関わるすべての人が「ゲームを好きで良かった」と思えるように――GLOE株式会社・谷田優也&VTuber・渋谷ハルが語る“ゲームと寄り添う人生”
渋谷ハルの“最終目標”はどこにあるのか
――この機会に、谷田さんから渋谷ハルさんに対して聞いてみたいことなどはありますか。
谷田:これは前からハルくんに聞いてみたかったことなんですけれども……。渋谷ハルの最終目標って何なんですか?(笑)
だって、個人としてのセルフブランディングも完璧だし。大会主催者としてVTuberさんたちが楽しめる場、ファンの皆さんが盛り上がれるような場を作るようなことも楽しんでやっちゃってますし。最近はeスポーツチーム所属のクリエイターになったし、レッドブル・プレイヤーという立場も得たし。
挙句の果てにVTuber事務所を立ち上げて、自ら運営に携わることで“渋谷ハル”を起点としたコミュニティの輪のようなものを広げ続けているわけじゃないですか。いったい、どんな野望を胸に秘めているのか。あるいは、「直近だとこういうことをゴールだと捉えてやっています」みたいなことがあるのなら、ぜひお聞きしたいですね。
渋谷ハル:うわ、難しい質問ですね(苦笑)。そもそも夢とか希望みたいなものが、これといってないので。
もちろん昔は……それこそ、VTuber活動を始めるにあたって立てた目標なんかはありましたよ。少なくとも半年や1年で投げ出さずに腰を据えて活動することとか、たとえ10~20年かけたとしても必ずいつかYouTubeのチャンネル登録者数10万人を達成するとか。
そういった初期の目標を、おかげさまで達成できた後は、つぎの目標をぼんやりと考えてみたこともあったんですけど、しっかり向き合うことはしていなくて。とくに最近の僕は、長期的な目標を立てて物事を進めるというよりも、思いつきの衝動に突き動かされるまま行動していることが多いです。
谷田:ああ、なるほど。現状のハルくんとしては、むしろそういった衝動的な思いつきを、いつでも実行に移せるような自分でありたいというのがモチベーションになっているのかもしれないですよね。「これ、おもしろそうだな」「やってみたいな」と思ったことを、“夢を夢で終わらせずに叶えられるような状態”を保っておきたいというような。
渋谷ハル:ああ、まさにそうかもしれないです!
谷田:そうだよね(笑)。それってある意味、とてもゲーマーらしい動機だと思います。
ゲームって、時代を追うごとにドンドン新しいタイトル、おもしろいタイトルがリリースされるわけで。自分の人生を歩むうえで立場や環境が変わっていくなか、それでも「旬なゲームを最良のコンディションで遊べるような自分でありたい!」という気持ちを持ち続けているゲーマーの方って多いのではないのかなと思います。
つまりハルくんはそれと同じで、根っからのゲーマー気質なんですよね。そのときイチバンおもしろいと思ったものを、イチバンおもしろくできる立場じゃないと満足できないというか。そのためには、ある程度の知名度も必要だし、お金やコネクションといったリソースも必要なわけで。
だから極論を言えば、登録者数1億人を達成できたらゴールとか、1兆円稼げたらクリアだとか、そういった考えかたを持っていないってことなんじゃないかな?
渋谷ハル:めちゃめちゃ完璧な言語化をしていただいちゃいました……! もはや完全に、谷田さんに思考をトレースされています(笑)
谷田:いや、僕もようやく「渋谷ハル」という存在の凄味を少しだけ理解できた気がしましたね。ハルくんって、不健全なイメージが一切ないじゃないですか。それがなぜかと言ったら、自分の思いついた“おもしろいこと”を叶えるための障壁になってしまうから。
そういったノイズを徹底的に排除する努力をつねに怠らないからこそ、さまざまな企業さんからも信頼を集めているんだなと、あらためて腑に落ちましたね。
「ゲームに関わるすべての人に幸あれ」
――“ゲーム(VTuber)をきっかけに人と社会をHAPPYにする”べく、おふたりそれぞれの立場から今後についての意気込みをお願いします。
渋谷ハル:僕は“熱量”や“熱狂”といった類の言葉が大好きなんです。僕自身がゲームに向き合う際も、そうした熱意を大事にしたいと思っています。
10~20年くらい前は、ゲームって何かと悪者にされがちというか、少なくとも単なる娯楽の一種でしかなかったと思います。しかし、いまやゲームの在りかたも変わってきていて、熱中できる、真剣に打ち込める対象になっている。自分ではプレイしていなくとも、見るだけで、観戦するだけで熱狂できるものになっていると感じています。
だから僕は、そんなゲームに熱量を持って取り組みたいと思っている人や、ゲームから生まれた熱狂の渦に自分も飛び込んでみたいと思っている人に対しての、“道標”を作ってあげたいんです。
僕自身、ゲームとの出会いをきっかけに人生が大きく変わるということを経験していますから。「ゲームに触れればもっと人生が楽しくなる」なんて大げさなことを言うつもりもないのですが……何かしらのきっかけでゲームを知った、あるいはプレイするようになった人がいたとして、その人が「いまいちハマりどころがわからなかったな」でゲームから離れていってしまったとしたら、それって悲しいことだなって思うんですね。
「ゲームを楽しむ」とひと口に言っても、ちゃんと楽しさを引き出そうと思ったら一度腰を据えてゲームと向き合う必要が出てくると思いますし。他人のゲームプレイを見て楽しむにしても、そのゲームのことを何も知らない状態で見るのと、“このプレイはどうすごいのか”や“どこが盛り上がるポイントなのか”などを理解したうえで見るのとでは、受け取れる楽しさも大きく違ってくると思います。
僕のようなVTuberは、そういった“ゲームの楽しみかた”を知るための入り口になり得ると思っています。ゲームの基礎や上達方法が知りたいのだったら、僕のアップした解説動画がその一助になるはずです。観戦の楽しさを肌で感じたいのだったら、僕のふだんの配信や『V最協』を見ていただくと、特定のチームを応援して一喜一憂する感覚がきっと味わえると思います。
そんな風に自分自身が大好きなこと、楽しめていることを、より多くの人に広めていきたいという気持ちが、いまの僕にとってのイチバンの原動力になっていますね。
谷田:ハルくんの言葉を聞いていて、なぜ僕らとハルくんがこうして楽しくお付き合いできているのかが、あらためてわかり合えた気がしますね。ハルくんは、原体験としてゲームの楽しさや、ゲーマーという生きかたの楽しさを、世界中でもっとも理解している人間のうちのひとりだと思います。
きっとハルくんは10年、20年経った後でも「『Apex Legends』が好きで良かった」と言えるでしょうし、僕にとってはそれが『ストリートファイター』にあたるわけで、僕もまた生涯「『ストリートファイター』が好きで良かった」と言い続けられる自信があります。そんな風に、「ゲームが好きで良かった」と思える人を、我々はもっともっと増やしていきたい。応援していきたいと思っています。
ハルくんが、自身の理想とする“良きゲーマー”であリ続けるための手段としてVTuberという道を選んだように、ゲーマーの皆さんそれぞれの居場所を作ってあげたり、より良いアウトプットの方法をいっしょに考えたりしてあげたい――ゲームを楽しんでいる人たちが、幸せであり続けるためのお手伝いをしたいんです。
――“We are the GAMING LIFESTYLE Company.”というビジョンには、そうした決意が込められているということでしょうか。
谷田:まさにそのとおりです。僕らはいま、ZENAIMさんというゲーミングデバイスブランドさんとお仕事をさせてもらっているのですが、ZENAIMさんとのやり取りのなかで、「WELL GAMING」というキーワードが話題に上がったことがありました。
心身ともに満たされた状態――いわゆるサウナなんかで「ととのう」状態のことを、最近は「Well-being」と表現したりしますが、それをゲームで文字って“Well-gaming”と。そんな風に、人生においてゲームを通じて心身が満たされている状態を願うことが、当たり前に肯定されるような社会になったらいいよねと。
別にゲームが素晴らしいものであると世の中に証明したいだとか、ゲーマーの社会的地位向上を目指したいなどと思っているわけではありません。我々はシンプルに、ゲームに関わる皆さんの幸せを願う会社であり続けていたい。ただそれだけなんです。
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