『ストリートファイター6』をプレイして感じた「モダン」の強さと難しさ。なぜ「モダン論争」は起こるのか

 一定の人気を獲得した格闘ゲームにおいて、議論や論争はつきものだ。どのキャラクターが強いのかや、プロの中で誰が一番強いのかといったテーマはSNSから友人間の雑談まで、格ゲープレイヤーなら必ずと言っていいほど耳にする話題だ。

 現在、最も人気を博している『ストリートファイター6(以下、スト6)』でも同様で、リリースから3か月が経過し、各キャラクターの性能が徐々に周知されたこともあって、こうした話題に事欠かないタイトルとなっている。

 そんな『スト6』に関する話題の中で、最も様々な声が挙がっているのがいわゆる「モダン論争」だ。新しい操作方法として登場した「モダン」システムは、簡単な操作で必殺技やコンボを繰り出せる操作法で、本作のリリース前から敷居が高いと思われがちな格闘ゲームの間口を広げることが期待されていた。その一方でモダンタイプで操作するプレイヤーとの対戦を嫌う人も少なくなく、またモダンを使用したプロプレイヤーが結果を残していることもあってか、バランスやシステムの是非が議論の的となっている。

 本稿ではそんなモダンシステムについて、否定的な意見の要因や、バランス等について幅広く考察していく。なお、本稿は筆者の主観がかなり入る。全キャラダイヤを目指している。メインキャラではマスターランクが怖くて触れていない。そんなレベルのプレイヤーが執筆していることは留意してほしい。

『ストリートファイター6』 ローンチトレイラー

格闘ゲームの敷居を下げた「モダンシステム」

 まず、格闘ゲームの敷居を広げたという点で、モダンシステムは成功していると言えるだろう。これまでの格闘ゲームは、「波動拳」や「昇竜拳」といった基本的な必殺技を安定して繰り出すのにも練習が必要だったが、モダン操作は簡単な操作で技を繰り出せるので、すぐに本格的な対戦へと挑むことができる。こうした点は、これまで格闘ゲームを遊んでこなかった人や、忙しくてコンボを練習する時間のない人にとっては「始めてみよう」と考えるきっかけになるだろう。

 とはいえ、簡易な入力で対戦の間口を広げる試みは、実は本作より以前にも存在した。例えばボタン連打でコンボがつながるシステムや、簡単に必殺技が出せるシステムなどが挙げられる。しかし『スト6』は、一発逆転の狙えるドライブインパクトや、攻めの展開を作りやすいドライブラッシュ、有利の取れる通常技が少なく「固め」が継続しづらくなっている等、ゲームの遊びやすさ・分かりやすさを向上させる要素もまた多く存在する。有名プレイヤーによる攻略動画等が充実していることも相まって上達も感じやすいため、新規が続けやすいゲームになっている点も本作の盛り上がりに寄与しているのではないだろうか。

 本作が発売されるより以前にも、筆者はこれまで多くの友人を格闘ゲームに誘ってきたが、始めてくれたのはごくわずかだった。誘った友人の中には各種大会の動画やストリーマーの格闘ゲーム配信を視聴している人もおり、いくら入り口を広げても、入りづらくては意味がないと実感させられたものだ。それが『スト6』では「簡単な操作があるから」という理由で始めてくれる友人が複数人存在し、非常にうれしく思っている。読者の中にも、筆者と同じような経験をしている人は少なくないだろう。

 新規の獲得はゲームの盛り上がりや寿命に大きく関わることを考えると、モダンシステムは初心者だけでなく、コミュニティ全体に貢献していると言えるのではないだろうか。これまで新規の獲得が困難だった格闘ゲームではなおさらだ。

ボタン1つで波動拳!『ストリートファイター6』モダンタイプ実践映像【リュウ編】

モダンの強みは堅い守り

 一方で、モダンシステムに対しては否定的な意見も存在する。その多くはモダン操作の防御力の高さが要因だ。

 モダン操作では火力の低下や出せない技が存在するといった制限と引き換えに、1つのボタンを押すだけで必殺技を出せるため、レバーや十字キーでコマンドを入力する必要のあるクラシック操作に比べて対空技や無敵技を確実に、素早く出すことが可能となっている。この入力方法が生み出す安定した切り返しの強さゆえに、モダンはクラシックの単純な劣化に留まらない操作法となっている。

 この切り返し=防御の強さがあるため、モダン操作を相手にするときはいつもより気を使ってプレイしないといけなくなる。甘いジャンプは対空攻撃をされるし、ドライブインパクトは簡易入力の「スーパーアーツ(いわゆる超必殺)」で返されるといった風に、クラシック操作相手ならほとんど咎められない行動も無視できないリスクがつきまとうためだ。

モダンの強みのひとつである安定した対空技。簡単に必殺技を出せることは対戦に挑む際の敷居を下げた

 

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