まらしぃ×じん×堀江晶太が語り合う、“ボカロ”という表現形態の異色さと面白さ 「前提となるルールが全然制約になっていない」

まらしぃ×じん×堀江晶太 特別鼎談

「今回共作して、クリエイターってのは底知れないもんだなと改めて思った」(堀江)

ーー(笑)。ですが、楽曲制作の手法と曲の主題の方向性が類似した点は大変興味深いです。

じん:偶然の一致でしたね。ただ、まらしぃくんの「ウホウホ」の面白さというか、僕の中でピアノや芸術文化とその発想って一番遠い気がして。だったらもう今回は振り切った方がいいなと思ったんですよね。

堀江:普段は3人とも割と緻密な設計図を作るタイプだと思うんです。一方で今回は、小学生みたいな部分もありつつ、「どうせ後でなんとかなるだろ」「ひとまず面白そうなことはやっとこうぜ」みたいな感覚もありました。

 レコーディングも3人で入って、ドラムをヒトリエのゆーまおさんに叩いてもらったんですが、いつもならフレーズはもっとこう、みたいな案を伝えてやってもらうんですけど、今回は「まだどうなるかわかんないから、ひとまずここにビート入れといてもらえれば」という形でお願いしたり。あれは絶対1人じゃできなかったな(笑)。その無責任さが逆に功を奏して、無邪気な形になったけど。

 じん:セカンドとライトとセンターが誰もフライ取らない、みたいな(笑)。でも、普段1人できっちりやるからこそ、安心して作れたところもあって。嫌な言い方だけど「俺一人の曲じゃねえし」「最悪みんなの責任なんだから、好きなことやったれ」みたいな。その結果、唐突に「この曲で『ボカコレ』に出ようと思うんだけど」と言われてゾッとするという(笑)。

 そう考えると、優勝を一切狙ってない点も異質だったのかも。そういう方向の意識って賞レースのなかでは逆に目立つというか。

堀江:仕事なら絶対しないリスキーな制作とも言えるし。それを「狙ったな」と感じた人がいたとしたら、マジでエンタメってわからんなと思っちゃいますね。これだけ曲を作ってきた俺らが集まってもどうなるか読めないんだから。

じん:しかもこれ、歌詞を書く期間がすごく短かったんですよ。元々そんなに歌詞に時間をかけない方なんですけど、年内に書かなきゃいけないのに、あれよあれよと年末になり……結局まらしぃくんと俺で書いたの、12月31日じゃなかったっけ……?

まらしぃ:31日に書いて「お疲れ! 来年もよろしく!」って言ってたね。

じん:大晦日にめちゃくちゃ口の悪い歌詞書いてね(笑)。思い出深いのはそういう所ですね。自分一人で作らないことによる“ドライブ感”、「どこ行くの? この曲」みたいな。

ーー共作による先の読めなさが、徹頭徹尾いい方向へ作用していますね。

じん:晶太くんがなんも言わないのもずっと怖くて(笑)。

堀江:今回は二人が圧倒的に中核を作ってくれたし、それでいいかなと。最初から話は聞いてたけど、アイデアもわんさか湧いてたから、自分の役目はサポートだと決め込んで、なにかあれば一応言おうとは思ってはいたし、実際終盤にスケジュール進行の面では口を出しました(笑)。みんな忙しいけどマイペースだったから、終盤は俺が先導して全体進行してたんですよ。仕上げ連絡とか「どう? MIXあがってる?」とケツを叩いたりして早めに完成したから『ボカコレ』に間に合ったんじゃないかと(笑)。

まらしぃ:それはそう。

堀江:爆発力のある創作をきっちり仕上げるために集中するのは、やってて有意義だったし、そういう意味ではいい経験でしたね。

じん:アレンジをやるうえでのこだわりとかがあれば、この機会なんで聞いてみたいです。

堀江:二人の作った部分が充分しっかりしてたから、ラストの何割かだけ磨いた感じだね。IQは落ちるけどモダンな音像に着地したかったからそれをマイルールにして、ローの音の質感調整とか、ちょっとしたビートの足し引きとか、職人チックに細かい部分を引き上げた感じかな。

じん:汚く食い散らかした後を、すごく綺麗に芸術に昇華してくれて。晶太くんからアレンジ後の音源が出てきた時、俺とまらしぃくんちょっと冷静になったもんね。「迷惑かけちゃったな」って(笑)。

堀江:いやいや、でも面白かったですよ。僕は元々2人とも別々に仲良くさせてもらってて、尊敬もしてるんですけど、場所や形が変わると、また全然違うものが出てくるなって。今回こうして共作できて、クリエイターってのは底知れないもんだなと改めて思いましたね。

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