“沼男”横浜流星が放つ危険な香り ミステリアスな横顔に惹かれてしまう『わかっていても the shapes of love』1~3話
#1 望んではいけないとわかっていても
舞台は、鎌倉にある美術大学。そこで彫刻学科の助手として働く浜崎美羽(南沙良)は、過去の恋愛にトラウマを抱えていた。2年前、恋人だったアーティストが美羽をモデルにした作品を発表。それは別れたくないと泣き叫ぶ姿だった。タイトルも「美しい羽」と見る人が見れば、すぐに自分がモデルだとわかってしまうもの。恋人にだけ見せる自分というものがある。その特別な顔をなんの相談もなく晒された美羽は深く傷ついたと訴えるのだが、逆に「キミはずっと同じところにいようとするよね。くすぶっている自分を作品にして、正当化するのいい加減やめたら?」と責められる結果に。
恋にも、そして作風にも自信をなくした美羽。それ以来なにかを望むことそのものに臆病になってしまった。「恋愛って結局、最後は傷ついて終わるじゃないですか。そんなものに心すり減らすくらいなら作品だけに集中したいなって思っていたんですけど……」と言っていた矢先、ある運命的な出会いを果たす。それが、大学に特別臨時講師としてやってきた若き天才芸術家の香坂漣(横山流星)だった。
しかし、「はじめまして」と挨拶した2人が、本当に初対面を果たしたのは助手と講師としてではなかった。漣が構内にある学長の銅像にペンキをぶちまける荒々しい姿を目撃してしまった美羽。すると、近づいてきた漣は慣れた様子で美羽の顔に手を伸ばし、飛び散ったペンキを指で拭う。常識外れの行動に、色っぽい手つき。状況的にはかなり危険な香りのする男だが、それ故に目が離せない。
人前では適度な距離を保ちながら人気講師としてその役割をそつなくこなし、2人きりのときには余裕たっぷりな表情で美羽に絡んでくる。それだけなら、まだいなせたかもしれない。しかし、美羽の心を傷つけたあの作品を、なんの躊躇もなく破壊する漣。それは、美羽にとって自分を解き放ってくれることでもあった。
かを愛することも、自分を信じて作品を作ることも、最終的に傷つく結果なら最初から望まない。そんなふうに思っている人はきっと少なくないはず。でも、その痛みをさりげなく理解して、一緒にぶち壊して次に進もうといざなってくれたら。それが、あの眼差しの持ち主だったら……どんなに傷つくとわかっていても、その光に飛び込まずにはいられない。