卒業制作→銀幕へ 『ミルキー☆サブウェイ』のヒットから紐解く“沼らせる”SNS戦略

「めっちゃ面白いんだよね。3分くらいしかないから見て! すぐ見終わるから。ていうかいま一緒に1話だけ見よう」
何も知らない筆者に、昨年友達が猛プッシュしてきたのが、いま大ヒット中の3DCGアニメーション作品『ミルキー☆サブウェイ』だ。
2025年7月にTOKYO MXで放送され、同時に公式YouTubeチャンネルでも配信された本作。亀山洋平監督の卒業制作『ミルキー☆ハイウェイ』の続編となっており、2026年2月6日には『銀河特急ミルキー☆サブウェイ 劇場行き各駅停車』が劇場で公開された。本編は監督がほとんどひとりで制作したことでも注目を集めており、怒涛の勢いで銀幕デビューまで駆け上がった。
あらすじは、同じ時期に警察に捕まった面々が列車「ミルキーサブウェイ」に奉仕活動として清掃しにきたのだが、ひょんなことから列車の暴走に巻き込まれてしまう、というもの。暴走列車に翻弄されながらも、それぞれのバッググラウンドが所々で明かされていくのだが、コミカルな掛け合いとテンポの良さから、全体的にキャッチーでポップな仕上がりとなっている。
考察心をくすぐる絶妙なバランス
筆者が本作にハマった理由は大きく2つ。ひとつは「無料で何回も見ることができちゃう」ということだ。本編は全12話となっており、1話はたったの約3分半。そのすべてがYouTubeチャンネルで視聴することができる。いま思えば、こんなにハイクオリティな3DCGアニメーションを無料で放出するなんて大盤振る舞いすぎるとも思うのだが、だからこそファンは繰り返し本編を見てしまうし、筆者が実際に体験したように、友達にも勧めやすい。そして、いまや動画コンテンツは時間の奪い合いになっているため、3分半という尺は視聴者にとっても手に取りやすい。
そして、本編も繰り返し見てもらうような設計になっている気がする。本作は同時に複数人が喋り出す会話劇が多用されているのだが、正直一度聞いただけでは何を言っているのか完全に聞き取るのは難しい。そのため、YouTubeで巻き戻したり繰り返し再生することで、セリフを完全に理解することができる。いわゆる“スルメ作品”なのだ。キャラクターの会話を聞いているだけでも十分面白いので、舞台がもっと地味な現代の地球だったとしても、本作は人気になっただろうと思う。
ハマった理由の2つ目が、「考察心をくすぐる小出しの設定」だ。作中で、時代背景や設定についてはそこまで詳しく説明されていない。登場人物が自身の過去を語るシーンや、一瞬映った背景のカットなどから、この世界の価値観やルールのようなものを、視聴者は考察していく。
公式Xでは、本作の設定やキャラクターの裏話などの情報を少しずつ発信している。なかでも、2026年1月1日に発表されたマックスという少年についてのポストは、22万いいねと大反響。マックスはフェイスをフルで機械化している人物なのだが、その理由の闇の深さにファンは衝撃を受けた。
ミルキーシリーズの世界観設定を公開🪐
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マックス(地球年齢 18歳)『銀河特急 #ミルキーサブウェイ #各駅停車劇場行き』
2026年2月6日(金)公開❗️#映画ミルキーサブウェイ#MilkySubwayTheMovie#MilkySubway pic.twitter.com/jAcifB6xDg— 劇場版『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』【公式】 (@MGUJapan) January 1, 2026
設定情報が公開されるたびに、Xでは本作のFA(ファンアート)が飛び交うように。このファンに考察・妄想させる余白をあえて与えているところも、SNSでの広げ方がかなり上手いなと感じた。そして新たな情報を手にした視聴者は、その世界観を踏まえてもう一度本編を見直す……という無限ループに入るのだ。筆者はSNSを追いながら、作品を見る視聴者でありながらも、一緒に世界観を広げていく感覚も感じた。
使っているプラットフォームはYouTubeとXのみ。誰でも使えるものだからこそ、多大な広告費などをかけなくても作品のパワーと魅せ方次第で、ここまで大きな流行を作ることができるのだなと改めて驚いた。
46分の劇場版はどうだったのか
そして2026年2月6日に映画が公開。内容はYouTubeで公開されている本編に新シーンをくわえたものとなっている。それだけ聞くと「同じものをもう一度見るようなものか」と思いそうだが、実際に鑑賞してきたところ、個人的にはかなり満足度が高かった。
筆者は日曜の夜に本作を見に行った。セリフのスピードも早く、3DCGアニメというのもあって、視聴世代は若いのかなと予想していたのだが、思っていたより来場者は性別年代問わず幅広かった。もしかしたら主題歌がキャンディーズであったり、作中に出てくる小物が昭和っぽかったりなど、SFでありながらもレトロな部分があったため、幅広い世代に刺さったのかもしれない。
内容は映画化するにあたって多少再編集した部分はあったものの、たしかにファンならよく知る本編をいま一度スクリーンで見る構成ではあった。ただ、PCやスマホの画面で細切れに見るのに比べて、やはり“音”の情報量が圧倒的に多く、会話の裏で流れている機械音まで鮮明に聞き取れた。シンプルに画面も大きいので、これまで気づかなかった小物の質感も感じられることができ、没入感がある。
追加された新シーンは、主に主要キャラクターを管轄する警察官サイドのストーリーが中心となっていたのだが、この新シーンも個人的にはかなり感動した。詳しくは劇場で確認してほしいが、ゆるくわちゃわちゃしている作風だからこそ、芯を食うセリフを放たれると思いの外、心に響いてしまう。
そして最後に驚いたのが、グッズの人気ぶりだ。上映前に見に行こうと思ったのだが、グッズ売り場に人が集まりすぎて断念。鑑賞後にようやく売り場まで辿り着くことができた。キャラクターのビジュアルが魅力的だったり、種類が豊富であることが人気の要因ではあると思うのだが、ただ作品を見て終わるのではなくて、キャラクターたちをそばに置いておきたくなる気持ちは少しわかる。
というのも、本作の舞台設定や世界観は現実とはかけ離れたものなのだが、キャラクターの立ち振る舞いやセリフはかなり現実に近い。体は近未来的なサイボーグだけど、仕草や佇まいは妙に人間らしく、それぞれの日頃の生活が透けて見えるようだ。キャラクターたちが同じ世界線に実在するかのような親近感も、推したくなる心理を突いている。
いちファンとしては続編を見たいと感じているし、実際にまだまだ本作は話を膨らませられる要素を多分に含んでいる。だが、亀山洋平氏が今度どんな別作品を生み出すのかも興味を惹かれる。新しいヒットのルートを開拓した1年だったが、今後どんなあたらしい世界を見せてくれるのか、楽しみにしたい。
■公開情報
『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』
公開中
キャスト:寺澤百花(チハル役)、永瀬アンナ(マキナ役)、小松未可子(リョーコ役)、金元寿子(アカネ役)、小市眞琴(カナタ役)、内山昂輝(カート役)、山谷祥生(マックス役)、藤原由林(O.T.A.M.役)、小野賢章(アサミ役)、ロバート・ウォーターマン(ハガ役)
原作・監督・脚本・キャラクターデザイン・音響監督・制作:亀山陽平
企画制作:シンエイ動画
製作:タイタン工業
主題歌:キャンディーズ「銀河系まで飛んで行け!」
挿入歌:水無瀬ミナミ(CV.田村ゆかり)「ときめき★メテオストライク」
プロモーション楽曲:MindaRyn「Altair and Vega」
配給:バンダイナムコフィルムワークス
©亀山陽平/タイタン工業
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