アーケード音楽ゲーム史に残る“夢の饗宴” 『AMUSEMENT MUSIC FES 2023』の衝撃

『AMUSEMENT MUSIC FES 2023』の衝撃

各社のアーケード音楽ゲームの系譜

 アーケード音楽ゲーム業界への参入が最も早かった……というより、シーンそのものを開拓したパイオニアがコナミアミューズメントだ。七音社/ソニー『パラッパラッパー』(1996年)と並び立つ近代音楽ゲーム文化の先駆け『beatmania』(1997年)以来、同社が四半世紀を超えて展開してきたBEMANIは、名実ともに世界の音楽ゲームを代表するブランドとなっている。

 続くバンダイナムコ(旧・ナムコ)の初AC音楽ゲーム作品は、1998年11月稼働開始の『パカパカパッション』。その後の2001年に初代作が発売された「太鼓の達人」を、同社は低年齢層を含め幅広いプレイヤー層を惹き付け、リリースから20年以上を経た今もなお絶大な人気を誇る一大フランチャイズに仕立てた。近年も『シンクロニカ』(2015年)で井上拓(TAKU INOUE)をサウンドディレクターに据えて挑戦的なコンセプトを披露するなど、その独自性には目を見張るものがある。

 次なる参戦者はセガ。かつて1999年1月リリースの『モグラッパー』で参入した同社は、『オシャレ魔女♥ラブandベリー』(2004年)で女児向けトレーディングカード×音楽ゲームという新分野を切り開くなど、BEMANIとは異なる切り口から今日のアーケード音楽ゲーム文化に寄与。2012年以降は「maimai」「CHUNITHM」「オンゲキ」の3大シリーズを軸として業界を牽引する。

 タイトーは『ミュージックガンガン!』(2009年)からの業界参入。4社中では最後発ながら、いまや商業音楽ゲーム作品に不可欠といってよい「東方アレンジ楽曲の収録」「ボーカロイド歌唱のオリジナル楽曲収録」の両分野で、競合他社に先んじた実績がある。2023年現在は「グルーヴコースター」「テトテコネクト」「MUSIC DIVER」の3作品を主軸とした運営を行い、先行3社と並ぶ存在感を示し続けている。

音楽ゲームメーカー間コラボの前例

 互いが競合他社にあたるこれら4社のアーティストが一堂に会し、会社間の共同出演枠まで予告されているAMUSEMENT MUSIC FES 2023は、先述の通り空前の取り組みである。もっとも、ライブという形態から外に目を向ければ、アーケード音楽ゲームのメーカー間コラボがこれまでに皆無だったわけではない。

 代表として言及すべきは『天下一音ゲ祭』だ。これはJAIAの前身の一つである全日本アミューズメント施設営業者協会連合会(AOU)が主導した、業界各社が参画する合同eスポーツ大会。2014年の第1回はコナミデジタルエンタテインメント『jubeat saucer fulfill』、セガ『maimai ORANGE』、バンダイナムコ『太鼓の達人 キミドリVer.』、タイトー『GROOVE COASTER EX』の4機種が競技種目として選定されていた。

 天下一音ゲ祭は2019年までに全5回が開催され、企画の一環としては各社の内製による新規楽曲の提供やゲーム機種相互の楽曲移植も、メーカーの壁を越えて成し遂げられている。たとえば前述の第1回大会では、猫叉Master(コナミ)、Hiro(セガ)、COSIO(タイトー)、Yuji Masubuchi(バンダイナムコ)と錚々たるコンポーザー陣が書き下ろした新曲が、4社の各競技機種に同時収録された。

 メーカー間の楽曲移植に関しては、近年も散発的に行われている。たとえばセガ「CHUNITHM」シリーズは大規模リニューアルを行った『CHUNITHM NEW』(2021年)のリリースにあたり、コナミアミューズメント「beatmania IIDX」「jubeat」、タイトー「ミュージックガンガン!」「グルーヴコースター」、ナムコ「パカパカパッション」、SQUARE PIXELS「EZ2AC」といった他社アーケード作品シリーズからの楽曲収録を実現した。

 直近の例を挙げれば、2023年11月16日にはセガ「オンゲキ」で、タイトー「グルーヴコースター」コラボの新イベントが開始。予告でも、同タイトルからの楽曲移植が訴求点として掲げられている。

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