鞭をしならせ、太古の遺跡を駆け回れ――世界一有名な考古学者の知られざる冒険『インディ・ジョーンズ/大いなる円環』プレイレポート

『インディ・ジョーンズ/大いなる円環』先行レビュー

 12月9日、Bethesda Softworksより『インディ・ジョーンズ/大いなる円環』が発売される。

『インディ・ジョーンズ/大いなる円環』オフィシャルローンチトレーラー

 本作は80年代に銀幕を席巻した名画「インディ・ジョーンズ」シリーズのゲーム化作品。戦う考古学者インディ・ジョーンズとなり、ナチスやファシストといった敵よりも先に「大いなる円環」の謎を解き明かすのが目的だ。

 開発を担当したのは、近年の「ウルフェンシュタイン」シリーズを手掛けたMachine Games。誰もが知る大スターとなって遊べる本作は、映画体験とほぼ違わない大興奮間違いなしのスペクタクルが用意されている一方で、いくつか気になる点もあった。では、それらについて見ていこう。

※本プレイレポートを執筆するに際し、Bethesda Softworksより先行試遊のビルドをご提供いただいている。

映画さながらの臨場感 インディがバチカンやギザで大冒険

 舞台は1937年。時系列では『レイダース/失われたアーク《聖櫃》™』と『最後の聖戦™』のあいだを描いた作品だ。

 ある夜、インディがマーシャル大学に残って仕事をしていると、謎の大男が大学構内に侵入してきた。彼はインディを蹴散らし、猫のミイラという比較的どうでもいい宝だけを持ち去った。物盗りにしては妙だと感じたインディは、彼が残した証拠から、バチカン市国へと出向き、猫のミイラにまつわる謎を探っていく。そして彼は、世界中の重要な史跡をつなぐことで浮かび上がる「大いなる円環」の謎へと導かれていくのであった……。

 メインストーリー部分はまさしく「インディ・ジョーンズ」であり、映画で何度も観たようなパートが次々に押し寄せてくるので、100点満点の出来であった。

 じっとりとした密林の遺跡で蜘蛛にたかられたり、飛び立とうとする飛行船に鞭を絡めて無理矢理乗り込んだり、街の地下に隠されたカタコンベで炎を避けながらジャンプアクションをしたり、敵から奪い取ったメダルを扉に押し込んで回転させたり、まさしく“インディっぽい”体験に満ちたゲームだった。当然、ここぞというときには、あの名曲も流れるぞ!

 カットシーンもゲームプレイも同じくらいヒヤヒヤしたし、細かい謎を辿っていくことで話が無尽蔵に膨らんでいく点や、悪いやつの序列が顔を見た瞬間にわかる点など、娯楽大作として守るべきポイントがよくわかっている脚本であった。

 また、インディ本人の造形も良くできており、頭脳明晰で皮肉っぽく、腕っぷしと度胸はあるが女性の気持ちがわからないダンディを作れていたように思う。ハリソン・フォードの顔や声を使用しているわけではなさそうだが、ちゃんとインディ・ジョーンズらしいフォルムになっているのも嬉しかった。

圧巻のメインストーリーに比べ、やや水増しに感じるサイドコンテンツ

 本作はメインストーリーを進行する途中で、比較的広いマップを探索するパートがある。

 序盤のジャングルとマーシャル大学のマップこそ一本道だが、その後すぐにバチカン市国に出向き、本格的に猫のミイラについての手がかりを探すことになるのだ。

 といってもメインストーリーの導線はクエストマーカーで示されているのでいつでも進行することができる。猫のミイラの手がかりになりそうなサイドクエスト(アドベンチャー)も多数あるが、これらはクリアしなくてもメインストーリーが進んだので、マストではなさそうだ。

 これらの広いマップを探索するパートについては、メインストーリーのスペクタクルに比べると、やや水増しに感じる部分も多く、評価が難しいポイントだった。

 評価点としては、風景があげられる。風光明媚で荘厳なバチカンの街並みに、軍のテントが張られていて、制作者たちが見せようとする時代の空気を感じる。システィーナ礼拝堂やバチカン宮殿の地下に巨大な遺跡が広がっているという大ウソもワクワクする点だ。

 ただ、本作のマップに散らばっている収集要素や謎解きはストーリーと関連しておらず、それら単体で見てもとても面白いと言えるものはなかったので、わざわざ街を隅々まで見て回るほどのモチベーションは出なかったのが正直なところだ。

 ゲーム内で貯まるお金を支払うと収集要素がマップに表示されるのだが、その量は膨大であり(もちろんすべてを拾う必要はないのだが)やる気を出すのが難しいポイントだった。メインストーリーのついでに、ちょっと楽しむくらいがちょうどいい塩梅だろう。幸い、ストーリーが進んでもすぐに元のマップに帰れるので、そのあたりの仕様はユーザーフレンドリーである。

殴り合い主体の戦闘システム 鞭で引き寄せ、パンチをお見舞い

 本作は一人称視点ということもあり、基本的な戦闘はボクシングのように向かい合って1vs1で殴り合うものだ。

 (Xboxコントローラーでは)RTボタンで殴り、LTで防御、LBでカウンター、RBで鞭を使用する。他にも銃声が大きすぎるうえにリロードの遅いリボルバーを使えたり、その辺にあるスコップや瓶で敵を殴ったりできるが、ほとんどはステゴロの戦いになる。

 スタミナもブロックで表示されていて、連打するとすぐにバテてしまう。この地に足が着いた泥臭い殴り合いはなかなか面白く、最初は好印象だった。しかし、ゲームをロードしたり、マップを行き来したりすると敵が復活しているので、何度も大群と戦うのが面倒に感じた部分はあった。

 全体的に良くできてはいるが、割とよく見かけるスタイルの近接一人称バトルという感じで、このあたりはMachine Gamesの癖がかなり出ていると思っていいだろう。何度も何度も似たような敵と戦うのは飽きるが、敵兵に後ろから忍び寄って棍棒で昏倒させるのは気持ちが良かった。

 その他、細かい問題点を思い返してみると、FPSレートが上下する場面があった。特に地下などの新しいマップを読み込む際に発生し、再起動をかけると直る……ということがよく起こった。

 また、ボーダーレスウィンドウで起動したものの、メニュー画面でもカーソルが他のモニターに向かわず、ウィンドウキーなどを押してもデスクトップに切り替わってくれなかったので、やや不便さを覚えた。とはいえ、今回プレイしたのはあくまで先行試遊用としていただいたビルドであり、初日以降のアップデートで直ることを期待したい。

 インディ・ジョーンズの体験を存分に楽しめるメインストーリーに比べ、戦闘や収集要素などはありきたりな瞬間も多かった。とはいえ、80年代の名画が持っていた一大スペクタクルをこの規模感で味わえるゲームはかなり珍しい。シリーズを追い掛けている長年のファンも、この機会に映画を観てみようと思っている人も、全員に遊んでみてほしい一本だ。

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