まらしぃ×じん×堀江晶太が語り合う、“ボカロ”という表現形態の異色さと面白さ 「前提となるルールが全然制約になっていない」

まらしぃ×じん×堀江晶太 特別鼎談

「自分たちが持っていた熱量って、こういうものなのかもしれない」(じん)

一千光年

ーーいちリスナーとして当時拝見していましたが、とはいえ「新人類」と「一千光年」の頂上決戦のようなムードは大変興味深かったです。「一千光年」は人間のいよわさん率いる音声合成ソフトの総力戦な一方で、「新人類」はリンちゃんを先頭にしたクリエイター総力戦というか。対になる構図で、どちらが勝っても面白い展開だな、とは思ってて。

じん:龍虎相見える、的な。ドラマチックですよね。まらしぃくんとも話してたけど、「『一千光年』に負けるんだろうな」っていう感覚はすごくあった。過去に自分たちが持っていた熱量って、こういうものなのかもしれない、というのを曲から感じてて。

 今回、絶対的にいよわくんって主人公で。俺たちはこう……三国志の呂布みたいな。「倒さなきゃいけない」立ち位置で、客観的にも「いよわくんがんばれ!」みたいな部分はあったね。

まらしぃ:いまのシーンでも一線を張っているいよわさんと、僕を含めた2010年代のクリエイターが競っている状況は、当事者ながら一歩引いて見てた部分があったので。いよわさんが優勝した方が、ストーリーがあるのかなと思ってたし。

じん:でも、僕たちがそこで優勝したのもスポーツ漫画みたいでしたね。だって、いよわくん、もっといい曲書くってことだもんな、なんて勝手に思っちゃって。部門が違うけど、ルーキーもめちゃくちゃすごいよね。俺たちの最初のころとは全然違って……もはやクオリティがルーキーじゃなくない?

ーー部門としてはルーキーという単語を用いつつ、楽曲の質の高さはルーキーという言葉では片付けられないほどですよね。先ほども優勝の要因のひとつが“異質さ”では、という話がありましたけど、だからこそ、良くも悪くも変な部分、尖った部分が必要というか。

じん:ボカロだけでなく、音楽全体にも言えることですね。晶太くんはどうだった? 参加してみて。

堀江:僕は元々楽曲作るまでが自分の役割で、発表後にはあまり関心がないというか、そこからはもう聴いてる人のものだからお好きにどうぞ、という人間で。なので順位に関してはとくに語れることがないんですよね。ただ、さっきの若手の子みたいに、『ボカコレ』をきっかけにこの曲に出会って「いいな」って愛情を持ってくれた人がいたら、それだけで参加意義はあったなって。再生回数が何百万であろうが、そう思ってくれた人がいるかいないかの話なので。

まらしぃ:やっぱり『ボカコレ』はボカロ文化の盛り上がりに、すごくいい影響をもたらしてると思います。ルーキーランキングもだし、昔から活動されてる方の投稿もあったりして、お名前を見て嬉しくなりましたし。新旧問わずいろんな方が入り乱れて、今後もさらに面白くなるんだろうな、と思いますね。

ーー新規参入者は挑戦の場として、昔からシーンに携わっている方は原点回帰、名もない1投稿者に戻れる場というか。両方の側面を持つイベントですね。

じん:ちなみにですけど、二人はこの夏出るんですか? さっきの流れで晶太くんに出るよって言われたらひっくり返るけど(笑)。

堀江:俺は出ないよ(笑)。

まらしぃ:同じくですね(笑)。またタイミングが合えば出たいという気持ちはあるけど、今回十分楽しかったので。しばらくいい気持ちで余韻に浸りたいなという(笑)。

じん:僕も参加予定はないんですけど、今回「一千光年」と競り合って、こうして評価頂いたことをすごく大きく受け取っていて。じつはちょうどいま、初音ミクの曲を作ってる最中なんですが、「新人類」で1位を取った人だって思われる曲にしたいというか。まらしぃくんたちのおかげでそう考える機会をもらえて、参加したことに一人のクリエイターとして意味があったなと感じています。次回以降もいちリスナーとして楽しみですね。

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