『ドラゴンズドグマ2』DLCが賛否両論 ゲームデザインとの“ズレ”がプレイヤーの違和感に?

『ドラゴンズドグマ2』プレイヤーが抱く違和感の正体

 3月22日、『Dragon's Dogma II』(以下、『ドラゴンズドグマ2』)が発売を迎えた。

 シリーズから10年以上ぶりに登場する完全新作として、大きな注目を集めてきた同タイトル。発売後には正統進化とも言えるゲーム性が評価される一方で、一部仕様や不具合が批判の対象となっている。

 『ドラゴンズドグマ2』をめぐる賛否両論の現状を踏まえ、違和感の正体へと迫る。

人気アクションRPGシリーズにファン待望の最新作が登場

『Dragon's Dogma 2』 Main Trailer

 『ドラゴンズドグマ2』は、カプコンが開発・発売を手掛けるアクションRPGだ。舞台となるのは、人の王国「ヴェルムント」と獣人の国「バタル」の思惑が交錯する中世ファンタジーの世界。プレイヤーは竜を討つ宿命を背負った主人公「覚者」となり、英雄となるための冒険へと旅立つ。システム面では、オープンワールド、自由度の高いキャラクターメイキング、多彩なアクションといった要素が特徴となっている。思い思いにクリエイトした従者を仲間として使役する「ポーンシステム」も健在。シングルプレイでありながら、MMOのように他のプレイヤーとともに冒険しているような感覚を味わえるのが、『ドラゴンズドグマ2』の稀有の個性だ。

 2012年5月にリリースとなった前作『Dragon's Dogma』(以下、『ドラゴンズドグマ』)は、その拡張版である『Dragon's Dogma Dark Arisen』(2013年4月発売)を含め、全世界で840万本を売り上げた(2023年12月31日時点)。『ドラゴンズドグマ2』に大きな期待が寄せられたのは、シリーズ第1作の成功があってのことだ。こうした背景もあり、同タイトルは初日からたくさんのフリークにプレイされている。発売翌日の3月23日には、Steamにおける同時接続者数が22万人に達したことも話題となった。

 対応プラットフォームは、PlayStation 5、Xbox Series X/S、Steam。価格は、さまざまな特典を盛り込んだデラックスエディション(ダウンロード専売)が9,990円、パッケージ通常版が9,989円、ダウンロード通常版が8,990円となっている。2024年屈指の注目作が満を持してリリースを迎えた。

ゲーム性に評価の声が集まる一方で、一部仕様や不具合に批判の声が殺到

 『ドラゴンズドグマ2』は、そうした注目に反することなく、各所で高評価を獲得している。アメリカの大手レビューサイト・Metacriticの批評家レビューでは、PlayStation 5版が87点、Xbox Series X/S版が86点、Steam版が89点と、軒並み高スコアを叩き出した。その多くで言及されているのが、オープンワールドで表現された世界とプレイヤーの主体性、直感的かつ現実的な戦闘によってもたらされる圧倒的な没入感についてだ。これらは前作『ドラゴンズドグマ』において評価されてきたポイントでもある。つまり、同タイトルは、発売前に抱かれていた期待どおり、もしくはそれ以上のインプレッションをプレイヤーたちにもたらしていることになる。

 一方で、発売後には、仕様や不具合に対する批判の声も相次いだ。『ドラゴンズドグマ2』では、一部アイテムがダウンロードコンテンツとして120~600円で販売されている。このなかには、ゲーム内通貨のリムや、キャラクターの蘇生に必要な「竜の鼓動」、外見の再編集を可能にする「転身の秘術」、任意の場所にファストトラベル用のワープポイントを設置できる「戻りの礎」といったものが含まれる。これらは進行上でも一定数手に入れられるが、それぞれに特定のプロセスを踏む必要があり、位置づけとしては、貴重品に分類される代物である。

 こうした実態に対し、ユーザーの一部は「システムに関わるアイテムをダウンロードコンテンツとして販売し、課金に誘導している」と憤慨。ゲーム性とは異なる部分で作品の評価が貶められつつある状況が生まれている。そのような運営のやり方に理解を示すプレイヤーからは、「必ずしも購入が必要というわけではない」など、弁護の声も出ているが、仕様をめぐってプレイヤーが対立するという構図が存在すること自体が、異例であると言わざるを得ない。

 また、PC版においては、クラッシュやフレームレートの低下といった事象が頻発。プラットフォームへの最適化不足がユーザーから指摘されている現状もある。このような事態に対応するため、一部プレイヤーは重要度の低いNPCを強制的にゲームからドロップアウトさせるという過激な対策にも出ている。こうした手法が攻略の一環として語られている状況もまた歪であると言えるだろう。

 上述の不具合に対し、開発側は、今後のアップデートで対応する予定であると発表している。将来的には改善される見通しであることが、発売から1週間を待たずして示されたというわけだ。とはいえ、現段階での不完全さは評価にも影を落としつつある。Metacriticにおけるユーザーレビューでは、6.3という決して高水準とは言えないスコアを示しており、Steamでは、好評と不評がほぼ同数の「賛否両論」というレビューランクに分類されている。

『ドラゴンズドグマ2』DLCに感じる違和感の正体

 『ドラゴンズドグマ2』を発売日(もしくはそれに近い時期)に手に取ったプレイヤーは、シリーズの熱心なファンであると言える。この10年間、続編の登場を心待ちにしていた彼らにとって、正統進化とも言える同タイトルのゲーム性は、一定の満足感を得られるものだったはずだ。にもかかわらず、なぜ『ドラゴンズドグマ2』のダウンロードコンテンツは非難の対象となってしまったのか。

 さまざまなゲーム性を第1作から踏襲した『ドラゴンズドグマ2』には、同様にシリーズの伝統となっている独特のプレイ感が受け継がれている。それがビデオゲームらしからぬ、あまりにも現実的な不便性だ。

 「ダッシュなどに必要なスタミナの回復量が体格に左右されること」「所持重量というステータスがあり、それがキャラクターの俊敏性・持久力に関わること」「(現代のアクションタイトルでは一般的な)回避行動が用意されていないこと」「冒険中に受けたダメージによって削られたHPの上限値が宿屋やキャンプでしか回復できないこと」「オートセーブのみという仕様により、死亡時のリスタート地点が(すでに取り返しのつかない可能性がある)直前、あるいは最後に利用した宿屋であること」「ファストトラベル地点の設置に特定のアイテムが必要であり、かつそのアイテムがどこでも使用できるわけではないこと」「(ファストトラベルを除くと)徒歩以外の移動手段が特定の地点同士を結ぶ定期路・牛車しかないこと」など、その例は枚挙にいとまがない。シリーズを愛好するファンには、これらも“ドラゴンズドグマらしさ”と受け入れられるポイントではある。開発の明確なコンセプト設定を感じる箇所だけに、UIの不備というよりは、ゲームデザインの一部と考えるほうが自然だろう。

 しかしながら、ここが件の問題の根元となっている。もしそれらが企図されたものであるならば、なぜ課金によって解消できるような仕組みを設けるのか。ゲームデザインとダウンロードコンテンツのあいだに、内包するコンセプトのズレが生じているのだ。

 このような実態は結果的に、「不都合を押し付け、利便性をお金で買わせる」という印象を『ドラゴンズドグマ2』にもたらしている。この点こそが同タイトルの課金要素を批判するプレイヤーが抱く違和感の正体なのではないか。

 近年のゲームカルチャーにおいては、称賛に値するクオリティを持った作品が、コスト回収の方法を誤ったことで評価を下げるケースが少なくない。今後のアップデートで改善される可能性はあるにしても、現時点では『ドラゴンズドグマ2』もまた、そのような文脈の上にあるタイトルとなってしまっている現状がある。

 『ドラゴンズドグマ2』は、ゲーム性とは別のところで着せられつつある汚名を返上できるか。今後の動向に注目だ。

©CAPCOM

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