ゼルダ姫が主人公の『知恵のかりもの』は、“2Dゼルダ”新時代の幕開けを告げるのか?

『知恵のかりもの』は、新たな2Dゼルダの始まりを告げる一作になるのか?

 それにしても、『知恵のかりもの』でゼルダ姫を主人公にする発想には「そういうのもあったか」の一言に尽きる。

 詳しい起用の経緯は前述の「開発者に訊きました」で語られている通りだが、そもそも、ゼルダ姫を主人公にする時点で、プレイヤー全体に与えるインパクトは絶大だ。なぜなら、『ゼルダの伝説』は初代の誕生から現在までの38年に渡り、作品名に冠されたキャラクターと主人公のキャラクターが一致しない作品としてネタにされてきたからだ。そこに作品名通りの“本物”が現れれば、そりゃ話題沸騰にもなる。

 また、『知恵のかりもの』は2Dゼルダの新時代の始まりを告げる作品になる可能性も秘めている。それはゼルダ姫が主人公のシリーズとしての始まりだ。仮に『知恵のかりもの』が大きなヒットとなり、プレイヤーからも支持が得られれば、十分にあり得る話と言えるだろう。というか、筆者としてはそのようなことが実現すれば、凄く面白いことになりそうと思う。

リメイク版『ゼルダの伝説 夢をみる島』(Nintendo Switch)より

 3Dと2D、それぞれのゼルダが分かりやすく棲み分けられるからだ。リンクは3D担当、ゼルダは2D担当といった具合にキャラクターが看板的な役割を発揮することにより、それぞれの遊びの違いと見所がプレイヤーに伝わりやすくなる。そんな棲み分けがされれば、これまで以上に変化に富んだ『ゼルダの伝説』が展開されると同時に、ゼルダ姫だからこそ可能な新しいアイディアも採り入れられていくのではないだろうか。

 もしかすると、ゼルダ姫が主人公というのは『知恵のかりもの』だけの1発ネタとして終わる可能性もある。「開発者に訊きました」でゲームデザインの必然性と、剣も盾も使わない人という理由から選ばれたことが語られているのも、それを示唆している。しかし、ゼルダ姫自身は剣や盾を使って戦う主人公も務められる素質を十分に持ち合わせたキャラクターだ。あまり詳しく書くとネタバレになるのでボカしながら書くが、『風のタクト』と『トワイライトプリンセス』では、ごく一部において果敢に戦う姿を見せている。『時のオカリナ』における“思わぬ能力”もそのひとつだ。

『ゼルダ無双』 ゼルダ(細剣)プレイムービー

 そして、スピンオフ作品だが『ゼルダ無双』では、当人がプレイアブルキャラクターとして参加し、大勢の敵を相手に華麗に戦う姿を披露している。

 外部出演だが、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズにもファイターと参戦し、リンクと拳(?)を交えているのも見逃せない。そのような実績が十分にあるからこそ、活かさないのはもったいないとすら思える。

 同じく任天堂の姫つながりで、マリオシリーズのピーチ姫も2024年、自らの強みが最も発揮された主演作『プリンセスピーチ Showtime!』を持つに至り、作中においてもシリーズとしての発展を期待させられる可能性を示している。

『プリンセスピーチ Showtime!』(Nintendo Switch)より

 ゼルダ姫もそれに続くように、2Dゼルダの新時代を作っていく存在として活躍してくれればと願ってやまない。きっとそれは『ゼルダの伝説』シリーズ全体をさらに魅力的にしてくれるはずだと筆者は考えている。たとえ今後、リンクに戻ることがあっても、『知恵のかりもの』は今後の2Dゼルダの新たな土台として存在感を発揮し続けてほしい。そのことを強く願いながら、これから製品版でゼルダ姫になっての冒険を楽しんでくるとします。

 しかし、「勇気のトライフォース」を持つリンク、「知恵のトライフォース」を持つゼルダが主人公になったなら、今後、「力のトライフォース」を持つガノン(ガノンドロフ)も主人公になる未来が来るのだろうか? 彼もまた、『ゼルダの伝説』のアタリマエを見直す……いや、壊す存在として真価を発揮する時が来てしまうのだろうか。

 これまでの活躍(暗躍)を思うと、それもそれで見てみたいような……とか思うのはどうなのだろう。

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