デザイナーはAIにどのような“体”を与えるべき? Nothing CEOと深澤直人が語り合った『Phone (2a) Special Edition』発売記念イベント

Nothing CEOと深澤直人が語る、AIの身体化

人間は無意識の感覚も使ってものを見ている

 トークイベントも終盤に差し掛かり、深澤氏は自身が館長を務める民芸館でのエピソードを語りはじめる。

 それは朝鮮時代の器の破片を展示する会でのことだったという。そこで目にしたのは割れた器の破片だったが、器の一部を見ただけで「器の全体像がかっこいいものだったとわかった」「これは自分にとっても初めての体験でした」と驚きを口にした。

 つまり深澤氏によれば、人間は視覚や聴覚、触覚など自身で意識している感覚だけでなく、無意識的なセンサーまで駆使して世界を感じ取っている、というのだ。そして、AIのような実態のないものに姿を与える場面ではこういった自覚を持てることがかなり重要になってくるというのだ。

AIが「すいません」を覚えたらどうなる?

 「デザインに関わってきて一番うれしかったことは?」という質問が二人に飛ぶと、深澤氏は、ビジネス的な利害の外で同じ興味を持つ人とともにものを作り、これまで存在しなかったものの「姿が現れる瞬間」や「なにかがうまれていく」という、作ることそのものの根源的な喜びを語った。

 またペイ氏も誕生の喜びに同意しながら、「(ものを生むための)舞台裏の苦しみもたくさんある。キャシュフローやサプライチェーン、人材など(笑)。なんでここまでしてやらなきゃいけないんだろうと思うこともある」と、ビジネスパーソンとしての顔を覗かせながらも、道を歩いているときに自分が作っているものを身につけている人を目にする瞬間に喜びを感じることや、さらにフィジカルプロダクトと実態を持たないアプリケーションとのはっきりとした差について語った。

 トークショー最後の締めの挨拶では、深澤氏が「日本人特有のUI」についての話を披露した。

 そのUIとは「すいません」という言葉だという。日本人は一見きっちりしているようで、その実かなりルーズな場面が多い。そして「すいません」という言葉が、そのルーズさを補完するためのバッファーとして機能していると指摘、「だからAIにすいませんを覚えさせたらやばいですよ(笑)」と、なんとも興味深い発言を残した。

 そしてペイ氏はNothingの製品は世界の中でも特に日本で好意的に受け止めてもらっていると日本への印象を語り、「今後もさらに頑張って、道を歩いている人がプロダクトを使っているところを見られるようにしたい」と、率直な思いとともにイベントを締めくくった。

 こうして世代をまたいだプロダクトデザイン談義は幕を閉じた。およそ30分という短い時間ながらも、二人の間で共有しているものの多さを感じずにはいられない貴重なトークイベントであった。

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