AI失業に備えて認知しておくべき“ゴーストワーク”とは? 専門家が語る

“AIのフォロー”という仕事の誕生

――AIが労働市場に進出することによって生まれる仕事もあるのではないですか?

井上:もちろんあります。“ゴーストワーク”と呼ばれており、シンプルに言うとAIがうまく機能するために、人間がフォローする仕事です。たとえば、SNSなどで暴力的な画像を投稿できないようするためには、人が暴力的な画像がどうかをラベル付けして、そうしたデータをAIに読み込ませ、「機械学習」させなければなりません。そうしたラベル付けの仕事がゴーストワークの一例です。

――AIが不完全だからこそ生まれる業務ですね。

井上:アメリカでは現在ゴーストワークが増えています。ただ、長期間勤務する仕事ではないため、雇用契約を結ばず短期的に仕事を受ける“ギグワーク”的な働き方が一般的。当然生活は安定せず報酬自体も特に良いわけではありません。

――ゴーストワークが日本でも広まれば格差はより開きそうな……。

井上:アメリカでも専門家が「ゴーストワーク向けの労働組合を作るべき」「安く使い倒すべきではない」と主張していますが、私も同意見です。ゴーストワークのような“AIには難しいけど必要不可欠な儲からない仕事”は今後続々登場するため、いまからゴーストワークの存在を知っておくことは大切です。

不平不満にアンテナを張る

――最後にAI時代にビジネスパーソンとして、どういうスキルなどが求められるようになりますか?

井上:いまのAIは結局指示されないことには動けません。AIと競合しやすいホワイトカラーに従事する人は特に、能動的・積極的に考えて動けるようにならないと厳しいです。

――AIでは担えない部分を伸ばす必要がありそうですね。

井上:そのなかでも問題を発見し解決する能力はとても重要です。

――どのように問題発見能力を身に着けると良いですか?

井上:自分自身が抱えている不平不満を大切にすることです。その不平不満を抱えていることは自分だけとは限りません。多くの人がその解決を望んでいれば、それだけビジネスチャンスは広がります。たとえば、背中がかゆいけどかきにくいという不満から、孫の手のような商品が生まれたものと考えられます。まずは日常の不平不満や文句をメモ帳やSNSなどに書き込んでみると良いと思います。

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