横浜流星の恋する瞳も…韓国版から再構築された『わかっていても』日本版のメッセージとは?
「好き」を大事にすることが、自分の人生を彩るカギに
そうして一人ひとりの抱える苦悩を見ていると、『わかっていても』は自分の「好き」に正直になる勇気を持つ物語とも言える気がした。なにかを作り上げる美術も、相手と関係性を築いていく恋愛も、自分の内面を表にさらけ出さなければならない難しさがある。
心の中を誰かに見せるのは怖い。特に大切にしたい「好き」な気持ちを誰かに否定されるのは、この上ない苦痛でもある。まっすぐに「好き」をオープンにして、傷ついたり後悔したりするくらいなら、なかったことにしたほうがいいのではないか。面倒なことになるリスクを取るより、なにも始まらないほうが楽なのではないか……と、SNSの普及など批判されることの多くなった現代だからこそ、私たちはどんどん「好き」を出すことに臆病になっている側面がある気がする。
しかし、その「好き」と思えた自分をまず自分で否定してしまっていいのだろうか。人生においてなにかを「好き」だと心がときめくことほど、素敵な瞬間がほかにあるだろうか。一歩踏み出すことでしか見えなかった世界もある。「普通」と思い込んでいるもののなかに当てはまらない幸せもある。[1] ぶつかって凹んで、徐々に自分の「好き」に素直になっていくキャラクターたちを見ながら、私たち自身の生き方も問いかけられているような感覚がした。
また、それぞれの視点、思考を垣間見ることで、自分が共感しやすいキャラクターを見つけやすく、より愛着を持ちやすくなる。ともすれば才能にも容姿にも恵まれている漣のような人に対して「悩みなんてなさそう」と言いたくなってしまうこともあるかもしれない。しかし、そんな「贅沢な悩み」と封じられてしまいそうな人こそ、人に打ち明けられない葛藤を抱えていたりする。
そんな行き詰まった気持ちを抱えた1人ひとりが、自分自身を奮い立たせて「好き」に素直になっていくことができたのは、さまざまな考えを持つ人々と接したから。一歩踏み出していく勇気が自分の中から出てこないときは、人と人との出会いから生まれる。そんなヒントをもらったような気がする。
「いましかできない」横浜流星の恋する瞳は必見
そんな『わかっていても』で最も重要なのは、誰もが沼る男・香坂漣の説得力だ。ハッと立ち止まってしまうほどの容姿。視線を外すことのできない眼差し。触れられるだけで恋に落ちてしまいそうになる仕草。そして、どこか寂しそうな佇まい……。そうした魅力を持つ香坂漣を横浜に、というのは満場一致で納得というキャスティングではないだろうか。それくらい、いまの横浜流星という俳優は仕上がっている。
横浜がブレークを果たしたのは、2019年の火曜ドラマ『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)だった。髪をピンクに染めた不良高校生役で、口数は少ないもののやると決めたからにはバシッと決める姿はどこか横浜のパーソナルなイメージとも通じるものがあり、まさにハマり役といえた。
しかし、横浜自身はその役柄を「照れくさかった」と11月26日放送のバラエティ番組『日曜日の初耳学』(MBS毎日放送)で振り返っていた。それでも恥じらいを捨てて、世の女性をドキドキさせる役を「生きよう」と意気込んでいたとも。そんな横浜の役ヘのアプローチは、徹底して「役に自分を近づける」こと。作品に向き合う際には「自分を消し、役を愛し、誰よりも理解して生きたい」「リアルを追求して違和感なく自然に生きたい」と語っていた。
そのため、映画『春に散る』でボクサー役を担うとなればプロボクシングのライセンスを取得したり、日曜劇場『DCU〜手錠を持ったダイバー〜』(TBS系)でDCU第一部隊のダイバーに扮するとなればスキューバダイビングのライセンスを取得するなど、役柄と自分をシンクロさせるストイックな姿勢が話題となってきた。
元来、極真空手で世界大会優勝経験があるなど「戦う男」である横浜。『日曜日の初耳学』(TBS)では「殴られたほうが燃える」といった発言もあり、難しい役どころであるほど底力を発揮してくれる俳優として信頼を寄せずにはいられない。そんな横浜が今あえて、恋の物語に挑戦したというのも大きな意味を感じる。
若者特有のゆらぎ、激情、そして弱さ。そんな一面さえも魅力としてしまう色気を漂わせることができるのは、きっと28歳のいまがラストチャンス。そう自身でも感じているからこそ、今回の出演に際して「いましかできない」とコメントを寄せたのではないだろうか。
来年、NHK大河ドラマの主演にも決定し、今後も大きな作品に次々と出演していくことだろう。そんな横浜のいましか出せない表情を詰め込んだ、思い出のアルバムとしての要素も日本版『わかっていても』にはある。
いつも余裕の微笑みを浮かべ、そつなくその場に期待されている自分を演じることが染み付いてしまった香坂漣が、思わずはらりと涙を流すシーンは瞬きを忘れて見入ってしまった。それが何話なのか、どうしてそのような事態になったのかは、ぜひご自身で見届けてほしい。
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