任天堂の減収減益はいつまで続く? 発言内容、業界動向から、次世代機の機能・発売時期を考える。

任天堂「次世代機」最新動向は?

 任天堂は5月9日、2023年3月期の連結決算を発表した。

 本稿では、同社の連結決算や、発表の場における発言内容、ゲーム業界におけるそのほかのハードをめぐる動向などから、次世代機が持ち合わせる機能と発売時期を考える。まだ情報は明らかとなっていないが、その時期は意外と遠くないのかもしれない。

2期連続で減収減益となった任天堂。打開策として期待される次世代機はいつ発売に?

 同発表によると、任天堂の2023年3月期の売上高は、前年同期比で5.5%減の1兆6,016億円、最終利益は9.4%減の4,327億円だった。ソフト販売では11月、「ポケットモンスター」シリーズの最新ナンバリング『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』が発売となり、2,210万本の大ヒットとなったが、主力の家庭用ゲーム機であるNintendo Switchの販売が伸び悩み、減収減益となった形だ。

 2017年3月にローンチとなったNintendo Switchはこれまで、日本で2,959万台、世界全体で1億2,562万台を売り上げている。数字を見るかぎり、市場にはすでに流通しきっており、新たな販売は家庭内での使用者の違いや、個人の用途の違い、故障などによるものが中心と見られる。実際に各年における販売台数は2021年3月期まで、1,505万台(2018年)、1,695万台(2019年)、2,103万台(2020年)、2,883万台(2021年)と右肩上がりに増加してきたが、その後は一転、減少が続いている。

 オンラインで記者会見に応じた代表取締役社長・古川俊太郎氏によると、「これまでと同じようなペースで(Nintendo Switchの売上を)伸ばしていくのは難しい」とのこと。同時に発表した2024年3月期の業績見通しでは、売上高が2023年同期比で9.5%減の1兆4,500億円、最終利益が21.4%減の3,400億円と、3期連続での減収減益を見込んでいる。

〈参考:https://www.nintendo.co.jp/ir/finance/hard_soft/index.html

 Nintendo Switchをめぐってはこれまで幾度となく、アップグレード版とされる「Nintendo Switch Pro」「Nintendo Switch 2」の開発・発売が噂されてきた。特に競合であるソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)、Microsoftの2社から、PlayStation 5・Xbox Series X/Sがリリースとなってからは、ローンチからの時間経過や、両者のスペック差などを理由に、さらにそうした推測の数が増してきた背景がある。

 当事者である任天堂はNintendo Switchの発売以降、「新型Nintendo Switch」「Nintendo Switch Lite」「Nintendo Switch(有機ELモデル)」と、同機のマイナーチェンジを繰り返してきたが、次世代機の噂の真偽については一切を否定。実際にそれらのなかで示されてきたハードが、“Xデー”とされる時期に発売されることはなかった。同社・古川俊太郎氏は今回の発表にともなっておこなわれた投資家向けプレゼンテーションのなかで、早くても2024年4月までは新ハードの発売の予定がないことを明かしている。

Nintendo Switch(有機ELモデル) 初公開映像

再興する携帯ゲーム機市場。SIEは「Project Q」で覇権を狙う

 一方、競合たちのあいだでは昨今、携帯ゲーム機に熱視線が注がれているようだ。記憶に新しいのは、PC向けのソフトダウンロードプラットフォーム・Steamを提供するValve Corporationが2022年2月(日本国内では同年12月)にリリースした「Steam Deck」だろう。同ハードは、これまで据え置きでしか味わえなかったPCにおけるゲーム体験を、携帯型の高性能端末で実現するもの。ストレージ容量など、仕様の異なる3モデルがラインアップされており、価格は64GBが399ドル(日本円で税込み59,800円)、256GBが529ドル(同79,800円)、512GBが649ドル(同99,800円)となっている。携帯ゲーム機としては決して手の出しやすい価格帯ではないが、PCにおけるゲームプレイの一般化、ゲーミングPCとの価格差などから、日本国内でも争奪戦が展開された。

「Steam Deck」

 そうした需要を反映してか、PC向けの携帯ゲーム機市場には、サードパーティも参入し始めている。PC・PCパーツなどを製造する台湾のメーカー・ASUSは2023年4月1日、携帯型のゲーミング機「ROG Ally」を発表。5月には、6月13日よりアメリカで発売することを明らかにした。プレスリリースによると、搭載プロセッサの異なる2つのモデルがあり、価格は下位モデルが599ドル、上位モデルが699ドルになるという。両モデルとも数値上はSteam Deckの最上位を上回る性能を備えているが、価格は同等またはそれ以下となっている。5月29日には、日本国内での発売日・価格が日本法人のASUS JAPANより発表される予定。現時点では、6月前半に予約開始となることが明らかとなっている。

「ROG Ally」

 また、2023年5月25日には、SIEが新型の携帯ゲーム機「Project Q」を発表した。同機はSteam Deckのように単体で機能するものではなく、PlayStation 5と連携することでリモートプレイが可能な端末だ。8インチのHDディスプレイに既存のコントローラー・DualSenseの操作部分が両端に接続した構造を持っている。同入力機器に搭載されている機能をすべて網羅している点が特長で、Wi-Fiを用いたストリーミングでのゲームプレイに対応する。

「Project Q」

 同社発の携帯ゲーム機といえば、PlayStation Vitaでの失敗を想起する人も多いはず。その背景のひとつには、スマートフォンのゲームハード化、モバイルゲーム市場の台頭があったが、昨今では成長も少しずつ頭打ちとなりつつある。取り巻く状況の変化などもあり、SIEはふたたび同市場に参入するに至ったのだろう。発売時期は2023年末を予定している。

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