「メタバースで生きていく」世界はすぐそこに? バーチャル美少女ねむと紐解く、2年後の「メタバース進化論」(前編)
“ねむとして”食って生きたいと思う反面……
ねむ:次は収入ですが、こちらも面白いんですよ。収入を得ている人はまだ少なくて、26%程度。しかもそのほとんどは少額で、10万円以上となるとわずか7%程度です。
ねむ:一番議論になるべきは「将来どうしたいか」だと思います。調査結果を見ると、34%の人は将来的にメタバースで稼いで生きていきたいと思っている。解釈は難しいですが、現時点での収益化の難しさを考えると意外に多いともいえるし、将来的にお金稼ごうと思っていない人がまだ多数派であるともいえる。
――ねむさんとしては、メタバースで稼いで生きている人がいたほうがいいと思いますか?
ねむ:そのほうが多様性はあると思います。
たとえば私自身は(メタバース住人の間では)比較的稼いでいるほうだと思いますが、それでも現時点ではメタバースが生計の主軸には全然なっていない。将来的には「ねむ」として稼いで食べていきたいと思う反面、主軸じゃないからこそ楽しいという面もあると思います。
それに私とて、今も活発に活動してはいるものの、収益は度外視しています。あくまで「メタバースで生きていく」という新しいカルチャーを知ってもらうことで人類の進化を加速させたいという思いから活動しています。
これが仮に私の生活の主軸となると、その信念がぶれてしまうのではないか……と、私個人としても迷いますし、住人全体としてもこの微妙な数値にその「心の迷い」が表れているのかもしれません。実際、「クリエイターエコノミーとかやめてくれ」という住人の声もよく聞きます。
ただ、個人的には歪みが出ない範囲で徐々に変わってほしいと思っています。そう都合良くはいかないかもしれませんが……稼いで食べていける選択肢もあった方が良いですよね。
石井さん(注:『メタバース進化論』の担当編集)はわかると思うんですけど、『VRChat』ってまだまだ新規のユーザーにやさしい世界ではないんですよ。自分でワールドを探したり、ほかの人に話しかけたりできる人ばかりでもないですし、初心者向けイベントもボランティアの努力で行われていますが、足りてない、見つけられない、という声もあります。
たとえば、お金を払ってでも参加したくなるようなビッグイベントがあったほうが新規カスタマーは参入しやすいという考え方もあると思います。間口を広げる意味でも、稼げる人は出てきてほしいです。
続きは後編で
ブームから2年の間に人口が急増。それに伴う経済活動の発展について伺った前編は以上となる。
後編では担当編集・石井氏が聞きたかったというメタバースでの“声”にまつわる疑問、さらには『メタバース進化論』の中でも言及のあった“肉体からの解放”のその後についてなど、さらに掘り下げた内容を伺っていく。
■関連リンク
『メタバース進化論 ――仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界』(技術評論社)