5周年を機に振り返る、にじさんじ・EXゲーマーズの軌跡 7名が織りなす変幻自在の魅力
“漫才のようなフリートーク”を生み出した巡り合わせ
あらためて振り返ってみると、ゲマズの7人は“奇跡的な巡り合わせ”によって集まったといえるのではないだろうか。すくなくとも、筆者はそう感じている。
以前筆者が執筆した椎名・笹木の記事のなかでも触れているが、椎名は「デビューして1年ほどはスタッフやにじさんじのメンバーともあまり良い関係を築けなかった」と述懐し、笹木は「権利関係の問題でゲーム配信ができなかった」ことなどを理由に一度引退(その後復帰)という状況にあった。
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笹木の卒業にフォーカスを当ててみると、ゲマズ2期・3期メンバーが中心となって催された卒業配信のなかで、葛葉は「これまでコラボできなかったことを悔やんでいる」「もしも戻って来たら、こんなオレでよければ歓迎するので」と言葉少なながらも心境を口にしていた。
その後、笹木が奇跡的ににじさんじに復帰したとはいえ、今度は闇夜乃モルルと雪汝がつぎつぎと活動休止・卒業したことも踏まえれば、当時のVTuber~バーチャルタレントシーンの厳しさやさまざまな制約があったことを想像できるだろう。
こういった時期のシビアかつヘビーな時期をともに乗り越えたからこそ、ゲマズメンバーの7人は現在まで続く太い繋がり・厚い信頼を育むことになった。デビューから2019年中ごろまでは互いの距離感を掴みづらかったはずだが、徐々に関係性がハッキリし、互いの言動や嗜好性、踏み込んで良いラインをそれぞれがインプットしはじめてからは、現在のような仲の良さを感じられる雑談と軽口を叩き合う舌戦が途切れなく続く、彼ら/彼女ら特有のムードが生まれていくことになった。
笹木・椎名・本間の3人は関西出身ということもあり、場の空気を盛り上げて会話を繋ぐコミュニケーション術で全体の雰囲気を形作り、叶・葛葉は高いゲームスキルをみせつつ、その時々の状況で言動をコロコロ変えてげまじょ組やリスナーを巧みに煽る。
その隙間からりりむが斜め上の素っ頓狂な一言が発してはツッコミをうけ、赤羽は脇でニコニコと見届けながらマイペースにみなをまとめようと試みる。
おおよそゲマズ7人が生み出す空気や雰囲気はこういった形になることが多い。
配信映えする愉快な会話と正確なコミュニケーションの両立にはボケ/ツッコミ/まとめ役という三すくみが必要になってくるが、このメンバーが持ち合わせていた個性・特徴が自然とその役割を埋め、数年に渡っての交流が「一種の芸」「漫才に近いフリートーク」となるまで磨かれることになった。
2022年1月末に『VALORANT』のカスタム対戦が配信された際には、ゲーマーズによる即席チームが組まれたこともある。この配信には本間、笹木、椎名、りりむ、葛葉のゲマズ5人にくわえて、エクス・アルビオ、イブラヒム、ラトナ・プティ、奈羅花、西園チグサら後輩組が加わり、数日前からの告知もあって多くの注目を集めた配信であった。
配信の後半に「リスナーも見たかったと期待していたと思うんですが、ゲマズ組と後輩組でやりましょう」と西園が切り出し、対戦がスタート。
結果から言えば、ゲマズ組が大敗。後輩組もかなり『VALORANT』をプレイするメンバーが多く、熟練度の差がそのまま結果に現れた格好となったが、対戦中のゲマズ5人のやり取りは、まさに「漫才に近いフリートーク」のようだった。
笹木/椎名/本間が会話の中心となり、りりむがアイディアを出したところに葛葉がツッコミをいれ、それを受けて女性陣4人がアレやコレやと話しを広げ、収集がつかなくなったところまとめようと試みる葛葉にすらも女性陣がつっこんだりと……さながら痴話ゲンカのような、これぞ「ゲマズ漫才」と言いたくなるコミュニケーションが生まれていた。
対戦終了後も痴話ゲンカは止まることなくつづき、親しいはずの後輩5人らも止めることなくゲマズのやり取りをみているのみ。「ゲマズ解散!」「今日はもうやらない!」と盛り上がったところで「じゃあ今日は終わりますか」と西園が声をかけると、「いややろうよ!」「だまされた? ゲマズのノリに?」と一転して素に戻るゲマズの5人。
こうしたフォローをきちんとするあたり、彼ら/彼女らがどれだけ意識的に「会話・コミュニケーションを芸として意識しているか」が伺い知れるだろう。
同期としてデビューした者同士がどのように噛み合うか? ライバーに限らず、人と人との相性は“巡り合わせ”次第だ。学校のクラス分けや部活選び、新卒で入社した会社、アルバイトで選んだお店や職種など、さまざまな場面と巡り合う人によって自分の運命が大きく変わる。
11月23日にはゲマズとして2度目となる3Dライブ『EX Gamers 5th Anniversary Live "ENCOUNT"』が開催される。「ENCOUNT」という言葉は、「(偶然の)出会い」や「遭遇」を意味している。
FPSゲームでよく使われる「エンカウント」というと一般的には敵との遭遇・交戦を意味するので、ゲマズのメンバーが舌戦を繰り広げるワンシーンにもピタリと合ううえに、いかに互いの“巡り合わせ”を重く捉えているかをも意味にしているともとれる。
苦難を乗り越えて、気負いすることなく軽口をたたいたり、笑いあえたりする仲間を得たゲマズの7人。これ以上にないほどの“巡り合わせ”とともに、今後も大黒柱として太く・長く活動を続けていくことになるだろう。