“沼男”横浜流星が放つ危険な香り ミステリアスな横顔に惹かれてしまう『わかっていても the shapes of love』1~3話
#2 特別じゃないとわかっていても
恵まれた才能と、振り向かずにはいられない魅惑的なビジュアルで漣の周りには常に人が集まっていた。自分はそのなかの1人であって、決して特別なんかじゃない。そう言い聞かせて自分の心の高鳴りを抑えようとしていた美羽。一方で、同じように自分を「特別な存在なんかじゃない」と、悩む人物がいた。院生2年の長壁颯(浅野竣哉)だ。
ひたすらストイックに木彫の仏像を掘り続けてきた颯。しかし、どんなに努力しても漣のような天才的な才能がないという虚しさは消えない。その劣等感は恋愛をするときにも通じており、密かに想いを寄せている椎名光莉(福地桃子)に気持ちを伝えられずにいた。
光莉も漣と同じくいつも人に囲まれているタイプ。特定の恋人は作らずに、その場限りの関係を楽しみながら心を満たそうとしていた。そんな彼女だからこそ、漣も同類だと気づくのだ。本当は、どこかで美羽や颯のようにまっすぐな性格を眩しく思っていることを。
「どうしたら偉大な芸術家になれるのか聞いていいですか?」と憧れる漣にズバッと聞くことができる颯。彼は彫刻についても一生飽きることはないと断言した。なぜなら彼にとって作品づくりとは自分と向き合う作業だから。そのスタイルは、「くすぶっている自分を作品にして、正当化するのいい加減やめたら?」と侮辱された美羽のそれと近いものがある。
徹底的に自分を掘り下げていく。その作業は、自分の弱さや苦しい部分をも見つめていかなければならない。決して簡単なことではないし、尽きることはない。「永遠なんてあるのかね」と遠い目をする漣と、「永遠を探してきます」と作業場に戻る美羽の対比が際立っていたのも、彼らの持っているものの違いを際立たせる。もしかしたら、漣や光莉にとっても、美羽や颯は「傷つくことになるかも」と安易に距離を縮めることを恐れる相手なのかもしれない。自分自身が知りたくないと逃げてきた部分にまでたどり着いてきそうな人だから。