推しの“末期”を見届けよ 台湾で大流行した伝説のブラウザゲーム『UNLIGHT』ついに復活
いまから7年前の2017年10月18日、とあるブラウザゲームがひっそりと姿を消した。その名は『Unlight』。株式会社テックウェイが運営していた、基本無料の対戦型カードゲームだ。
非常に奥深い対戦と、先が気になるストーリー展開に、当時大学生だった筆者は熱中した。台湾の同人文化と結びつき、海の向こうのほうがファンが多かった『Unlight』だが、なかなか商業的成功を掴み切れず、Flashのサポート終了も相まって、残念ながらサービス終了を迎えてしまった……。
しかし、2024年3月18日、本作は復活した。合同会社アンライトがDMMGAMESにて『UNLIGHT:Revive』を正式リリース。当時未実装だったレアカードを含めた継続的なアップデートを約束し、『Unlight』を再出発させることを誓った。筆者を含め、当時のファンは大喜びし、涙を流しながらブラウザを立ち上げたとか、しないとか。
そんな『UNLIGHT:Revive』はどこがそんなに素晴らしいのか? 筆者を熱狂させたゲーム性は現代でも通用するのか? その点を紹介させていただく。
アンライトとは即ち“死”……キャラクターの末期を見届けるストーリー
本作はとある架空の大陸を舞台にしたファンタジーRPGである。とはいえ、作中では電子機器も普及しており、世界を騒がせる革新的なガジェットも登場するのでSFでもある。『FINAL FANTASY VI』や『サガ フロンティア』くらいの塩梅だと思ってくれればよいだろう。
プレイヤーは、狂気山脈に居を構える邪悪な魔女「炎の聖女」によって作り出された人形であり、地上に攻め入るための駒を用意する任務を与えられる。そのために、現世に未練を持って死んだ戦士たちの魂をかき集め、軍隊を編成することとなる(ソーシャルゲーム的RPGのパーティー編成やカード集めをちゃんと物語的に説明している点に、もうすでに好感が持てるではないか)。
人形が呼び出す戦士たちは、かつて大陸で巻き起こった大規模な動乱によって命を落とした者ばかりだ。世界に穿たれた「渦」という穴から湧き出る異形の怪物を倒す「レジメント」や、そんなレジメントの活動を影から支えつつもそれぞれに業を背負った「エンジニア」、とある科学者によって作られたオートマタ、獣人族や世界の調律者、サーカスの団員からスラムのチンピラまで多種多様なキャラクターがいる。
狂気山脈でピンと来た方も多いことだろう。本作にはクトゥルフ神話のモチーフが多分に入っている。また、ウィリアム・ギブスン『ディファレンス・エンジン』などといった有名なSF小説からの引用も見受けられ、サブカルファンは頬が緩んで仕方ないと思われる。
とはいえ、ここまでは目ざといオタクを喜ばせる設定が盛り込まれた普通のRPGだ。本作のシナリオの最大の特徴は「推しの末期を見届ける」という点にある。
『UNLIGHT:Revive』も一般的なソーシャルゲームと同じように、カード同士をくっつけてさらなる上位カードを生み出すのが目的となる。レアカードにはR1からR5までの5段階があり、1段階作り上げるとそのキャラクターのシナリオが読めるという寸法だ。
R1ではピンピンしていたキャラクターだが、当然ゲーム開始時には炎の聖女の手下になっているわけで、つまり必ず死ぬわけである。
戦死、謀殺、電池切れ、転生、餓死、自殺……キャラクターはあらゆる方法で死ぬ。あなたが集め、使い、愛したキャラクターが無残に息絶えていく様が、じっくりと描写されるのである(ほとんどの場合は、傷を負っている程度の一枚絵なのでそこまでグロテスクではない)。
そうしたキャラクターひとりひとりの人生が、ゲーム全体にまたがる年表のどこかに差し込まれ、俯瞰で捉えることができる。レアカードを集めて行けば行くほど、大陸で起きた動乱の仔細がわかっていくのだ。断片的な個人の歴史が積み重なり、やがて全史が見えてくる作り……これぞまさにファンタジーの醍醐味ではないか。
ダイスというカオスを操り、敵を討て……育てたキャラの見せ場「デュエル」
本作のゲーム面での醍醐味は、間違いなく対人戦「デュエル」というコンテンツにある。
プレイヤーは3人ずつキャラクターを選出し、1vs1で向かい合って戦うことになる。控えの2人とはいつでも交代できるので、最も近いのは「ポケットモンスター」シリーズの対戦モードだろう。キャラクターに四つの技があるあたりも似ている点だ。
しかし、それらの技には発動条件があり、加えてその条件を満たすためのリソースは、お互いのプレイヤーにランダムで配られるカードに依存している。カードの上下に書かれた剣・銃・星・移動・盾の5つのマークを必要なだけ揃える必要があるのだ。
どんなに数え直しても星が圧倒的に足りないこともあるし、逆に「いまこんなに移動カードが来てもいらない」ということもある。どのカードを残すか、もしくは使い切ってこのターンのうちに畳み掛けるかといったリソース管理が大事なのだ。
これだけでも十分に技術介入と運のバランスは成り立っていると思うが、もっとも脳がシビれる点は、攻撃と防御の判定にダイスを使う点である。
本作は攻撃力と防御力を決定したあと、その数値分だけ3面ダイスを振る。大体3個振って1個が表になる計算であり、表になった分しか有効と見なされない。たとえば、攻撃力30・防御力12でダイスロールがなされると、だいたい6ダメージくらいは入るわけだが、もちろんすべては運次第なので、実際は0だの12だのフザけた数字が出ることも多々ある。
まともなカードが引けるかは運、そのカードに対してどうスキルを打つかは技術、そしてスキルを打ってもダイスの出目に縛られるという点は運……と、目まぐるしく戦況が変わるところにゲーム性がある。上振れで自キャラが即落ちしても、頭をかきむしらずに次の一手を考える冷静さが肝要なのだ。
以上、『UNLIGHT:Revive』の魅力について解説させていただいた。
もちろん、一人用のコンテンツである「クエスト」など、現代の洗練されたソーシャルゲームに比べると、追い付いていないところもいくつかある。
しかしながら、かつての筆者を熱狂させたシナリオと対人戦はそのままだった。群雄割拠のソーシャルゲーム界隈において、これからも存在感を発揮し続けてほしい。そして早くステイシアを実装してほしい! 運命の鉄門で3タテしたいんじゃー!
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