リリース間近の『TRIBE NINE』、成功へのターニングポイントは? カギを握る“没入感”の創出

 アカツキゲームスは2月8日、『TRIBE NINE(トライブナイン)』を2025年2月20日に全世界同時リリースするとアナウンスした。

 「ダンガンロンパ」シリーズに携わったスタッフたちによる新作ということもあり、開発発表時からファンの注目を集めてきた同タイトル。本稿では、事前の情報やクローズドβテストのレポートなどを踏まえつつ、サービスの開始にあたって『TRIBE NINE』がクリアすべき課題を考えていく。

「ダンガンロンパ」シリーズに携わった制作陣による理不尽都市アクション『TRIBE NINE』

ゲーム『トライブナイン』ティザーPV

 『TRIBE NINE』は、トゥーキョーゲームスが企画/監修を、アカツキゲームスが開発/発売を手掛けるアクションRPGだ。舞台は、デスゲームによって支配された「ネオトーキョー国」。同国を掌握する謎の仮面の男「ゼロ」の「すべてがゲームで決まる街にする」という宣言によって、理不尽な状況を強いられることになった少年・少女たちは、失った自由と夢を取り戻すべく、死と隣り合わせの過酷なバトルへと挑んでいく。プレイヤーは、主人公である黒中曜やその仲間たちの視点から、過酷なデスゲームに翻弄される反逆の物語を見つめていく。

 原作となっているのは、トゥーキョーゲームスとアカツキゲームスが共同で制作するメディアミックスプロジェクトで、同企画からは、2022年1月にTVアニメが放送されている。今回リリース日が決定となったのは、上述の展開の一環として開発が進められてきたゲーム作品。2024年8月には、サービス開始に先立ってクローズドβテストも実施されていた。

 『TRIBE NINE』は、2025年2月20日リリース予定。基本プレイ無料・アイテム課金型で、PC(Steam)とモバイル(Android/iOS)に対応する。今回のアナウンスと同日には、最新映像となる「Ver1.0リリーストレーラー」も公開となった。

没入感へのテコ入れが急務? CBTで浮き彫りとなった課題

【トライブナイン】Ver1.0リリーストレーラー

 『TRIBE NINE』の概要が明らかとなった2024年6月のタイミングで私は、同タイトルに含まれるであろうゲーム性について、ざっくりと推測を立てている。要約すると、「『ダンガンロンパ』シリーズのスタッフによって制作された『TRIBE NINE』には、『キャッチーなビジュアルとシビアな設定』『とっつきやすいシステムと“死にゲー”(※)としての骨太な難易度』など、相反する成分が同居するのではないか」というものだ。

 その後、同タイトルはクローズドβテストを迎え、一部ではあるものの、隠されていた部分が明るみに出た。アカツキゲームスが公表した同テストのレポートによると、参加したプレイヤーの全滅数は5,589に上り、プレイ可能な範囲のなかで最後に登場した「地下鉄」エリアのボス「デスペナルティ」の打倒率は6%だったという。

 これらの数字からわかるのは、『TRIBE NINE』が当初想定されていた(私が推測した)水準を超える難易度を持つことだ。“死にゲー”に馴染みのない層にとっては、このようなクリアに対する高いハードルが、楽しみながらプレイすることの障害となる可能性がある。

 この点に関しては、『TRIBE NINE』が買い切り型パッケージの「ダンガンロンパ」シリーズとは異なり、基本プレイ無料・アイテム課金型で展開されることも逆風として作用しそうだ。前者では、プレイヤーの好みに応じて適切な難易度を選ぶ仕様が一般的だが、後者ではその周辺がマネタイズポイントとなる都合もあり、そのような仕様が盛り込まれづらい。つまり、どれだけ難しくても、プレイヤーは自身の知識や技術、運などを駆使し、壁を乗り越えていかなければならなくなるというわけだ。

※何度もゲームオーバー(死ぬこと)を繰り返すなかで、自分なりの攻略法を編み出していくという性質を持つタイトルの総称。

 とはいえ、時に理不尽なゲームオーバーを強いられることで知られる「ダンガンロンパ」シリーズに慣れ親しんできたトゥーキョーゲームスのファンにしてみれば、取りたてて言うほどもないものなのかもしれない。実際に上述のレポートには、「一つのミスが大きな痛手となるスリリングな戦闘に魅力を感じた」「歯ごたえのある難易度が良い」「“死にゲー”ならもっと難しくてもいい」といった声が寄せられており、少なくとも公表されているなかには「難しすぎる」という旨の意見は見当たらなかった。

 その一方で、テストに参加したプレイヤーからは、世界観に対する表現やアクション性の不足、ゲームテンポやUIの悪さといった不満点も挙げられている。むしろこれらの方が、『TRIBE NINE』にとっては大きな問題となるのかもしれない。レポートによると、「ゲーム序盤におけるバトルの満足度の低さ」と「ゲーム進行の煩雑さ」によって、テストの最序盤にあたる「0章」をクリアした時点で、継続を断念してしまったプレイヤーが多かったのだという。フィードバックの収集からの約半年間で、上述の問題をどこまで解消できているかが、『TRIBE NINE』が界隈に受け入れられるためのターニングポイントとなりそうだ。

 『TRIBE NINE』はファンの期待に応えられるか。サービスの開始まであとわずか。同タイトルが一定の成功を手にし、「ダンガンロンパ」シリーズの文脈を受け継ぐ新たなIPとなっていくことを期待したい。

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