ボカロP・子牛×南ノ南が語る“ネタ曲”の歴史と重要性 仕掛け人が目指すのは「文化の継承」

子牛×南ノ南が語る、「ニコニコとボカロ文化」

ネタ曲の定義や気をつけるべきポイント、これからの「ネタ曲シーン」について

子牛、南ノ南

──最近は、カップヌードルとCMでコラボするまでに至ったボカロP・ゆこぴさんの「強風オールバック」のような曲がネタ曲として注目されています。どんな要素があればネタ曲と呼べると思いますか?

子牛:「強風オールバック」がネタ曲か否かを僕が断じることはできませんが、ボカコレのネタ曲ランキングにおける「ネタ曲の定義」については、すごく悩んだテーマですね。僕としては、結局「人を笑わせるために作られた曲」は明確なネタ曲なんじゃないかなと思っています。それから、『ネタ曲投稿祭』の運営者としては、“モテようとしているかどうか”も大切なポイントだと感じています(笑)。モテようとしていない曲がネタ曲ですね。

南ノ南:ネタ曲はやっぱり人を楽しませる心意気がすごく大事だと思います。けれど、あまりにも肩に力を入れすぎてしまうと、逆に面白くなくなってしまう可能性がある。だから、僕としては自分自身も楽しみながら、聴く人にも楽しんでもらえるような作品を作るように心がけていますね。

──かつてはニコニコ動画を中心に大きな盛り上がりを見せたネタ曲ですが、最近ではさらに多様なリスナーに届いていると感じます。こうしたシーンの広がりをどう受け止めていますか?

子牛:本当にそうですね。ネタ曲って、ボカロとは本当に密接な関係にあるんです。初音ミクとか、それよりも前のKAITOとかMEIKOが登場した時代から、ニコニコ動画の文化と一緒に育ってきたジャンルだと思います。

 だから、ネタ曲っていうジャンルは、歴史的に見てもとても大切なもので。2020年の前半にはちょっと不人気ジャンルに落ち込んでしまったんですけど、ネタ曲を作る人がいたり、有志で始めた『ネタ曲投稿祭』が盛り上がったおかげで、このジャンルは現時点でも一定の存在感を保っています。一生懸命取り組んでくれる人がいるから、今たくさんの人に聴いてもらえるようになりました。

 続ける人がいないと弱くなってしまうジャンルなので、ネタ曲を作ってくれているみなさんにはこれからもずっと作品を作り続けてほしいですし、ネタ曲を作ったことがないボカロPさんにはぜひボカコレの『ネタ曲投稿祭』ランキングを機にネタ曲制作にチャレンジしてみてほしいですね。

子牛

──ネタ曲には、ボカロ特有の「何でもあり」の精神がいかされています。だからこそ、気をつけているポイントや、興味を持った人にも守ってほしいことがあればぜひ教えてください。

子牛:当然のことですが、キャラクターやIPの権利関係を侵害しないことは、とても重要なことだと思います。ネタ曲はいろんな意味で普通の曲よりも目立つことが多いので、ちょっと際どい曲を作る時は、ルールやマナーをしっかりと意識して、普段以上に気をつけていかないといけません。

南ノ南:僕ら、飯食う時でもそういう話をしてますよね。

子牛:そうそう。どこまでがセーフでどこからがアウトか、常に考えながら作っています。実際に完全にセーフかどうかは、僕らのようなユーザー側で完璧に判断できるものではないんですけどね。

南ノ南:たしかに、完全にセーフかどうかわからないこともあります。ですが、少なくとも自分が作った曲に関しては、サイトやコンテンツの規約を確認して、「これなら大丈夫だ」と判断してから投稿するようにしています。それぞれの規約に注意しながら、これからも制作していきたいと思います。

子牛:結局のところ、笑ってもらえる範囲内でおさめることが大事ですよね。気をつけなきゃいけないのは、やっぱりそこだと思います。

南ノ南

──パロディやオマージュの範囲におさめたり、ジョークで済まされるラインを見極めることが大切ということですね。最後に、お二人はこれからのボカロ界隈でどのような役割を担っていきたいと考えていますか?

南ノ南:僕は、自分の曲がネタ曲の楽しさを誰かに伝える入り口になるといいなと思っています。他の人たちが「自分もネタ曲を作ってみよう」とか「面白い作品を作ってみよう」と思ってくれたらうれしいですね。

子牛:僕は、ボカロという文化がニコニコ動画で生まれた背景を大切にしながら、“ニコニコらしい作品”を作り続けたいと思っていて。YouTubeや他のプラットフォームで流れる作品とはまた違う、ニコニコ動画独自の魅力がたしかにあるんです。

 とはいえネタ曲がニコニコらしいかというと、それはまた別の話で。実際、南ノ南さんやぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬさんのような最前線で活躍しているネタ曲ボカロPさんはニコニコよりもYouTubeで多くのリスナーさんにウケています。

 ただ、いじりやすい曲にはコメントが多くつきやすいなど、複雑な意味合いの「ニコニコ動画らしさ」があったりするんですよ。そんなニコニコ動画の特色を常に意識しながら、“ニコニコ動画とボカロの関係性”を表現していきたいと思っています。

子牛、南ノ南

■イベント概要
イベント名:『The VOCALOID Collection ~2024 Winter~』
開催日時:2024年2月22日(木)~25日(日)
開催場所:ニコニコTOPページなどのネットプラットフォームほか
公式WEBサイト
公式Xアカウント

協賛:東武トップツアーズ / Adobe
メディアパートナー:interfm/GAKUON!/関内デビル/JFN/smart/SCHOOL OF LOCK!/Music House/RADIO MIKU/テレビ朝日ミュージック

■『ネタ曲投稿祭 巡回生放送』開催概要

 ボカコレ2024冬では、ネタ曲投稿祭運営による「ネタ曲投稿祭 巡回生放送」の実施が決定。ボカコレ2024冬ネタ曲投稿祭ランキングに投稿されたほぼ全ての作品を子牛と南ノ南の2名でコメントしながら1曲ずつ紹介する予定。この機会に2人と共にネタ曲投稿祭ランキングの作品をチェックしてみてほしい。

『ネタ曲投稿祭』ランキング参加要項はこちら

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