリーズから良い形で受け取ったバトンを、まだ見ぬ次作へとつなぐことができるだろうか。事前の期待と相応の評価を獲得するためには、今後の対応が肝となりそうだ。

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