2010年代の3DCGブームと現代のメタバースの発展を結ぶのは“GPUの技術革新”だった
2010年代、エンターテインメント業界では空前の「3Dブーム」が起きていたのを覚えているだろうか? 2009年末に公開されたジェームズ・キャメロン監督の映画『アバター(Avatar)』はその先進的な3D表現と重厚なSFストーリーが支持されて大ヒットし、翌年の2010年には裸眼で立体視表現を楽しめる携帯型ゲーム機『ニンテンドー3DS』が発表された。
また、現在も行われている初音ミクのライブ『マジカルミライ』の前身となる初音ミクのソロコンサート『ミクの日感謝祭』が初めて行われたのも2010年である。当時、3Dの描画技術はゲーム業界を中心としてソフト・ハードの両面で日々進歩しており、その結実がさまざまな形で衆目に触れることとなったのだ。ここで活用されていたテクノロジーはその後、意外な形で発展し、現在ではメタバースや人工知能といった最新トレンドを支える基幹技術となっている。
2010年代、映画やゲームの世界では3DCG技術の活用が加速した。映画『アバター』は、その一端を担った作品として真っ先に思い出されるだろう。キャメロン監督は同作以前より映画制作においてCG技術を活用しており、1997年に公開された映画『タイタニック』では危険なスタントを回避するために落下する乗客をモーション・キャプチャーによって描画するというアプローチを取っている。
「アバター」ではさらに進化したCGと3Dの技術が最大限に活用されており、特に役者の表情をCGで再現する試みとして採用された「パフォーマンス・キャプチャー」という技術の成功により、存在しない生物たちのドラマが躍動感をもって表現されている。3D版・2D版で上映され、3D版はゴーグルを付けて鑑賞するスタイルで楽しまれた。
『アバター』に代表される3D表現は熱狂をもって迎えられたものの、現在のVRゴーグルにまで続く「ゴーグルが邪魔」という欠点は当時から指摘されていた。3D映画に使われているゴーグルは重量があり、2〜3時間の映画を鑑賞するには疲れてしまうという問題があった。当時、各社が相次いで出していた「3Dテレビ」も同様の問題を抱えていたからこそ、『ニンテンドー3DS』の発表は衝撃的だったのだ。
3DSの3D表現は裸眼立体視を用いて行われており、これは「右目と左目に角度や向きが異なる映像を見せる」ことで実現している。原理的には「寄り目で見ると立体に見えるステレオ写真」に近い。この独自のハードウェアにより、ニンテンドー3DSは3Dのゲーム体験に新たな価値を提供することになった。