渋谷慶一郎の「アンドロイド・オペラ」東京公演、『Super Angels』でAIを使った新たな表現に挑戦

渋谷慶一郎、AIを使った新たな表現に挑戦へ

 6月18日に恵比寿 ザ・ガーデンホールにて行われる、渋谷慶一郎の作曲・プロデュースによるアンドロイド・オペラ『MIRROR』の東京凱旋公演。同公演にて、子どもたちとアンドロイドが創る新しいオペラ 『Super Angels』から二曲を前半の第一部として披露することが発表された(本公演チケットはすでに完売)。

 第一部には「ホワイトハンドコーラスNIPPON」から29名の子どもたちと、長野礼奈が参加。渋谷慶一郎によるピアノ演奏、アンドロイド・オルタ4によるヴォーカル、そして注目のバイオリニスト・成田達輝が率いるオーケストラと演奏を共にする。

 ホワイトハンドコーラスNIPPONは障害の有無に関わらずどんな子どもたちでも参加できるインクルーシブな合唱団であり、手話の表現で歌う「サイン隊」と声で歌う「声隊」によって構成。また、長野礼奈は音楽大学に通うバイオリニストであり、生後間もなく病気のため視覚に障害を持つ。本公演ではその類い稀な聴覚を活かし、『Super Angels』の中心的な楽曲である「五人の天使」の演奏にソロ・バイオリニストとして参加する。

 スクリーンに映し出される映像は、新進気鋭のアーティスト岸裕真を中心とする「Dentsu Lab Tokyo」の若手クリエイターが制作。岸裕真自身が開発した二つの生成ネットワークによって100万種類以上の天使の画像をAIに学習させ、生成された天使のイメージを用いて映像を制作。同ラボが開発した子どもたちの「手歌」をセンシングするウェアラブルデバイスによって、ステージ上の子どもたちの動きと映像表現はリアルタイムで同期する。こうした新たな表現手法に挑戦すると同時に、『Super Angels』のモチーフである「天使」の脱構築を試みる。

 さらにAI作曲を取り入れた新曲の披露も決定。渋谷の20年来のコラボレーターである池上高志氏とのコラボレーションによるAI、GPTによる作曲の最初のプロトタイプとして「Who owns this music?(この音楽は誰のものか?)」が第一部の序曲として初演される。これはAIによって生成された膨大な音楽を渋谷が編集、変型すると同時にスコアのフレージングはオーケストラの各演奏者に委ねられるという、作曲そのものや著作者の概念を揺さぶるような試みであり、アンドロイド・オペラがコンセプトに据える「中心のないオペラ」を象徴する序曲が誕生した。

 渋谷慶一郎は、本作について「AIは人間の知性の補助といった範疇を超えて拡張を可能にする。特に音楽や芸術分野ではその傾向と可能性は顕著であり、AIとの協働は大きなタームとしてかたちを変えながら存在し続けるだろう。またそしてAIは境界を無化していく。音楽と美術、大人と子ども、障害などといった対立軸を無効化し、新しい芸術表現とテクノロジー、科学の結びつきとしては本質的なアプローチであり、それを総合芸術の中で実践していくことに挑戦したい」とコメント。さらに「世界は刻々と終わりに向かっている。アンドロイド・オペラはその終わりと終わりの後のシミュレーションとバリエーションで出来ている。仮に世界が終わったとしても、その過程とその後が美しければいいじゃないか?それを想像してアンドロイドとAIという終わらない存在と祝福することが現在の人間に出来ることではないか?それを舞台作品として提示することが作曲家という概念も終わりに向かいつつある中で僕に出来ることではないか?そんな気持ちでこの作品を作った」と明かした。

 また、映像コンセプトを担当した岸裕真は「『天使』は超常的な領域と日常的な領域の橋渡しとして、私たち人間社会でシンボル化されています。元来の宗教的な象徴性は漂白され、いつしか単に『福音をもたらす兆し』として描写されることが多くなりました。しかしながらもともとは厄災をつげる役割を持っていたなどと、その性格は実は両義的です」と前置きし、「渋谷慶一郎という音楽家は、人間が築き上げてきた境界の脆さを露呈し、鑑賞者をその境界の先へ誘います。現代においても特異な音楽生成を行う彼や彼とアンドロイドが共創する公演は、天使が元来持っていた両義的な役割、福音と厄災の到来を告げるそれにかなり近しいものかもしれません」とコメント。さらに「今回私は現代社会で漂白された『天使』のイメージの脱構築を、2つのイメージ生成ネットワークを用いて行います。そしてそれらのAIネットワークによって紡がれる映像は、Dentsu Lab Tokyoが制作するセンシングデバイスを介してホワイトハンドコーラスNIPPONの手歌によりエンハンスされ、当日スクリーンへ上映されます」とコンセプトについて語ったあと「東京に6年ぶりの凱旋となるアンドロイドオペラにおいて、今日的なAIテクノロジーとアンドロイドAlter4、ホワイトハンドコーラスNIPPONの子どもたち、そして渋谷慶一郎の演奏により編まれる空間装置が、鑑賞者を巻き込んでどんな場所へ連れてってくれるのか、参加者である私もとても楽しみです」と締め括った。

■公演概要
『Android Opera TOKYO MIRROR/Super Angels excerpts.』
日時:2024年6月18日
開場18時、開演19時(チケット完売)

●第一部 Super Angels excerpts.
コンセプト、作曲、ピアノ、エレクトロニクス:渋谷慶一郎
歌詞:島田雅彦
ヴォーカル:アンドロイド・オルタ4
コーラス:ホワイトハンドコーラスNIPPON
(声隊指揮:加藤洋朗、サイン隊指揮:コロンえりか)
ソロバイオリン:長野礼奈
オーケストラ:Android Opera TOKYO Orchestra
(コンサートマスター 成田達輝)
アンドロイド プログラミング:今井慎太郎
映像:岸裕真
衣装(ホワイトハンドコーラスNIPPON):HATRA、NOVESTA

●第二部 Android Opera MIRROR
コンセプト、作曲、ピアノ、エレクトロニクス:渋谷慶一郎
ヴォーカル:アンドロイド・オルタ4
声明:高野山声明(山本泰弘、柏原大弘、谷朋信、亀谷匠英)
オーケストラ:Android Opera TOKYO Orchestra(コンサートマスター 成田達輝)
映像:Justine Emard
アンドロイド プログラミング:今井慎太郎

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