ファッションのフロンティアは“バーチャル”で花開く――『Virtual Fashion Collection “Voyage” 2023 Winter.』レポート

人気クリエイターによる新ブランド発表も 圧巻のクオリティが続く後半戦

撮影=ecochin

 ファッションショーも終盤に差し掛かる。6ショップ目は「LAYON」。一つ目は同ショップ初のバーチャルクチュール『Eau de LAYON』だ。

撮影=TATAMI

 香水をモチーフとして大胆に落とし込んでおり、きらびやかで透明感のある金色のシルエットは、「宝石のプリンセス」を思わせるコンセプチュアルな一着だ。王族のような歩み、去り際に光の粒子となって消える演出など、華やかな演出も相まって目を引くランウェイだ。

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 続いて登場した『STUNING』は、打って変わって冬にふさわしいリアルクローズなアイテムだ。メンズはボア付きのアウターに、ショートジャケットとワイドパンツの組み合わせ。レディースはニットワンピースに、ベストとのレイヤードになるツィードのハーフコート、大きなネックリボンと、冬らしさとトレンドが合わさった一着だ。

撮影=TATAMI

 オーバーシルエットの中に高貴さも宿したデザインは、「媚びない艶服」という『LAYON』のキャッチコピーを体現している。クールな大人の姿を形作る、注目の冬服だ。

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 そして7ショップ目は「EXTENSION CLOTHING」。バーチャルファッション業界のトップランナーともいえるブランドが送り出す新作は『BY EXTENSION』。

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 ジャケットを軸に据えた4WAY衣装で、スカーフやファークラッチ、脱着可能なサングラス、獅子のペンダントなど、様々なアイテムが徹底的に作り込まれた、これぞ「EXTENSION CLOTHING」の真骨頂とも言える高級志向なデザインである。

 ランウェイでは全てそろえた姿が披露されたが、外観をテーラードジャケットに変更可能なマテリアルデータも同梱されており、幅広い着こなしが期待できる一着だ。

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 そして、8ショップ目は天井から、無骨なコンテナとともに舞い降りた。

撮影=ecochin

 コンテナの中から現れたのは今回の隠し玉。「EXTENSION CLOTHING」のアルティメットゆい氏が立ち上げた新規ブランド「MAISON DARC.」だ。リアル寄りの衣装を、ユーザーが自由に組み合わせやすいよう単品販売を行ない、さらには現実のファッションアイテムの展開も計画している、「EXTENSION CLOTHING」の姉妹ハイブランドになるという。

VRファッションデザイナー・アルティメットゆいに聞く、“メタバースの服がまとう魅力” 「頭で思い描いたものがストレートに表現できる」

ソーシャルVRの世界には、ユーザーが使うアバターや、その“衣装”を販売する人がいる。「アバターの衣装?」と思う方もいるかもしれな…

 今回発表された『Street,Grunge Collection Vol.1』は、ダメージドなカーゴパンツ、キャップ、スニーカーなど、ストリートファッションを構築するコレクションだ。現実の装いとしても通用するアイテムたちは、出演アクターのように、三者三様のルックスを作ることだろう。演出面でも大きく力が入った、野心的なブランドの“旗揚げ”にふさわしい舞台となった。

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 そしてトリを飾ったのは2ショップ。『Voyage』主催・ゆいぴ氏によるブランド「Melty Lily」と、アバターブランドとしても知られる「VERMILION Studio.」だ。

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 「VERMILION Studio.」からは3Dモデルシリーズ「Melody of the Mana」より、『ヴァイス』というアバターが登場した。「狼をモチーフにした決闘者」という設定のキャラクターで、いわゆる獣人のアバター。幻想的な世界観を作り出す、バーチャルならではな“身体”だ。

撮影=ecochin

 そんな狼の剣士にエスコートされ現れたのが、「Melty Lily」が送る『Wedding Collection Vol.2』だ。黒一色のドレスに込められたメッセージは「あなた以外の色には染まりません」。晴れ舞台にふさわしい豪奢なドレスは、性別を問わず惹きつけられるものだ。

 そして、ヴァイスとの組み合わせはまさに「美女と野獣」。現実に縛られないイメージを作り出し、美しきロマンスも感じさせる一着により、『Voyage 2023 Winter』は幕を閉じた。

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