極上の音楽によって呼び起こされる「FF」シリーズの思い出たち 『Distant World music from FINAL FANTASY』レポート

『Distant World music from FINAL FANTASY』レポート

 6月8日と9日、東京国際フォーラムにて、キョードー東京主催『Distant World music from FINAL FANTASY』が開かれた。こちらはスクウェア・エニックスの名作「ファイナルファンタジー」シリーズの名曲を元にしたオーケストラコンサートであり、すでに17年の歴史がある。

 言わずと知れた名曲を心ゆくまで浴びることができたコンサートの模様を、みなさんにお届けしたい。

第一部:『プレリュード』に始まり『FF14』クライマックスを彩る楽曲たちへ

 開演とともに、万雷の拍手で迎えられた世界的な指揮者として知られるアーニー・ロス氏。ゲーム音楽とも縁が深く『FINAL FANTASY VII REMAKE Orchestra World Tour』、『NieR:Orchestra Concert re:12018』などにも参加している。

 まずは『プレリュード』から。巨大モニターに映されたクリスタルの輝きとともに、静かな調べが奏でられ、続いてFF8から『Libeli Fatari』。魔女と騎士を巡る物語がラテン語で綴られた。

 そして、アーニー・ロス氏が振り返り、開催にあたってあいさつを述べた。同氏の「やはりこれから始めなければ……」といった前口上のあとに、FFではおなじみの戦闘終了後のファンファーレが鳴り、まさしく準備万端となった。

 3曲目は『ゴルベーザ四天王とのバトル』……FF4の死闘が蘇る。その後に『ザナルカンドにて』が流れ、選曲のアップダウン具合に、オーケストラコンサートでありながら、頭を揺らされた感じがした。

 こうして巨大モニターとオーケストラ音響でユウナが異界送りを行うシーンを眺めていると、近年のファイナルファンタジーが得意としている最新ハードで美麗なグラフィックを用いてストーリーを描くという手法が、コンサートという催し物と非常に相性が良いことがわかった。シナリオの大枠を思い出しながら、極上の空間でプレイの思い出に浸るというのは、ゲーム音楽に許された特権と言えるだろう。

 そして6曲目『Vamo' alla Flamenco』。FF9を象徴する一曲だ。クラシックギター奏者の宮川春菜氏が参加し、思わず踊り出したくなるようなほど素敵な調べを奏でてくれた。

 プログラムは、本公演の目玉のひとつであるFF14ゾーンに突入。祖堅正慶氏への賛辞が述べられ『塩と苦難の歌〜ギラバニア湖畔地帯:昼〜』が演奏される。

 ここでゲストボーカリストとしてアマンダ・エイケン氏が登壇。彼女といえば『Tomorrow and Tomorrow』と『FLOW』だろう。FF14のクライマックスシーンをのびやかに歌い上げてくれた。

 FF14最後の曲として『終焉の戦い』も披露し、第一部は終了……かと思いきや『Chocobo 2012』が挟まり、今度こそ休憩に入った。

第二部:感傷的かつ情熱的な『FF16』パート、そしてラストはあの名曲

 後半は今年30周年となるFF6から『仲間を求めて』と『妖星乱舞』が演奏された。『妖星乱舞』はオルガンソリストの小島弥寧子氏が参加。長大な名曲を力強いオルガンで牽引してくれた。

 そしてFF7から『エアリスのテーマ』、FF15から『Valse di Fantastica』。

 公演のクライマックスに至り、本公演の目玉のふたつ目であるFF16ゾーンに突入。『Away』ではクライヴとジョシュアの熱い友情を見せられ『Ascention』ではディオンの生涯を追いかける映像が流れた。どちらも声楽が印象深い曲だった。

 アマンダ・エイケン氏が再登場し、FF16屈指の名ボーカル曲である『My Star』を熱唱。会場がしっとりとした空気に包まれたところで、祖堅正慶氏が登壇し、いつもの調子でいくつか小ボケを披露してくれた……。

 「ここに(PS5の)コントローラーがあります。スティックを押し込んだらどうなりますか?」という煽りとともに、FF16で最もアガる曲『Find the Flame』が奏でられる。イフリートをその身に宿すクライヴの怒りや決意を感じる攻撃的な曲で、まさしく最後に相応しい一曲であった。

 『オープニング・テーマ』とともにスタッフロールが流れ、アーニー・ロス氏が割れんばかりの拍手を浴びながら退場……と思いきや、アンコールに応えてもう一度現れ『片翼の天使』を演奏。すべてのプログラムは終了となった。

 ややFF14やFF16の曲を強めにフィーチャーした『Distant World』ではあったが、あらためてファイナルファンタジーの音楽の層の厚さや、歴史の重みを感じられる素晴らしい公演であった。みなさんもセットリストを再現したプレイリストを作ってみてはいかがだろうか。

セットリスト

<第一部>
1.プレリュード(FINAL FANTASYシリーズ)
作曲:植松伸夫 編曲:宮野幸子
2.Liberi Fatali (Final Fantasy VIII)
作曲:植松伸夫 編曲:浜口史郎
3.勝利のファンファーレ
作曲:植松伸夫 編曲:Arnie and Eric Roth
4.ゴルベーザ四天王とのバトル(FINAL FANTASY IV)
作曲:植松伸夫 編曲:石毛里佳
5.ザナルカンドにて(FINAL FANTASY X)
作曲:植松伸夫 編曲:浜口史郎
6.Vamo' alla Flamenco(FINAL FANTASY IX)
作曲:植松伸夫 編曲:浜口史郎
7.塩と苦難の歌 ~ギラバニア湖畔地帯:昼~(FINAL FANTASY XIV)
作曲:祖堅正慶 編曲:宮野幸子
8.Tomorrow and Tomorrow(FINAL FANTASY XIV)
作曲:祖堅正慶 編曲:宮野幸子 Vocal:Amanda Achen
9.Flow(FINAL FANTASY XIV)
作曲:祖堅正慶 編曲:宮野幸子 Vocal:Amanda Achen
10.終焉の戦い(FINAL FANTASY XIV)
作曲:祖堅正慶 編曲:宮野幸子
11.Chocobo Medley 2012(FINAL FANTASY シリーズ)
作曲:水田直志/植松伸夫/浜渦正志 編曲:Arnie and Eric Roth

<第二部>
12.仲間を求めて(FINAL FANTASY VI)
作曲:植松伸夫 編曲:中山博之
13.妖星乱舞(FINAL FANTASY VI)
作曲:植松伸夫 編曲:Arnie Roth & Adam Klemens
14.エアリスのテーマ(FINAL FANTASY VII)
作曲:植松伸夫 編曲:浜口史郎
15.Valse di Fantastica(FINAL FANTASY XV)
作曲:下村陽子 編曲:宮野幸子
16.Away(FINAL FANTASY XVI)
作曲:祖堅正慶 編曲:宮野幸子
17.Ascension(FINAL FANTASY XVI)
作曲:祖堅正慶 編曲:宮野幸子
18.My Star(FINAL FANTASY XVI)
作曲:祖堅正慶 編曲:宮野幸子 Vocal:Amanda Achen
19.Find the Flame(FINAL FANTASY XVI)
作曲:祖堅正慶 編曲:宮野幸子
20.メインテーマ(FINAL FANTASY シリーズ)
作曲:植松伸夫 編曲:浜口史郎
Enc.片翼の天使(FINAL FANTASY VII)
作曲:植松伸夫 編曲:浜口史郎

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