選択の積み重ねが未来を変える “歴史を動かす”没入感が魅力の『Rise of the Ronin』先行レビュー

 3月22日にコーエーテクモゲームスより発売となった『Rise of the Ronin』。今回はSIEのコード提供により、日本を舞台にしたオープンワールドのアクションゲームである本作を一足早く遊ぶ機会を得た。約25時間のプレイのなかで得られた情報をもとに、ストーリーや戦闘システム、オープンワールドで描かれるフィールドなどをレビューしていきたい。

“片割れ”を探すうち、主人公は激動の時代に巻き込まれていく

 本作の舞台となるのは19世紀の日本。200年以上に渡って支配を続けてきた徳川幕府の衰退と、横浜に来航したアメリカ艦隊、いわゆる黒船の影響で、日本の秩序は大きく揺らいでいた。

 そんな折、「黒洲藩」が幕府に対抗するため育成していた2人1組の兵士“隠し刀”の1人である主人公は、師匠である「研師」からの命を受け、黒船にいるマシュー・ペリー提督の暗殺と、彼が持つ密書の奪取を試みる。片割れと協力して黒船に潜入し、どうにか密書は奪えたものの、その後乱入してきた青鬼という護衛によってペリーの暗殺は阻まれたうえ、さらに片割れが斬り伏されてしまう。

物語を始める前には、主人公と片割れのキャラクターを設定する。顔つきや体格など、細かくカスタマイズ可能だ

 藩に戻ったあとも片割れが生きていることを感じていた主人公は、黒洲藩を抜けて浪人になり、片割れの手掛かりを求めて独り横浜に向かう。ここまでが序盤のあらすじとなる。

 片割れを追うのが主人公の目的だが、その道中ではさまざまな人物と出会うことになる。坂本龍馬に桂小五郎、高杉晋作といった攘夷を志す者たちや、井伊直弼や勝海舟を始めとする幕府側の人間たちも出てくる。国の行く末を憂う者たちと接するなかで、幕府の打倒を目指す“倒幕”か、幕府を守る“佐幕”か、プレイヤーはいずれかの道を選ぶ。

 選ぶとは言っても、どちらに付くかを直接決めるというよりも、選択肢が出てくる会話やシーンで自分が下してきた決断によって、ストーリーが自然と分岐していくというイメージだ。メインストーリーにはさまざまな任務が出てくるが、とくに序盤では倒幕派と佐幕派、双方から同時に似た依頼を頼まれるケースが多い。

 たとえば書物を奪う任務があるとすると、それを回収したらこちらに持ってきてほしいと、倒幕派と佐幕派から依頼されるという具合だ。この場合、手渡した相手の所属している勢力にポイントのようなものが貯まる。まだ推測ではあるが、このポイントの蓄積次第でルートが変化するのだろう。

ミッションでは最奥で待ち受けるボスを倒すのが目的。“徒党”で連れていく対象を選べば、複数人でともに戦うこともできる

 激動の時代を舞台にしていることもあり、ストーリーではいずれも重要な任務が課せられる。今回は倒幕派の依頼を中心に受けた筆者の場合では、さきほど書いたペリー暗殺のほかに、アメリカ領事館にいるタウンゼント・ハリスの暗殺、イギリス公使館の焼き討ちなどがある。任務中には歴史を直接左右するレベルの重要な選択もあるのだが、それを決めるのはほかでもないプレイヤーだ。

 与する派閥の任務をこなせば、当然ながらそこの人々とは仲良くなれるが、いっぽうで別の派閥とは敵対することになるし、さらに展開次第ではメインストーリーに絡む重要なキャラクターも死亡する。

 日本やキャラクターの行く末がかかっているという意味では、プレイヤーにかかる責任は重い。筆者自身、今回のプレイでは特定のキャラクターが死ぬことになった。だが裏を返せば、自分の取った選択がしっかりとストーリーに反映されている証明でもあるし、プレイヤーが本作の世界の一員として、激動の時代を生きていることを実感させてくれる一因でもあるのは間違いない。

メインストーリーは“浪人ミッション”と呼ばれる。ほかにも、坂本龍馬などのキャラクターたちに焦点を当てたものは“因縁ミッション”と呼ばれ、彼らの身の上などを垣間見ることができる

 幕末を舞台にした壮大なストーリーが楽しめるのは魅力だが、歴史上の人物が多いとはいえキャラクターの数は非常に多く、さらに黒船来航や日米修好通商条約の締結、安政の大獄といった事件を相まって、ただ進めているだけではストーリーの全容は把握しにくい。その代わりに、メニュー画面にある「事典」を選べば、これまでに登場した人物や起こった出来事が詳しく書かれているので、いつでも状況を補完できるのがありがたいところ。歴史が苦手な人でも、とりあえず事典を頼れば大丈夫だろう。

横浜に江戸といったフィールドを高速ロードと快適なシステムで探索

 本作はオープンワールドになっており、舞台となる土地が広大なフィールドで描かれている。横浜は和洋折衷と言ってよく、木造のわかりやすい日本家屋が軒を連ねる場所もあれば、アメリカやイギリス、フランスの領事館といった西洋風の建築物が集まるところもある。港町らしく少し移動すれば海も見えるし、内陸に入れば森や洞窟も点在。ちょうど幕末に形成された横浜中華街も見られるので、ちょっとした歴史探訪も可能だ。

 さらに、舞台となるフィールドはいくつかの土地に分かれており、それぞれには「土地因縁」というシステムがある。その土地と主人公の友好度みたいなもので、特定の目的を達成すると徐々に上昇。レベルに応じて報酬が手に入る。

 その土地の村を占拠している野盗や浪人の退治や、賞金をかけられているお尋ね者の討伐、点在する社へのお参りなど、土地因縁のレベルを上げるための条件は多岐に渡る。横浜ひとつを取っても、元町、馬車道、神奈川、本町など土地は多く、その都度開放されたコンテンツをメインストーリーより優先して制覇しようとすれば、何十時間あってもクリアできそうにない。探索だけでゲームが1本別で作れそうだ。

 寄り道しているといよいよ果てしないので、どこかで切り上げてストーリーを進めたいとも思うのだが、お尋ね者を倒せば役人から報酬としてアイテムなどが購入できるので賞金稼ぎみたいに各地を放浪したくなり、蔵に隠されている宝箱には貴重な武器や防具が入っているので、解放した村は練り歩きたくなる。報酬という面から見ても探索によるうまみが用意されており、プレイ中は本作のオープンワールドの世界を持て余すということはほぼなかった。

 探索はオープンワールド系ゲームの醍醐味だが、本作はそれらを短縮、効率化するためのシステムも手厚い。各地にある「隠し刀の旗印」を解放すれば、以降はそこにいつでも移動が可能。いわゆるファストトラベルができる。PlayStation 5に搭載されているSSDのおかげでロード時間は非常に速く、横浜内の移動であれば長くても3、4秒。今回のプレイでは江戸も確認できたので、試しに横浜と江戸を切り替えてみたが、そちらは7秒ほど。ロード時間によるストレスはほとんど感じなかった。

敵を倒して得た経験値は、隠し刀の旗印に触れるとポイントに変換できる。手に入れたポイントを使って、さまざまなスキルを解放可能だ

 フィールドを移動する手段としては、ほかにも馬と鉤縄、滑空装置の「アビキル」などがある。馬に乗れば徒歩よりもずっと速く動けるし、特定の場所なら鉤縄を使って立体的な移動も可能。屋根伝いに進んだり、一気に建物の屋上に飛んだりできる。空中でアビキルを展開すると滑空ができ、高所から移動するときに最適だ。

 とくにうれしかったのは、馬に乗っているあいだも素材を取れること。本作ではアイテムを調合できるのだが、そのための素材はいくつあっても足りない。なので探索やミッションに向かう道中でついでに集めるのだが、馬に乗りながらでも収集できるおかげで効率が良い。白い枠で強調されている素材に向かいながらボタンを連打するだけでいつの間にか取れている。序盤は必須だから時間をかけてでも集めるが、装備が整ってからは面倒くさくなってやらずにいたせいで、特定の素材が足らずに後ほど苦労するというパターンは多いので、こうした効率化はとてもありがたかった。

多数の武器と多数の流派 「閃刃」や「石火」も相まって多彩かつスピーディーな戦闘が楽しめる

 本作を語るうえでは戦闘も欠かせない。基本的には□ボタンによる通常攻撃が中心で、ほかには□ボタン長押しによる溜め技、L1ボタンの防御、○ボタンの回避などをおもに使う。また、自分が各種行動を取ると気力を消費していき、これがゼロになった状態で攻撃を受けると、しばらくのあいだ動けなくなる。

 逆に相手の気力を削り切ると、「追い打ち」という大技が使える。通常攻撃や溜め技よりもはるかに大きなダメージを与えられるため、言うなれば必殺技のようなもの。要は気力を切らした側が不利と考えればいい。こちらは気力を保ちながら、相手の気力を削っていくのが重要なわけだ。

 気力はなにもしていない状態が続けば自然に回復するが、その間は敵に反撃の隙を与えてしまう。そこでオススメなのが「閃刃」だ。攻撃後にタイミングよくR1ボタンを押すと発動し、刃に付いた血を払うとともに自身の気力を回復できる。そのまま連続攻撃に移れるので、攻勢を維持したいときはとくに役立つ。タイミングよく押すのがコツではあるが、基本的には攻撃が終わった直後を狙えばいい。

カウンター技の“石火”。相手の攻撃に合わせて△ボタンを押すと発動し、効果中に受けた技を無効化できる。単発の攻撃、あるいは連続攻撃の最後の技を石火でさばくと相手は一時的に怯むため、反撃の糸口になる。いっぽう、失敗すると気力を消費するうえダメージを受ける可能性があり、上級者向けの技と言える

 近接武器には、刀、槍、二刀、大太刀、サーベル、薙刀、銃剣、大剣、牛尾刀、素手の10種があり、さらにそれぞれには流派も用意されている。刀を例に挙げると、主人公が初期から覚えている「無明流」を始め、「北辰一刀流」「立見流」「神道無念流」「示現流」「柳生新陰流」などがある。流派によって構えも違えば、通常攻撃の振り方や溜め攻撃の内容、さらにR1+□or△or×でくり出す“武技”も違う。とくに立見流は居合を軸にしたカウンター寄りの流派であり、刀のほかの流派とはかなり使い勝手が異なる。

 個人的には刀や二刀、槍あたりはクセがなく使いやすい。だが、なにぶん本作は戦闘スタイルが多いため、相性に関しては自分で確かめるのがもっとも効率的だろう。

“倒幕の英雄”に“居合の達人”、“不殺の剣士”……ロールプレイがとにかくはかどる

 プレイヤー=主人公という構図、歴史上の人物たちとの交流、歴史を左右する選択、多彩な戦闘スタイルなどのおかげで、プレイヤーの入り込む余地が広く、本作はロールプレイがはかどる。井伊直弼の横暴を許さない一介の攘夷志士として、長州藩や薩摩藩の人物と運命をともにするのもいいし、倒幕に執着して前が見えない連中から徳川を守るため、幕府側についてもいい。会話では相手の好みに合わせた返答をして気の合う相棒的存在になったり、逆に反対されるような言動でライバルのような関係を目指したりするのも一興だ。

 戦い方で言うなら、居合の達人として立見流だけを使い続けるのもおもしろい。あるいは敵を殺さない“不殺武器”の木刀などを使い、不殺の剣士としてすべての敵を無力化していくのも良いかもしれない。史実をベースにしていることがシンプルかつ強烈な説得力となり、自分のプレイスタイルにリアリティや臨場感をもたらしていると感じた。

 史実をベースにしたストーリーを始め、自分の選択が日本を変えていくシステム、オープンワールドで描かれるフィールドや大ボリュームの探索要素、気力を交えたスリルのある斬り合い、武器種と流派によって幅の広い戦闘スタイルなど、本作はさまざまな要素が高いクオリティでまとまっている。時代劇が好きな人、アクションが得意な人、探索に目がない人など、幅広い層に向けられた珠玉の一作だ。

© 2024 コーエーテクモゲームス. Rise of the Ronin is a trademark of KOEI TECMO GAMES CO., LTD. Published by Sony Interactive Entertainment Inc.

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