レースゲームにおける“本物”の音作りとは? 『Forza Motorsport』オーディオディレクターに聞く
「現実」は主観的 好むのは「本物(authentic)」という言葉
――やはり『Forza Motorsport』におけるサウンドメイクのゴールは、リアリティ(reality)の追求にあるのでしょうか?
Nick氏:個人的には「現実(realism)」という言葉は好きではないんです。なぜかというと、ちょっとおかしく聞こえるかもしれませんが、それって非常に主観的だからなんですね。どちらかというと、私は「本物(authentic)」という言葉を好んでいます。例えば、私が10人の「車の音を聴いた」という人と話をするとして、それぞれの想像する音というのは実はまったく違っていると思うんですね。現実の道路を走る車の音を想像する人もいれば、実際のレースの音を期待している人もいるでしょうし、テレビや映画に出てくる車の音を想像する人もいますよね。「トップ・ギア」や「グランド・ツアー」のような自動車番組を見る人もいれば、YouTubeだけを見る人もいるわけです。どの音も異なっていますが、どれも正しいといえるわけですね。では、どの音が“より”正しいのか? それを突き詰めていくのが、私の仕事だと思っています。
――実際に『Forza Motorsport』のプレイヤーには、コアなモータースポーツを期待するファンはもちろん、私のようにカジュアルに運転を楽しみたいという人もいて、そうしたさまざまな需要に対して、ゲーム側で一つのサウンドを提示するのはとても大変な作業なのではないかと思います。実際に、ゲーム側ではこの課題に対してどのようにアプローチしているのでしょうか?
Nick氏:『Forza Motorsport』がこれまでのシリーズ作品よりも優れている点の一つとして、車をアップグレードすると、その内容に合わせてサウンドも変化するようになっているんですね。例えば、「ワイルド・スピード」のような映画に出てくるような、ものすごくアップグレードされた車の音に慣れているような人は、ゲームの中で車をフルアップグレードすれば、同じような音を楽しむことができます。一方で、普段からドライブに慣れ親しんでいるような人であれば、ノーマルの状態でレースに出れば、そういったノーマルなサウンドを楽しめます。本作のアップグレード・システムはその両方を可能にするもので、もはや私たちは一つのサウンドに縛られる必要がないのです。
ノーマルの音を好む人もいれば、アップグレードした音を好む人もいるでしょう。とはいえ、多くの人はアップグレードした音を好むのではないかなとは思っています。全体的によく聴こえるようになりますからね。
――最後に、今後のゲーム業界におけるオーディオの進化について、どのような点に期待していますか?
Nick氏:私が思うに、音響というのは、それがリアルであってもフィクションであっても、その世界を再現するうえで非常に重要な役割を担っています。グラフィックが向上することによって、まるで実際の現実のように見える世界が構築できるようになったように、オーディオもまた進化することによって、より一層に、実際にその場所でその音を聴いているような感覚を得られるようになるのではないかと思います。
また、個人的には自動車業界における電動化の動きが進むことによって、今後、まったく新しい、興味深い選択肢や挑戦、課題などが出てくるのではないかなと思っています。これまでの自動車業界が刺激を与えてくれたのと同じように、いまはそれに非常にワクワクしていますよ。
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