AI音声のリーディング企業Supertoneが日本市場進出 革新的音声変換技術が切り開く、”コンテンツ市場の未来”

Supertone担当者に聞く、“日本進出と展望”

Supertone担当者が語る、今後の戦略や展望

Supertone・Kyo Sun Choo氏

 展示ブースでの体験の後、Supertone担当者にインタビューを行い、同社の戦略や展望についてさらに詳しく聞くことができた。まず、Supertoneが日本を初のグローバル進出地として選んだ理由について、担当者は次のように語った。

「Supertoneの技術の特徴は、コンテンツ制作に特化しており豊かな表現力とリアルなAI音声を提供できる点にあります。今回、当社が日本進出を決めたのは、日本はグローバルコンテンツ大国として、Supertoneの技術を活用した多様なコンテンツ制作機会が多いことが理由です。そして、もうひとつは、社内の話ですがSupertoneには日本のコンテンツ、アニメ、日本の映画やJ-POPを好きな人が数多く勤めていることも日本進出の理由です」

 その発言を受けて、Supertoneの技術の需要が高いと思われるVTuber市場における同社製品の可能性について尋ねたところ、特にSupertone Shiftはこの市場に非常に適した製品であるという認識が示された。

「Supertone Shiftはまだオープンベータ期間中ではあるものの、すでにダウンロード数は13万回を突破しています。しかもそのうちの3割〜4割は日本のユーザーによるものです。現在、日本はVTuber市場をリードしており、そのような市場を持つ国でこのような反応があることは、我々の技術が日本のVTuberから認められているということだと考えています」

 現在、多くのAI企業が直面している倫理的な課題の解決に向けた取り組みについては、次のような答えが返ってきた。

「まずSupertoneは、いかなる場合においても、権利者の許可なく音声を収益化することはありません。これまでは主にレジェンドと評されるアーティストや有名な俳優の声でコンテンツを制作してきましたが、今は声の持ち主と共存していける生態系を目指しています。さらにトレーニング音声や合成音声データへのアクセス権限を少数の研究開発者のみに限定するなど最小限に抑えています。

 また、当社はAI音声であることを検出する技術を開発することでセキュリティ対策に取り組んでおり、何か問題があった場合に、音声の透かし(ウォーターマーク)技術を使って、追跡ができるようにデータを管理しています。なによりも、当社が最も重要視していることは、アーティストや権利者、クリエイターの尊重を最優先にしながら、クリエイティブ業界とともにビジネスを行なっていくことです」

 Supertoneの技術は、コンテンツ制作の現場に革命をもたらす可能性を秘めている。特に先述したように業界をリードする日本のVTuber市場においては、その影響は計り知れない。おそらくリアルタイムで高品質な音声変換が可能になることで、さまざまな音声コンテンツの表現の幅が大きく広がるだろう。

 最後に担当者は、今後の同社のAI音声技術のさらなる活用可能性についても言及した。

「Supertoneの技術は音声や音響が必要な産業には全て適用できると思っています。コンテンツ業界の話になりますが、現時点でもAIアフレコ(音声合成)や音響特殊効果を通じて、映画やアニメといった放送コンテンツなどに活用できています。既にNetflixやDisney+などの会社とのコラボレーションを通じて様々なコンテンツを制作しています。

 今後はHYBE傘下企業の一員であることを活かし、エンターテインメント業界でのさらに幅広い展開も視野に入れています。HYBEグループが持つ多様なIPコンテンツの制作経験やグローバルネットワークを通じて、当社の技術はより多様な形で応用され、成長していく可能性を秘めています」

 そして、このインタビューでは“ブランドボイス”という新規事業を日本でも展開していきたいという構想も明かされた。ブランドボイスでは、企業がオーダーメイドで作成したAI音声を活用し、広告をはじめとする様々なコンテンツに一貫して同じ音声を使用することが可能になるという。これにより、企業は統一された音声アイデンティティを持つコンテンツを一般消費者向けに発信できるようになると示唆された。

 AI音声技術は日々進化を続けており、その応用範囲は今後、我々の想像を超えてさらに広がっていくだろう。Supertoneの日本市場参入は、日本のコンテンツ産業に新たな可能性をもたらすとともに、AI技術と人間の“創造性の共生”という新たな課題も提示している。技術の進歩と倫理的な配慮のバランスを取りながら、この新しい技術がどのように社会に受け入れられ、発展していくのか。今後の動向に注目していきたい。

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