まらしぃ×じん×堀江晶太が語り合う、“ボカロ”という表現形態の異色さと面白さ 「前提となるルールが全然制約になっていない」
「ボカロシーンの仕組みに、すごく救いがあった」(まらしぃ)
ーー最後にお三方に総括として、ボカロシーン全体への印象についても伺えれば。
堀江:昔からずっと面白くてカッコイイ文化だし、それがいまも続いてると思ってます。「ボカロって面白いな!」って定期的に盛り上がってるけど、そのたびに「そりゃそうだろ」って。
ーーそれはたとえばどういった点が?
堀江:「VOCALOID」というシンガーを使うルールが一応あるけど、それをクリエイター側が“ルールだと思っていない”ジャンルって珍しいと思っていて。ほかのジャンルだとたとえば、ギターロックはこのビートで、とか、こうしたらロックじゃないだろ、みたいな意見がどうしても出てくることがある。けれど、ボカロってその発想がないというか、前提となるルールが全然制約になっていない。いろんな音楽ジャンルを見ても、ここが一番その色が強いですね。
まらしぃ:レギュレーションが足枷になってないどころか、それが好きで楽しんですらいるというのは、すごい珍しいよね。
堀江:圧倒的にクリエイターの創作心を刺激する場所で、いくらでも創作を爆発させていい下地があるというか。あと、歌う人に関しても“解釈が無限大”じゃないですか。こういうシンガーさんだから大人っぽすぎるのはNGとか、こういうワードは使っちゃダメとか、そういうものがない。リスナー側の解釈で、どこまでも発展する可能性を秘めている部分もカッコイイですよね。
ーーありがとうございます。じんさんはいかがでしょう。
じん:僕も近い部分は感じていて、最近ボカロ以外の曲に携わらせていただく機会も増えたんですが、それぞれの型や伝統に適応する必要性を感じていて。でも、VOCALOIDは「どうぞお好きにしてください」って言われちゃう世界なんですよね。誰でもいつでもボカロPを名乗れるけど、間口の広さゆえに大海原に投げ出される、みたいな。
一方で、たとえば若かりしころの俺や晶太くんみたいな人が作曲家のオーディションを受けて合格するかというとそうは限らない。事実、僕も作曲家になりたくて19〜20歳の時にいろんな所に履歴書送ったけど全部ダメで。そんな時にVOCALOIDを選んで、こうして色んな機会をいただけるようになったんですけど、そういうチャンスに出会えるのは自由だからこそ、一方である意味自分を試される場所だともいまだに思ってます。
ーーなにもない場所に立つことで脚がすくんでしまうのか、「やったー!自由だぜ!」と作家性を解放できるのか。
じん:もう、毎日どっちもあります(笑)。なんでもできる自分と、なにもできない自分が両方いますね。それこそが、すごいクリエイターを大勢生み出す理由だとも思いますけど。
くわえて「初音ミク」という存在がいることで、“本当の意味での暗闇ではない”というか。なにもないところから音楽を始めるのではなく、初音ミクが一歩目を導いてくれる点も、シーンが盛り上がり続けるひとつの理由かもしれないですね。
ーー音声合成ソフトは言わば楽器ですが、キャラクターの姿形を取ることでハードルが下がる部分もあるでしょうね。
じん:そうですね。あ、最後に「ずんだパーリナイ」が大好きっていうのだけ残しておきます(笑)。ほかにもいろんな動画・楽曲がありましたけど、なんというか、大人が全然守ってくれない総合格闘技みたいな(笑)、なんとか工夫してここまで来たのに、相手がミサイルランチャー持ってた、みたいな。そういう破天荒さも、自由さゆえのものですしね。
まらしぃ:僕が思うボカロシーンの好きな所って、参加する人がみんな初音ミクを始めとした音声合成ソフトが好きな人ばかりだという点で。もともと僕は自分を前に出すのがあまり得意ではないんです。ステージで演奏する時は当然一人ですけど、普段の動画や生放送で顔を出してないのは、自分の存在よりもピアノの音を聴いて欲しかったり、曲を好きな人同士がわいわいやっている空気感がすごく好きだからなんですよ。
そういった、音声合成ソフトにフロントとして立ってもらって、その力を借りながら音楽を表現する仕組みに、すごく救いがあったと感じたのをいまだに覚えていて。集う人みんなボカロが好きで、すごくポジティブなサークルができているなと感じるんです。
熱量のある人が大勢集まってカルチャーを動かしてるのって、環境として貴重だなと。界隈の人たちもリスナーとして楽曲を受け取るだけじゃなく、コメントやSNSで曲を応援したり、イベントやライブに行ったり創作をしたり、能動的な人が多い印象で、それが「VOCALOID」という文化が持つ、なによりの素養なのかもしれません。
ボカロシーンに広がる「音声合成ソフトウェアの多様化」から生まれた新たな“創作論” いよわ×RED 対談
2023年3月18日~21日、ボーカロイド文化の祭典『The VOCALOID Collection ~2023 Spring~…
■イベント情報
『The VOCALOID Collection ~2023 Summer~』
開催日時 :2023年8月4日(金)~7日(月)
公式Twitter:https://twitter.com/the_voca_colle
公式ティザーサイト:https://vocaloid-collection.jp/
協賛 :東武トップツアーズ
メディアパートナー:Interfm / GAKUON! / JFN / smart / テレビ朝日ミュージック / SCHOOL OF LOCK! / Music House / RADIO MIKU
『「ニコニコ動画と初音ミクのキセキ」展』
会期:2023年8月5日(土)~9月10日(日) ※8/29、9/5は休館
時間:10:00~18:00(入館締め切りは閉館30分前)
会場:角川武蔵野ミュージアム 3F EJアニメミュージアム
主催:ニコニコ動画と初音ミクのキセキ 実行委員会
特別協力:クリプトン・フューチャー・メディア株式会社、株式会社ドワンゴ
公式HP:https://tokorozawa-sakuratown.com/special/miku16th/
会場公式Twitter:EJアニメミュージアム公式(@ej_animemuseum)
■まらしぃ イベント情報
まらしぃ主催フェス“まらフェス“大阪での開催が決定。
豪華スペシャルゲストとまらしぃの奏でるピアノ、一夜限りのコンサート。
『まらフェス2023 in 大阪城音楽堂』
https://www.subcul-rise.jp/marasy/marafes2023/
2023年8月19日(土) 大阪城音楽堂 OPEN16:00 START17:00
出演:まらしぃ
- Special Guest -
maras k(marasy×kors k)
logical emotion(marasy/drm/tabclear)
まらおバンド feat. 与野裕史
ビートまりお×まろん