カプコン躍進を象徴する『祇:Path of the Goddess』 王道の舞台設定に期待する“奥行き”の作り込み

『祇:Path of the Goddess』に期待する“奥行き”の作り込み

 カプコンは3月5日、かねてより制作が進行していた同社開発・発売の新作タイトルの国内正式名称を『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』に決定したことを明らかにした。

 その存在が明らかとなったときから大きな注目を集めてきた同タイトルは、フリークの有り余る期待に応える作品となれるだろうか。

和の世界観を特徴とするカプコンの新作アクション『祇:Path of the Goddess』

『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』 ゲームプレイ紹介映像

 『祇:Path of the Goddess』は、独創的な和の世界観を特徴とするカプコンの新作アクションタイトルだ。舞台となるのは、神住まう自然豊かな地「禍福山(かふくやま)」。主人公の「宗(そう)」は、この地に突如現われた「穢れ」を祓うため、穢れ払いの力を宿した巫女「世代(よしろ)」を導きながら、山の各地に存在する村々の平穏を取り戻していく。

 根幹となるゲーム性は、アクションとタワーディフェンスを融合したもの。プレイヤーは「昼」「夜」という2つのフェイズのなかで、「畏哭(いこく)」と呼ばれる敵に対抗するべく、前者では各村人の職業や守備配置を考え、後者ではその布陣と主人公の操作によって巫女の護衛を目指していく。

 開発・発売元のカプコンが3月5日に行った発信では、名称の決定のみがアナウンスされるにとどまったが、その後、7日に配信となった「Xbox Partner Preview」でゲームの概要が明かされると、8日の「カプコンハイライツ Day1」では、ゲームプレイ映像を含むトレーラーも公開となった。

『祇:Path of the Goddess』は、カプコンの好況ぶりを象徴するタイトルに

『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』 1st Trailer

 カプコンはここ数年、ゲーム業界でも屈指の好況ぶりを見せている。2024年3月期・第3四半期の連結業績では、売上高が前年同期比33.3%増の1,061億7,900万円、営業利益が同43.1%増の477億400万円となった。このペースでいけば、2021年3月期から4期連続での増収増益となる。2020年3月期と比較すると、売上高は倍増へと迫りつつある。

 同社が「アクション×タワーディフェンス」という、ともすると挑戦的なゲーム性を持った新規IPを送り出す背景には、こうした好業績の影響があるのではないか。もし右肩下がりの業績であったとしたら、その数字を守ることに必死となり、大きな挑戦はできなかったのかもしれない。私は3月2日に掲載された記事のなかで、バンダイナムコグループ、スクウェア・エニックスグループの開発体制の刷新について取り上げた。両社はどちらも、2024年3月期・第3四半期の連結業績が減益となっている。上述の開発体制の刷新は、不採算となり得るプロジェクトの早期打ち切り的な側面がある。カプコンが見せる動きとは対照的とも言えるものだろう。同社にとって『祇:Path of the Goddess』は、ここ数年の好況に裏付けられた攻勢の象徴とも言える作品になるのかもしれない。

期待されるのは、先人の失敗と同じ道をたどらないこと

『モンスターハンターワールド:アイスボーン』プロモーション映像①

 ようやくその輪郭が見えてきたカプコンの新作『祇:Path of the Goddess』だが、同タイトルに注目しているユーザーからはさっそく期待の声が集まり始めている。「アクション×タワーディフェンス」というゲーム性と並び、熱視線の対象となっているのが、1番の魅力と言っても過言ではない「和の世界観」についてだ。

 色彩や背景、キャラクターのデザインからは、平安から室町にかけて、陰陽師が活躍したであろう時代の雰囲気が見て取れる。そのビジュアルに、カプコンが放った往年の人気作品『鬼武者』や『大神』の雰囲気を感じた人も多かったのではないだろうか。「中世日本」は、昨今のゲーム業界で鉄板の設定となりつつある。ここ10年ほどでも、「仁王」シリーズや『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』、『Ghost of Tsushima』、『Sengoku Dynasty』といったタイトルがシーンを賑わせてきた。2024年度には、日本の封建時代を舞台にした「アサシン クリード」シリーズの新作『Assassin's Creed Codename Red』も発売を予定している。カプコンにしてみれば、自社のノウハウを活かしながら王道の設定で放つ新作に集まる声は、もはや想定内だったのかもしれない。

 そのうえで『祇:Path of the Goddess』に望むことがあるとすれば、中身の詰まった作品にしてほしいということだろうか。魅力的な世界観やビジュアル、斬新なゲームシステムという、ある意味で“表面的な部分”が独り歩きしている同タイトルだが、傑作として認められていくためには、密度や快適性といった“奥行きの部分”が求められることになる。直近のゲームカルチャーを振り返ると、そうした表面的な部分でユーザーに期待感を抱かせたものの、いざ発売されてみると、内容のともなっていないタイトルが少なからずあった。飛ぶ鳥を落とす勢いの現在のカプコンにかぎってそのようなことはないと思うが、『祇:Path of the Goddess』には、前評判どおり、あるいはそれ以上の完成度で日の目を見てほしいと願うばかりだ。

 『祇:Path of the Goddess』は、PlayStation 5/Xbox Series X|S/Xbox Game Pass/Steam/Windows向けに2024年発売予定。価格は記事執筆時点で未定となっている。

©CAPCOM

大ヒットの人気タイトルに意欲的な新作も カプコンが続ける“挑戦”と、その先にある可能性

カプコンが発売しているビデオゲームが好調である。  販売本数は『バイオハザード RE:4』が500万本を突破しており、『モンス…

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる