深海の世界に引きずり込み、“トラウマ”をあたえる FZMZ・HONNWAKA88×制作陣が語り合う1st VRライブ『DEEP:DAWN』の裏側
モーションをキャプチャーすることで、アバターに“ゴースト”が宿る
――そういえば、アーティストのアバターはどのように動かしていたのでしょうか?
ReeeznD:ご本人たちにモーションキャプチャーをしてもらっています。メンバーがビッグすぎるので、ソニーミュージックの方に協力してもらい、海外ツアー中の方もお呼びして、なんとか時間を作ってもらって収録をしました。
HONNWAKA88:面白かったのは、収録現場がオフ会のようだったことですね。海外活動の人もいたことで、初めて会うメンバーもいたんですよ。それが『VRChat』ユーザーのオフ会っぽかった。
ReeeznD:一方で、収録の時はリアル現場で長年やってきたメンバーならではのステージパフォーマンスの凄まじさを見せつけられましたね。
HONNWAKA88:アバターであっても、動きが一緒なんですよね。肉体、場所、空間が変わっても、そこは一緒なんだと思わされました。
玉田デニーロ:モーションキャプチャーの現場は僕も参加させてもらったんですが、それまでアバターとして見ていたものが、本人の動きが入ることによって、いわゆる“ゴースト”がちゃんと乗っかる感覚がありました。一気に生き物に変わる瞬間といいますか。
HONNWAKA88:我々としても、「わけのわからない空間で負けないように戦う」という心意気でしたから。メンバーが空間に負けたら終わりなので、存在感を動きで発揮させていく、まさに「負けられないバトル」だったなぁとは(*´з`) 。
ReeeznD:HONNWAKA88さんは動きが激しすぎて、トラッキング用のマーカーが頻繁に吹き飛びましたよね(笑)。収録スタジオが想定してたよりも、動きがすごすぎて。
――自分も率直な感想は「めっちゃ足上がるじゃん」でしたね(笑)。
HONNWAKA88:収録後は汗だくでしたね。でも、そこまで熱中できたのはすごくよかったです。ステージに立つ人にはある種のプライドというか、「一度ステージに上がったら、降りるまではパフォーマンスをやめない」姿勢がある。自分はもちろん、メンバーにもそれがある。どこであっても、FZMZメンバーはステージがあれば全力を尽くすんだなというのをあらためて感じられました。
玉田:その姿勢が、今回用意した無茶苦茶なステージとすごい噛み合っていた気がします。本来、ライブ中に急に地割れが起きたら大混乱なのに、FZMZは平然とパフォーマンスを続けていた。そういうバンドである、というブレない姿勢が感じ取れました。
ReeeznD:演出をめちゃめちゃにしてもメンバーが負けないから、制作チームも遠慮なくやれましたよね。それでもFZMZメンバーが一番目立っていたなと。
キヌ:「これは安心してぶち壊せるな」とは思いましたよね(笑)!
ReeeznD:そうそう(笑)
キヌ:振り返ると今回、凄腕の方々のパフォーマンスの力によって表現・作品としてもう一段階高いところに行けた実感があり、取り組んで良かったなと思います。
HONNWAKA88:僕らもとてもうれしく思っています。素晴らしいステージの機会に恵まれたことに、メンバーを代表して感謝させてください。
ナメられる新しい文化が、人々を驚愕させる歴史
HONNWAKA88:今回のインタビュー、僕では全くついていけない技術的な話が飛び交うと予想していたのですが、意外とマインドの話になりましたね(^ム^)。
玉田デニーロ:今回のインタビューで集まったメンバーは、意外とパッション寄りの人たちな気がします。
――特に、HONNWAKA88さんはメタバースへの解像度がとても高く、なにより好きであることが伝わってきました。
HONNWAKA88:自分はずっと、ボーカロイドなどのインターネット発音楽や、ゲーム音楽、VTuber、メタバースなど、新しい文化が好きなんです。そして、これらは「最初はナメられる」点で共通しているんですよね。
それは新しい文化の弱みであり、同時に強みだとも思います。僕自身は、そんな土壌が好きなんですよ。
メタバースについても、「こんなところでなにができるんだ」とナメられるところから始まって、いまや現実ではできない、すごいことができるようになっている。そこに痛快さを感じるんですよ。
――メタバースの近接領域であるVTuberも、YouTuberやアニメ・ゲームとの比較にさらされがちでしたね。もっといえばその比較対象すらも、テレビや映画の世界と比べられたりしがちです。ですが、どの領域もそれ以上に「この表現だからこそできること」が開拓されてきています。その過程を見てきていると、メタバースの現在地にもすごく納得がいきますよね。
HONNWAKA88:メタバースのことを知らない人からすると、この世界で起こっていることって、「小難しいデジタルの世界で、頭のいい人が数学的なことを駆使していろいろやってる」って思われがちなんですよね。自分はバンドマンの知り合いが多いのですが、彼らは「俺が楽しかったら、お前が楽しかったらいいじゃん」という感覚でやっている人が多い。そして、メタバースに対して「小難しいやつらが技術的なことでやってる」という苦手意識、言葉を選ばずいえば偏見を持っている。
でも、『DEEP:DAWN』は生身の人が当たり前にしているところーー人間ってこう思うよね、こういう感情があるとこういうことが起きるよね、といった、原点のところから組まれたライブだったのはすごく興味深い。なので、リアル側しか知らない人にこそ知ってほしいなと思っていましたね。