wacci・橋口洋平が『今日好き』提供楽曲に込めた想い 「青春時代なら違う歌詞が書けたとは思わない」

純粋な事実を述べる 橋口なりの“寄り添い方”

ーー橋口さん自身が「花束」の制作、プロデュースを通して気づいたことはありますか?

橋口:いま話した「気持ちによって歌は変わる」というのもそうですし、あとはそうですね……。これはニュアンスの話なので上手く言語化できるかわからないんですけど、僕は年齢的にも、青春時代を俯瞰して見てるんですよ。これから“今日好き”みたいなドキドキするような恋愛も経験しないだろうし(笑)。「花束」の歌詞もどこか客観的というか、俯瞰で書いてるんですよね。たとえば「君という花と 僕という花で/共に過ごした花束のような日々は」というサビのフレーズもそう。“花束のような日々だったな”とわかるのは、おそらくずっと後のことじゃないですか。まさに時期いま、青春時代を過ごしているメンバーのみなさんがこの歌詞を歌うことって、良さと違和感が同時にあるような気がして。wacciの「空に笑えば」という曲も似たような感じがあるんですよ。青春真っ只中を描いてるんだけど、それを俯瞰しながら歌ってるっていう。

ーー興味深いです。

橋口:僕は自分が実際に経験したことやそのとき思ってることを歌にすることがほとんどなくて。ある程度、客観視できるようにならないと書けないんですよ。ときが経って、“あの日々はこうだったな”と言語化できて初めて曲になる。なので「青春の時期だったら、もっと違う良い歌詞が書けたかも」とは思わないんです。とは言え、青春時代には歌にできることがいっぱい詰まってるんですけどね。

ーー橋口さんが青春時代を俯瞰しながら書いた歌詞を、いままさに青春を過ごしている彼ら、彼女らが歌う。だからこそ「花束」には普遍性が宿っているだと思います。

橋口:ありがとうございます。歌詞のバランスを取るのはかなり難しかったんですけどね(笑)。たとえば冒頭の「あの日 勇気を出してよかった 隣を見れば君の横顔」「なりたい自分になれたかどうか わからないけど 君と出会えた」という歌詞。最初に言ったようにメンバーのみなさんは勇気を出してこの企画に参加して、その結果、7人のつながりが出来た。説教くさくなるのは嫌だけど、この歌詞ってメンバーのみんなみなさんにとっては純粋な事実じゃないですか。“何があっても、このつながりは消えない”というのはテーマの一つではあったんだけど、それをそのまま書くというより、みんなが経験した事実を並べることで感じてもらいたかった。そこに関してはノンフィクションとして描くという意識がありました。そこでしか僕は寄り添えないと思ったので。

ーー「Bouquet by 今日好き」のファンのみなさんに対して、「花束」を通じて伝えたいことは?

橋口:おそらくメンバーのみなさんと近い世代の方が見ていると思うし、みんなの恋愛物語や葛藤みたいなものに共感している方が多い気がして。「花束」で描いている出会いと別れ、そこからまた進もうとする力強さに共感してもらえたら、書き手冥利に尽きますね。

ーー「花束」を7人で歌う姿も楽しみにしている方もたくさんいらっしゃると思います。

橋口:僕も楽しみです。ただ、この曲はたぶん歌うのが難しいんですよ。僕が作る曲はどうも歌いづらいらしくて(笑)。でも、この曲もたぶん歌うのが難しいんですけど、「花束」はいろんな人に歌ってほしいです。合唱っぽくもできると思うので、ぜひ歌ってみてください。

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