ゲーム配信は“職業病”で難しい!? 『FF14』とワインがつなぐ、吉田直樹×立花慎之介対談

『FF14』がつなぐ吉田直樹×立花慎之介対談

ライブ配信には世界を変えられる可能性がある

――あらためて『〇〇な控え室』に出演した率直な感想を吉田さんにお聞きできればと思います。

吉田:立花さんの回しが、びっくりするくらいお上手でした! ゲストとして出演してトークをするのと、MC的に場を回すスキルは全然違うじゃないですか。しかも今日はお酒も入っていて、カンペもめっちゃ出ていましたから(笑)。すごいなと。だからもっとMCとしてご活躍されてもいいんじゃないかと感じたくらい。

立花:声優業界って、新人のほうが回す役割になることが多いんですよ。だから、新人のころに鍛えられたんです。たとえばライトノベルで主人公が男の子1人で、周りが女の子のイベントでは、男が必ずMCなんですよ。だから回さざるを得ないし、そこで回し方を勉強する。乙女ゲームに入ると、今度は周りが先輩ばかりになるので、先輩に囲まれてどう回すのかも学べる。先輩にMCをさせるのは声優業界的に「どうなのか」という感覚があって、年を取るとMCの座から離れることが多いんです。

吉田:「俺のほうが回せるからいいからいいよ」「無理にそんな気苦労しなくていいから」というのとは違うんですね。

立花:ベテランの先輩がMCになるパターンは、周りが新人だらけのときに、“仕切れる人”の立ち位置を作る場合ですね。でも、そのパターンはあまり多くないです。ただ、配信番組やアプリの配信で少人数のときは、MCができる声優は重宝されます。

吉田:それはそうですよね。一瞬、間が空いてしまったときに、それを埋められる嗅覚のようなものは、センスにもなってくると思います。

立花:それに、MCは基本的にゲストさんやほかのメンツを立てる立場なので、どう話を聞いていくのかということもあります。そういう意味では新人のころからやらせてもらえていたので、いまがあるのかもしれないですね。

――逆に、立花さんには吉田さんに出演していただいた感想を伺えればと。

立花:すごくフランクに、フレンドリーにいろいろなお話が聞けたのですが、想定外だったのはひぐち君(髭男爵)が“イキってた”んですよ(笑)。僕らは気軽に好きなワインを選んでいいという話だったのに、ちゃんと当てないといけない流れになっていましたからね。でも、選んでいただいた日本のワインとか、知らないワインがたくさんあったので、本当に新しい発見になりました。吉田さんに新しいワインを「おいしい」と言っていただけたという意味では、『FF14』とワインという2つの内容をうまく出せてよかったなと思います。

吉田:僕はワインを飲んでいる間、一度も立花さんと目を合わせませんでした。「この状況、どうしたらいいですかね?」という気持ちが、目を合わせちゃうと伝わってしまうので……。「すごくガチなワイン当てになってるけど、どこまで濁せばいいんだろう」とずっと思いながら、「でもおいしい」と(笑)。

立花:僕はまだワインの知識が浅いので、吉田さんに頼っていた部分があるんです。でも、MCの立ち位置から見たとき、「吉田さん、これなにも言わないな」と思ったんです。それならもう、僕がひぐち君に振ることによって、とりあえずその場を収集していました。

吉田:想像以上に、ひぐち君が本気だったんですよ。ヒントを出しているつもりだったと思うんですが、『神の雫』の主人公じゃないんだから、僕たちにはわからないんです(笑)。

立花:良かったのは、ソムリエさんのワインの表現の仕方が実感できたことです。声優は言葉を扱う商売ですが、ソムリエさんのワインの味の表現が、まったくわからなかった。それがひぐち君の説明によって、「この香りがこうなんだ」と実感できたので、そこはうれしかったですね。

吉田:それだけひぐち君がワインを好きで、「この2人はワイン好きなんだな」と思ってもらえたということでもありますよね。ありがたいです。

――ひぐち君との出会いにもなった今回の配信ですが、あらためてライブ配信に感じた魅力はありますか?

吉田:僕はゲーム業界で、まだライブ配信が主流ではない時代からやってきていますので、もともと可能性のあるものだとは思っていました。ただ、最近はもうちょっとうまい盛り上げ方がないかなと考えているところです。動画コンテンツ自体、炎上アクセスによるお金稼ぎに対するルールがもう少し決まらないと、社会が良くない方向に行ってしまうかもしれませんしね……。

 ただ、皆さんの「発信したい」という気持ちだったり、ひとりでも「なにかを世界に訴えかけて、世界を変えられる可能性」には、ものすごいものがあると思います。立花さんも、パパママの情報交換や悩み解決をしたいとおっしゃっていましたが、自分の身の回りでできないからこそ配信で解決することはあると思いますし、すごく可能性があること。そういう方向で伸びてくれたらいいなと思います。

――立花さんは本日の配信を経てどのような感想をお持ちですか?

立花:異文化交流の面白さが出たなと思っています。吉田さんはゲームの作り手側という立ち位置もそうですが、プロジェクトリーダーという高い地位の方、ソムリエ、そして会社経営者という、普段は絶対に同じフィールドにいない3人が、ワインを軸にして話をすることができた。その面白さがあったと思います。それに、吉田さんとは深いプライベートな話やゲーム作りの話をする機会がなかなかなかったですし、今回は意外な部分が聞けたりして楽しかったです。

 でも、まだ2、3時間は全然いけますね。それくらいポテンシャルのある会でした。そもそも全然ワインが空いていないですから!

――それでは最後に、2024年後半に向けてチャレンジしたいことを教えてください。

吉田:仕事もプライベートだと思ってしまっているので、チャレンジしていないタイミングがないから、「これ」というものは……。とはいえ、『FF14』に限らず、 坂口博信さんと一緒にお仕事させていただいたり、強い結束力があるクリエイティブスタジオ3としてのチャレンジをしたりするなかで、作っている側も、遊んでくださるみなさんも、「とにかく面白くて楽しい」をより前に進めていきたいなと思っています。

 この半年というよりも、いま種を撒き始めないと、その先数年にかかわってくるのがゲーム開発ですから、そのためにチャレンジしていく、という感じですね。

立花:完全なプライベートではどうですか? たとえば、趣味のスノーボードで行きたいところはないんですか?

吉田:行けたら行きたいところはいっぱいあるんですけど、 スノボ合宿させてほしいなって……。仕事はするから、遠隔で!

立花:ゾッとしてる人がいますが……。

吉田:山に籠もらせてほしいんです。で、朝イチのピステンとナイターでスノボ。昼間は仕事するから、なんとかしたい。でも最近、中国だと夏でも超デカい屋内スキー場があるんです。今度、中国・広州でファンフェスがあるんですが、会場から1時間くらいのところにあるんですよ。なんとか行きたいなって(笑)。

立花:たしかにそれは野望ですね。僕はここからの半年は、娘との幼稚園行事をちゃんとやりたいですね。幼稚園の年長なので、もう最後の1年なんです。来年から小学校なので、幼稚園でできることを、パパママと一緒にやりたいなと。運動会とかもあると思いますが、負けるのは嫌なので、本気で走ります(笑)。

吉田:良い目標ですね。意識しないと、「仕事かぶった!」ってなっちゃったりしますから。

立花:僕らの業種って早め早めに動いていて、下手したら来年もスケジュールが入っていたりするんですが、幼稚園や学校は4月にならないと年間行事がわからないんです。わかったときには「もう無理じゃん」ということもあったりして……。そのなかで行ける行事には参加していかないと、小学校でコミュニティが形成されてからは、親との時間がどんどん短くなっていきますからね。なるべく多く一緒にいられたらと思いますし、そのうえで、吉田さんに追いつけるように、冬は家族でスキー場に行きたいんです。

吉田:スキー場のすぐそばに、友人の経営する良い宿がありますので、ぜひタイミングを合わせて行きましょう!

立花:吉田さんはスノボをずっとやられていますが、僕や娘は始めたばかりなんですよ。

吉田:大丈夫、僕はみんなに滑れるようになってもらうために行っているみたいなものですから(笑)。これまでに5,60人は滑れるようになってくれたと思います。スケジュール調整していただけたら、お子さんたちにも教えてさしあげます。

立花:その様子を配信したらめちゃくちゃ面白いじゃないですか!

吉田:いやいや(笑)。でも、ヒカセン(※)を集めてやりたいですよね。「まずは板の付け方、立ち上がり方、ワンフットで軽く歩く/滑る、それからリフト……サイドスライドするところからやりましょう」って。皆さん間違いなく素直に取り組んでくださると思うので……。

※光の戦士。『FF14』のプレイヤーたちの通称。

立花:それは吉田さんめがけてみんな滑ってきそうですね(笑)。

吉田:でも立花さん、娘さんの幼稚園行事に行かれるとき、僕から1個だけアドバイスがあるんです。僕も同じような形で、幼稚園の行事に行ったんですよ。 お父さんがハイハイして、娘や息子を背中に乗せて騎馬戦をやったんですが、お父さんたちが誰も寄ってきてくれなかったんです……。身なり、見た目は気を付けて行かれたほうがいいです。「パパ! なんか誰も来ない!」って言われて、すごく切ない思いをしたので……。

立花:(吉田のトレードマークであるアクセサリーを見ながら)その手で行ったんですか!?

吉田:はい……。スタイルは崩すもんじゃないなと……。子どもたちからは人気なんですよ、悪者としてね。「悪い奴だ! やっつけろ!」と言って全力で遊んでくれるんですけど、ちょっとお父さんウケはあまりよくなかったですね。

立花:たしかに気を付けたほうがいいですね。でも、僕もガラガラの服で行っちゃいます。

吉田:あはは、立花さんらしい! 面白いですね!(笑)。

ワイン談義に花が咲いた今回の「◯◯な控え室」の配信は、17LIVEで無料でアーカイブが楽しめる。ぜひ17LIVEアプリでチェックを!

URL:https://17appv2.onelink.me/D7OH/4vfo7set

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