限定20台抽選販売。ヤマハの新提案『TORCH T01』から電子ピアノの新しい風が吹いてきた!

ヤマハ『TORCH T01』が電子ピアノに新しい風を吹かせる!

 直近ではウッドショックが建築業界を直撃したが、そのずっと以前から木材資源の利活用に取り組んできたのが楽器業界だ。

 楽器は固有の響きをもち、加工性に優れる「木」という素材から生み出され、楽器それぞれに適した木質が求められてきた歴史がある。しかし自由に伐り出し、思うままに楽器に使える時代は終わった。未来につながる楽器づくりのためには、柔軟な発想による利活用が欠かせないのだ。

ヤマハはなぜわずか20台の電子ピアノを販売するのか?

 ヤマハが2月18日から20台限定(!)での抽選販売を開始した電子ピアノ『TORCH T01』(※)は、その答えのひとつである。※TORCH=トーチ=灯の意

提供:ヤマハ株式会社

 ヤマハの山浦敦代表執行役社長は、「『TORCH T01』はSDGs時代に応えた木材の利用と音楽文化の普及・発展の声を掛け合わせて生まれました。ヤマハの楽器づくりにおいて木は欠かせないものであり、多種多様な木材を使用していることからも、これを上手に利活用することは重要な使命でもあります」と、『TORCH T01』に取り組むヤマハとしての意義をアツく語った。

ヤマハ代表執行役社長の山浦敦氏。

 『TORCH T01』の最大の特長は、オーボエなど木管楽器に使われるグラナディラ(アフリカン・ブラックウッド)の未利用材を粉砕し、つなぎ役の樹脂素材30%とミックスして鍵盤にしたことだ(独自の木質流動成形技術による射出成型)。『TORCH T01』を目にした時の驚きやある種の違和感は、このグラナディラに由来する「全黒鍵盤」に寄るところが大きい。

グラナディラの丸太。真っ黒な木質がよくわかる。黒×黒の鍵盤だが、触感と若干の色味の相違でコントラストをつける工夫がなされる。

 

 

ヤマハ電子楽器事業部戦略企画グループ『TORCH T01』担当の安藤真澄氏。

 ヤマハ電子楽器事業部戦略企画グループ『TORCH T01』担当の安藤真澄氏は、「『TORCH T01』は木のぬくもりを感じられる電子ピアノです。グラナディラの黒い鍵盤をはじめ、本体外装には天然オイル仕上げがなされた木質ボード(集成材)を使用。グラナディラの樹皮柄をレーザー加工によって描くほか、ボリュームノブはグラナディラの無垢削り出しです」と、木のぬくもりにこだわったディテールを語った。ちなみに椅子の上下調節ハンドルにはヤマハの音叉マークが刻まれている。どこまでも芸が細かい。

椅子の上下調節ハンドルには音叉マーク刻印が。鍵盤右脇のボリュームノブはグラナディラの無垢削り出し。レーザー加工によりグラナディラの樹皮柄を表現した本体板材。

 ジーンズや革製品、木工家具等と同様、弾き込むことによるエージングが楽しめるのも天然素材が含まれているからこそ。むろん鍵盤の耐久性は「ヤマハ製電子ピアノと同等」(安藤氏)というから長く、安心して弾き続けられるだろう。なお『TORCH T01』においては、通常ピアノの黒鍵、白鍵のコントラストに代え、テクスチャーとわずかな色味の違いによる区別が付けられている。

音楽家 江﨑文武氏に『TORCH T01』の楽器的魅力を直撃!

 だがより気になるのはその音色、楽器としての実力だ。なぜなら『TORCH T01』は飾り物ではない。存在の第一義は、楽器という道具である。ここで今回の特別ゲスト、音楽家の江﨑文武氏が登壇した。

発表会の特別ゲスト、江﨑文武氏。 提供:ヤマハ株式会社

 そのシックな佇まいと語り口、指先から奏でられるピアノサウンドは木のぬくもりをほうふつさせるもの。意外に感じたのは「クラビノーバ」シリーズ譲りの高品位サウンドが、比較的コンパクトな『TORCH T01』から発表会場にしっかり響いたこと。アコースティックとデジタル、双方の知見をもつヤマハ音響技術の本領発揮を感じさせられた瞬間だ。

 発表会閉幕後リアルサウンドテック編集部は、江﨑氏に「『TORCH T01』を見た実感」「弾いた実感」を直接インタビューするチャンスを得た。

 江﨑氏はKing Gnuや米津玄師作品への参加でも知られる新進気鋭の音楽家。幼少期からヤマハ音楽教室でピアノに親しんだ彼の目に、『TORCH T01』はどう映ったのだろうか。

 「アコースティックピアノの象牙鍵盤に近い弾き心地と、鍵盤表面のテクスチャー感をとても心地よく感じました。弾きやすさについては好みがありますので一概に言えませんが、わたしの好みですし、弾いていて自然に気持ちが入っていくものでした」。

 江﨑氏は愛機のライカM3でフィルム写真を愉しむ趣味人でもある。そのシャッターやフィルム巻き上げの感触が写欲をそそるように、『TORCH T01』の触感、佇まいが弾く気持ちを促すようだ。

 「一目見てかっこいいと思いました。家具のような木目の美しさがあって、経年変化も楽しめる。昨今あのローズピアノも復活しましたが、特にポップスの世界ではエレピサウンドが求められています。もし次作を期待できるなら、アコースティックとデジタルの間を突くような、ステージでがんがん弾けるTORCH T02が欲しいですね!」。

 『TORCH T01』は限定20台、3月31日までの応募からの抽選販売とする。本体、椅子、ペダルの3点セットで税込99万円と電子ピアノとしては値が張るが、この地球上でたった20台の販売であり、SDGs時代におけるエポックメイキングな機種だと捉えたらどうだろう。そう『TORCH T01』を手に入れることは、楽器づくりの歴史に直接タッチすることに他ならないのだ。

 2025年春。ヤマハから電子ピアノの新しい風が吹いてきた!

提供:ヤマハ株式会社

 

〇商品情報

ヤマハ TORCH T01/価格(税込)99万円(本体、椅子、ペダル) 
展示情報(2月19日~3月30日):ヤマハ銀座店、Yamaha Sound Crossing Shibuya、ヤマハミュージック 横浜みなとみらい、同名古屋店、同大阪なんば店。3月1日~3月31日には代官山 蔦屋書店でも展示。

https://jp.yamaha.com/products/musical_instruments/pianos/torch/t01/index.html

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