音楽生成AI『Suno AI』が話題 音楽家が好意的な反応を示すのは「特有の文化」が理由か

音楽生成AI『Suno AI』が音楽家に受け入れられる理由

 音楽生成AI『Suno AI』がにわかに注目を集めている。同AIはアメリカ・マサチューセッツ州の開発会社「Suno Inc」が開発したもので、楽曲の歌詞とスタイルを指定することで1分半ほどのトラックを生成できる。

 これまでの音楽生成AIと異なり、コードやメロディを感じられるしっかりとしたトラックを生成できるということで、X上で話題になっている。

 ゲームやテレビアニメ、ドラマ、映画などの主題歌・BGMを手がけるクリエイター集団・MONACAの神前暁氏は「ヤバいですねコレは」「70点くらいのを平気でポンポン出してくる」とXにポスト。「Stable Diffusion」以降イラストレーターが直面しているAI関連の議論・諸問題が音楽業界にもやってくるのでは、と発言した。

 一方で、それらの議論についてVTuber/VRクリエイター・MISOSHITA氏は以下のような分析をしている。

「AIで仕事がなくなるとかいう話もある中SunoAIに関しては一番夢中になってやってるのミュージシャンな気がする!」
「センシティブなイラスト系と違うのは、もともとサンプリングやマッシュアップ、リミックスなどがあったし、10年前にVaperWAVEなどのように、ただ元曲スクリューするだけみたないものも出てきたりして、なんだかんだその都度スターが生まれてるので、また新しい流れきたみたいな感じにとらえてる人が多そう」

 『Suno AI』に関連するポストをチェックしていると、DJやトラックメイカー、コンポーザー、作編曲家など、音楽関係のクリエイターは思った以上に好意的な反応を示しており、「音楽」と「絵」とで、表現の性質に違いがあることがよくわかる。

 浜崎あゆみや鈴木亜美、V6、NEWSなど多数のアーティストに楽曲を提供する作詞家/作曲家の木下智哉氏も「歌詞の意味を理解して作ってないですか? 盛り上げたいとこ、ちゃんとわかってる!」と絶賛。その後は「自分の手癖に絶対ないヤツ」「指示まる無視かw」と賛否を挙げつつも「熱いな! Suno AI!!」とコメントした。

 

 編集部でも実際に『Suno AI』を試し、いくつか曲を生成してみたが、木下氏が指摘するように指示を無視することも多く、現時点で「これひとつで作曲をすべておこなえる」というレベルには達していない。しかし、同AIは未だベータ版であり、また木下氏がコメントしたように、自分の手癖や引き出しの外側からもアイデアをもたらしてくれる補助ツールとして使える可能性はある。

『Suno AI』の生成画面

 また蔦谷好位置、田中ユウスケ、百田留衣、飛内将大、横山裕章など、多数のヒットメーカーが在籍するクリエイティブ・カンパニー「agehasprings」の代表である玉井氏は過去に以下のような発言をリアルサウンドに残している。

「オリジナル曲を当たり前に持ってる人が爆増することで、僕らの価値もどんどん上がる。そして音楽に対する評価も適正化すると思います。つまり、現時点でもなんとなく「作曲できる人はすごい」と思っている人は多いと思いますが、なんとなくではなく、どういう作曲がすごいということが、よりみなさんに理解してもらいやすくなる」

作曲AIは音楽家の仕事を奪わず、“地位”を向上させるーーagehasprings・玉井健二とPARTY・梶原洋平が語り合う「AIと創作」

音楽とAIについては、近年でさまざまな技術的進歩が起こっている。  とはいえ、それはテクノロジードリブンのものも多く、実用面や…

 この発言は約1年前、「Stable Diffusion」などのイラスト生成AIが話題になっていた時期のもの。こうした時代がもしかしたら訪れるのかもしれない。

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