TwitterからBlueskyへ、GoogleからOpenAIへ……テクノロジートレンドの変化は起きるか? キーワードは「分散化とAIと広告」
ChatGPTは"検索"を終わらせるのか
ところで、OpenAIが投じた『ChatGPT』という一石により、テクノロジー業界という湖に大きな波紋が生じている。ChatGPTは大量のテキストデータを使ってトレーニングされた大規模言語モデル(LLM)であり、その驚異的な性能から世界中で活用が論じられている。今年4月にはOpenAIのサム・アルトマンCEOが来日し、自民党のAIプロジェクトチームと意見交換を行った。
ChatGPTやそのAPIは現在も活発にアップデートがなされており、Microsoftが自社のポータルサイトサービス『Bing』にOpenAI開発の「GPT-4」を採用するなど、多様なサービスが生まれている。また、ChatGPTに続く形でさまざまなLLMが開発・公開されている。LLMの発展と活用は今テクノロジー業界で一番ホットなトピックスと言えるだろう。
こうしたChatBotが普及すれば、いずれ「文字検索」という仕組みは古くなっていくだろう。ユーザーに最適化されたAIが最適な提案をしてくれるようになり、いずれは「求める前に求めているものを教えてくれる」ということも可能になるはずだ。そして、これは便利で、おそらくは「気持ちいい」体験だと思われる。つまり、ユーザーは「追跡されたくはないけれど、自身の求める情報を先回りして提案してもらったりすることはうれしい」し、AIはこういうことが得意だ。
この状況に危機感を感じているのが、Googleである。提供する文字検索モデルが「古いスタイル」になろうとしている状況のなか、GoogleはChatGPTの公開と普及に引きずられるような形で今年3月、人工知能を用いた検索サービス「Google Bard」のベータ版を公開。今月10日には内部のエンジンをさらに高性能な自社開発LLM(PaLM2)に変更し、日本語にも対応した。
ユーザーが気にかけておくべき「検索」と「広告」のゆくえ
前述の通り、いずれは検索という行為がAIに代替され、ユーザーはもっと簡単に求める情報にアクセスできるようになるはずだ。仮にこの仕組みと「広告」が結びつくと、非常にパワフルなターゲッティングが可能になるだろう。そうした状況では、もはや企業はCookieの収集すらすることなく、AIをとおした対話によってユーザーの興味や購買傾向を直接取得できる。しかもこうした体験には前述の「気持ち悪さ」もなく、すんなりと広告を見せられるようなモデルが生まれる可能性が高い。
Open AIはChatGPTによってLLM業界におけるシェアをほぼ独占した。OpenAIは企業の姿勢として「AIの民主化」をうたっているが、巨大企業がシェアを独占する様子自体は既存の中央集権的アプローチと変わらず、こうした流れに追従する他企業の動きもパワフルだ。AIを巡る状況はこれからも日々変化し続けるだろう。
テクノロジー業界のトレンドや個人情報に対するユーザーの意識は変化しており、こうした状況を巡って議論も盛んに行われている。「チャットボット広告」がもし実際に稼働するならば、各国の規制などとも合わせて議論されることになるだろう。“ユーザーデータの脱中央集権化”というトレンドと、その真逆に位置するLLM企業の動き。これらの動向を注意深く観察しながら、テクノロジーとの付き合い方を考えたい。