『パルワールド』新会社設立の驚き SME&アニプレックスの存在から“未来像”を考える

『パルワールド』新会社の“未来像”とは?

 7月10日、『パルワールド』の開発・発売元であるポケットペアは、ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)、アニプレックスと共同で、新たなジョイントベンチャー「株式会社パルワールドエンタテインメント」を設立すると発表した。

 この合弁によって『パルワールド』にどのような価値をもたらすだろうか。同IPの未来を考える。

三社による合弁でライセンス事業を国内外で推進

【パルワールド / Palworld】アーリーアクセスローンチトレーラー【ポケットペア】

 『パルワールド』は、2024年1月に早期アクセスとしてリリースされ、そのゲーム性やデザインなどが反響を呼んだオープンワールド・サバイバルクラフトだ。プレイヤーは不思議な生物「パル」と協力し、過酷な環境で生き残るための術を模索していく。

 今回設立が発表されたジョイントベンチャーではパートナーに、傘下に複数の音楽レーベルを抱え、ソニーグループの音楽系事業を統括するSMEと、その子会社でアニメを中心に幅広い映像作品を企画・製作・販売するアニプレックスが迎えられた。今後はゲームを除く『パルワールド』のライセンス事業を一社に集約し、国内外で推進していくという。プレスリリースでは、中国・上海で開催のサブカルチャーイベント「Bilibili World 2024」で販売されるグッズを、アニプレックス公式のオンラインショップ「アニプレックスオンライン」で受注販売する旨も告知された。

 『パルワールド』はXbox Series X|S、Xbox One、PC(Microsoft Store、Steam)向けに3,400円(税込)で発売中。また、Xbox/PCの両プラットフォームにおいて、GAME PASSにも対応している。Steamでは2024年7月19日までの期間、「WEEKEND DEAL!」として25%オフでの購入も可能だ。

ジョイントベンチャー設立が期待させる『パルワールド』アニメ化とPlayStationプラットフォームでの展開

 フリークにとっては驚くべきニュースとなった『パルワールド』をめぐる3社の合弁。そこから導き出される今後の展開をシンプルに考えるならば、それは上述のようなグッズを幅広く企画・製作し、日本国内を含む世界中に展開していくという未来だろう。一定以上の成果が生まれれば、『パルワールド』はオリジナルIPとしてより確かな地位を獲得していくことになる。SMEやアニプレックスといった業界大手との協業となったことで、従前よりもその可能性は大きく高まったと考えられるのではないか。もちろんそうした結果につながるかは、IPそのものの力によるところもある。業界の盛り上がりという意味では、ゲームとそれ以外のコンテンツの相乗効果にも期待したい。

 また、アニプレックスが参画していることにより、近い将来でのアニメ化も選択肢にあると推察することもできる。もし実現するのであれば、その出来によっては、グッズ販売以上にIPを急成長させる起爆剤ともなりうるだろう。なにかと比較対象となりやすい「ポケットモンスター」(以下、「ポケモン」)シリーズは草創期、アニメ化を契機にさらなる飛躍を遂げ、現在の不動の地位を獲得するに至ったと記憶している。「デジタルモンスター」や「妖怪ウォッチ」といったシリーズもまた、こうした横展開から人気を獲得し、そのフォロワーとして広く認知されるようになった。『パルワールド』もまた、それらと同じ道をたどり、飛躍していく可能性がある。同作のIPとしての未来は、今回の合弁によって大きくひらけてきたと考えられる。

【公式】『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』3rd Trailer

 他方、SME、アニプレックスというソニーグループの2社がパートナーに選ばれたことには、ゲームとしての次なる展開も憶測させられる。現状はPCとXboxの2プラットフォームでのみ販売され、どちらかと言えば、(Xboxの開発・発売元である)Microsoftとの距離が近いと噂されていた『パルワールド』だが、ほどなくして訪れるであろう正式リリースの折には、PlayStationプラットフォームがそのラインアップに加わる可能性がある。もしそのような未来が訪れれば、「ポケモン」との比較という意味において、任天堂発の同シリーズ、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)発の「パルワールド」シリーズといった構図も浮き彫りとなってくる。

 この件に関し、世間では(リリース当初、同作が“「ポケモン」のパクり”と見なされていたことを背景に)「SIEが火中の栗を拾った」とも表現されている。一方、私は過去に書いた記事のなかで、「『パルワールド』が著作権違反に問われる可能性は低いのではないか」と論じた。任天堂のライバルでもあるSIEが同IPと蜜月の関係を築くことになれば、それは「疑念の払拭」をより強く示唆する。その観点においても、今回の合弁は『パルワールド』の未来に特別な意味を持つ可能性が高い。

 はたしてパルワールドエンタテインメントの設立は、『パルワールド』の未来を照らす材料となっていくのだろうか。同IPの今後の展開から目が離せなくなってきた。

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