『VRChat』旋風と、去就が続いたVTuber業界――激動の2024年のバーチャル業界を振り返る

“激動の2024年” バーチャル業界振り返り

『サンリオVfes』から広がりを見せる、サンリオのバーチャル事業

【#サンリオVfes】SANRIO Virtual Festival 2024 ダイジェスト

 これまで継続的にバーチャル方面へプッシュしてきたサンリオは、今年さらにその勢いを強めてきた。2月〜3月に開催された『SANRIO Virtual Festival 2024』が、その幕開けだったと言えるだろう。ライブパフォーマンスやパレードに加え、ゲームワールドやアンドエスティとのコラボ衣装、大規模なコミュニティコラボなど、期間限定オープンの「バーチャルテーマパーク」として大きな発展を遂げ、よりにぎやかなイベントとなった。

【Nakayoku Creators】×【キヌ(Kinu)】 コンセプトムービー

 その上で、『SANRIO VIRTUAL IDOL CONTEST』、『SANRIO Virtual World Awards』、『サンリオバーチャルグリーティング!!』など『SANRIO Virtual Festival』のスピンオフイベントを続々と発表。次世代クリエイター応援プロジェクト『Nakayoku Creators』と合わせて、VTuberやVR発タレント・クリエイターの発掘に大きく力を注ぎ始めている。

 また、業界最大規模のグループを構築しているBrave groupとの資本業務提携や、企業・個人のIP登録機能を持ち込んだ創作プラットフォーム『Charaforio』など、多角的な展開への準備も着々と進めている。きたる2025年2月には『SANRIO Virtual Festival 2025』の開催も控えており、サンリオのバーチャルへの挑戦はさらなる熱気を帯びそうだ。

【#サンリオVfes】 「Sanrio Virtual Festival 2025」 2025年2月9日(日)~3月9日(日)開催決定!

『VRChat』のビッグイベントに5000人が集結

 2023年にはサンリオのほか、プリキュアシリーズも『VRChat』でイベントを開催したが、2024年はまた新たなビッグネームが現れた。

Week4【META=KNOT 2024 in AKASAKA BLITZ】

 まず、3月にはTBSの音楽フェス『META=KNOT』が開催された。VR発アーティストから、著名なバーチャルタレントまで、幅広い層が出演した本イベントは、既存の『VRChat』ユーザーのみならず、VTuberファンも訪れる、稀有な空間の一つになった。特に、開催の最終週となるWeek4は『VRChat』内同時接続数3,000人を確認。『VRChat』イベントとしては記録的な数値を弾いたのだ。

その場所は、たしかにバーチャルな存在と僕らを繋ぐ中継地点だったーー『META=KNOT 2024』Week4レポ

TBSテレビが3月30日から4月20日の毎週土曜日にかけて開催したメタバース音楽フェス『META=KNOT 2024 in AK…

 

1st LIVE "DEEP:DAWN" at FZMZ Point Zero - Recap

 かと思えば、それを塗り替える新勢力が“深海”から現れる。覆面アバターバンド・FZMZのVRライブ『DEEP DAWN』だ。予告なしのゲリラ開催から始まった本ライブは、圧巻の演出とパフォーマンスによって大きな話題を呼び、回を重ねるごとに『VRChat』内の同時接続数も積み上がっていった。最終的に、11月のリバイバル公演時には、5,100人超もの数値を確認できたほど。ここまでの数値を弾き出すイベントは『VRChat』の歴史を振り返ってみても、類を見ないものだ。

なぜFZMZはVRで“ゲリラライブ”を開催したのか HONNWAKA88×制作陣が振り返る、1st VRライブ『DEEP:DAWN』の裏側

TVアニメ『シャングリラ・フロンティア』のOPテーマを担当する、アバターバンド・FZMZ(ファゾムズ)。深海魚を模したアバターに…

深海の世界に引きずり込み、“トラウマ”をあたえる FZMZ・HONNWAKA88×制作陣が語り合う1st VRライブ『DEEP:DAWN』の裏側

TVアニメ『シャングリラ・フロンティア』のOPテーマを担当する、アバターバンド・FZMZ(ファゾムズ)。深海魚を模したアバターに…

 こうしたビッグイベントのほかにも、アニメ『serial experiments lain』の展覧会、シューズブランド・「DIANA(ダイアナ)」の3D衣装展開、アニメ『無職転生Ⅱ~異世界行ったら本気だす~』の公式衣装、ヤマハ発動機の公式ワールドなど、様々な企業・IPの『VRChat』新規参入が相次いだ一年だった。公式パートナー企業が増えた2023年を経て、『VRChat』のビジネスユースはさらに加速していくだろうか。

ディズニーとEpic Gamesは“新たな世界”を構築できるか?

Disney x Epic Games

 シンプルにおどろかされたニュースとして、ディズニーによるEpic Gamesの株式取得がある。総額は15億ドル。ディズニー、ピクサー、マーベル、スター・ウォーズなど、数多のキャラクターやコンテンツが存在する巨大なメタバース構築へ向けた投資と見られる。

 その“接続先”には、世界最大規模のメタバースとして発展した『Fortnite』も挙げられている。『UEFN(Unreal Editor for Fortnite)』によって創造性も高まり、経済性も実装された場所だけに、ビッグコンテンツとの融合は大きなインパクトを生むはずだ。さすがに、2024年中の動きはなかったものの、長期的観測はすべき事案だろう。

こんにちは、『Quest 3S』。さらば、『Quest 2』。

Introducing Meta Quest 3S

 『Meta Quest 3』の廉価モデル『Meta Quest 3S』の発売は、ある程度予想していたものの、満を持して「お手頃なMeta Quest 3ライク」が出てきたことは喜ばしい。筆者も実機をレビューしたが、『Meta Quest 2』を2024年仕様にリメイクしたような使い心地は、実に手に(あるいは、頭に)なじむものだった。

『Meta Quest 3S』は『2』から優秀な進化を遂げた初心者オススメモデル! HMDマニアによる比較レビューをお届け

10月15日に発売された、Meta社の新型VR/MRヘッドセット『Meta Quest 3S』。既存機種から性能を引き上げた“新…

 ゆえに、『Meta Quest 2』の終売が合わせて発表されたことも、今となっては納得のいくところだ。間違いなくVR業界を押し広げた名機だったが、2024年現在では型落ちなのが実情だ。フルカラーパススルーによるヘッドセット外部の状況確認や、初期セットアップの手軽さなど、『Meta Quest 3』のいいところを盛り込んだ『Meta Quest 3S』へ移行するのが、ベストな選択肢だろう。

 また、実験機としての側面も強かった『Meta Quest Pro』の終売も発表されたが、こちらは正直、不完全燃焼だったと感じる。コンセプトそのものは悪くなさそうだったが、作り込みなどは甘かったか。なお、無改造でフェイストラッキング機能搭載である点が、『VRChat』ヘビーユーザーに注目されていることも付記しておく。

Hello, 『Apple Vision Pro』

Hello Apple Vision Pro

 空間コンピュータ『Apple Vision Pro』の上陸は、日本のAppleファンやギークに大きな話題をもたらした。長年ウワサされてきた「AppleのXRヘッドセット」の実現に、ワクワクさせられた人は少なからずいるだろう。

空間コンピューティングは“自然である”ことと見たり――VR愛好家による『Apple Vision Pro』評

筆者は2018年よりVRデバイスを愛好している。これまで買ったVRヘッドセットは10台以上。先日は『Bigscreen Beyo…

『Apple Vision Pro』が50台以上集結するナゾのイベント「Apple Vision Proホルダー限定Meetup」に潜入

6月28日に日本に上陸した空間コンピュータ『Apple Vision Pro』。約60万円という超高級デバイスながら、長らくギー…

 筆者もまた、実機レビューと、ユーザーミートアップの取材を経て、その熱気にクラクラさせられた一人である。7月、銀座のApple Storeで『Apple Vision Pro』を買った筆者を、店員たちは拍手をもって送り出していった。約60万円の出費は正しく“清水の舞台から飛び降りる”ような決断だった。そこそこいろんな買い物をしてきた人生だが、まぁなかなか得がたい体験ではある。

 では、これが現時点で“使えるデバイス”かと言うと、さすがに時期尚早と言える。自宅でも、屋外でも使ってみたが、これが最もハマるユースケースは「贅沢な環境を構築できるプライベートシアター」あたりだ。「Apple TV」独占の空間ビデオコンテンツは見ておいて損はないし、様々な動画配信サイトも優雅に視聴できる。一方で、拡張ディスプレイ用途は、アップデートによってモニターサイズが飛躍的に拡大したものの、これが効果的にマッチするシーンは思いつかず、対応アプリもまだまだ少ない。

 こうした現状は、なんとなく、リリース直後の初代『Meta Quest』を思い出す。つまり、時間が経てばより豊かになるだろうとも言えるわけだ。また、『Apple Vision Pro』装備の外出時には写真や映像も記録しているが、「立体的に見える思い出の記録」が活きてくるのも、おそらく何年か先だろう。

 筆者個人としては、「少し早く取り寄せた未来」として、2025年もこのデバイスと付き合っていきたいところだ。

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