REJECTはなぜ格闘ゲームシーンに参入するのか YamatoN×こく兄に訊く可能性と課題【前編】

格闘ゲームと煽り文化

ーーこく兄さんは最初REJECTから話を受けたときはどうでしたか?

こく兄:最初は悪ふざけかと思いましたよ。『The Gaming Days』という番組で共演したときに、YamatoNさんから軽くお話をいただいたんですけど、「どうせ嘘だろ、こんなうまい話が来るわけないよ」と思っていました。半信半疑で「やりたいんだったら、縁もあるしもちろんお手伝いさせてもらいますよ」という形で入ってみたんですけど、そうしたらちゃんとした会社で、人材もたくさんいて、REJECTの本気度が伝わってきたんです。じゃあ自分も気合いを入れてやらないとなと思いました。

ーーこく兄さんは、おじさんプレイヤーたちがガチで戦う「おじリーグ」をはじめ、競技シーンの外から格闘ゲームを盛り上げる取り組みを続けています。そのなかで、今回のREJECT加入は新しい展開ですね。

こく兄:そうですね。僕も活動しているなかで、ずっと前から「格闘ゲーム(SFシリーズ)のパイは取り尽くしたな」という感覚があったんです。だからこれ以上広げるなら、絶対に外からの参入を取らなきゃいけないと思っていたし、格闘ゲームやゲーマーの面白い部分をもっと多くの人に届けるためにも、FPSに手を出したりしていたんです。ちょうどそのタイミングでYamatoNさんからお話をいただいたので、僕としてはむしろ協力させてくださいという気持ちでした。

こく兄

ーーこく兄さんは加藤純一さんとの長年の交友関係だけでなく、『VALORANT』を通してFPSの大手ストリーマーとの交流も活発化している印象です。

こく兄:そうですね。おかげさまで最近は「ウメハラ(梅原大吾)と加藤純一とSHAKAの友達」と名乗っています(笑)。『EVO Japan 2023』をきっかけにSHAKAと関(優太)さんが『ストリートファイターV』を触ってくれるようになったこともあって、格闘ゲームが盛り上がりつつあるという空気は作られてきているように感じます。

ーー肌感として、昨年から格ゲーコミュニティの広がりの兆しのようなものを感じていましたか?

こく兄:正直、まったくなかったですよ。ただ加藤純一と対決しようということで、『VALORANT』を始めたらすごく面白くて。そこにウメハラ、マゴ、オオヌキ(大貫晋也)など影響力のある人たちが加わってくれたことで格ゲー界隈が集結したような雰囲気が出たんです。そこに加藤純一が視聴者を大量に引き連れてきてくれたことで、「こいつら面白いじゃん」って見てくれるようになったんですかね。

ーーさて、格闘ゲームコミュニティの面白さのひとつに「煽り」という文化があると思います。コミュニティ内では当たり前に共有されていることですが、外に広げていく上でこの感覚を共有していくことはひとつハードルだったのかなと思います。

こく兄:そうなんですよ。僕は煽りがダメな行為だと全然知らなくて。同じ年代・同じ力の人たちが戦いあったら普通憎まれ口を叩き合うじゃないですか。それが普通だと思ってたら、FPSの人たちは一切言わないらしいですね。

YamatoN:言わないですね。スポンサーがついてプロシーンがちゃんと形成され出した段階から、 スポーツマンシップに乗っ取る文化が、FPSでは育まれてきた気がします。

こく兄:僕もこの前、SHAKAと一緒に『EVO Japan』に出たときに、「適当なこと言っても大丈夫、みんな許される世界」みたいな感じでいたんですけど、FPSはダメらしいんで、そこに関しては僕もちょっと出鼻をくじかれてますね(笑)。

ーー一方で、「おじリーグ」を見ていると、芸能界からの参戦となったゴールデンボンバー・歌広場淳さんのファンの方々もかなりハードな煽り合いを楽しんでいたので、文脈さえ間違えずに届けられれば、別の文化圏の人にもきちんと面白さを伝えることができると感じました。

こく兄:たしかに歌さんの出演が決まったときに、「ファンにおじさんたちの罵り合いを聞かせるの、大丈夫?」とみんな心配していたんですよ(笑)。ただ結果的に歌ガールのみなさんも楽しんで見てくれていましたね。

YamatoN:それって実はすごく難易度が高いことで、嫌味なく成立できるのが格闘ゲーマーのタレント性なんですよ。FPSのプレイヤーはまだ成熟しきれていないので、そういう“プロレス”を楽しく表現できるのはごく少数。なかには本気で嫌味を言ってるように見えてしまう場合もあるので、本人同士は楽しくても、視聴者サイドにはそれが伝わっていないケースも多いんです。タレント力、表現力の差なのかな。

こく兄:格闘ゲーマーは単純な罵詈雑言を使いませんからね。相手が恥ずかしがるような言葉をなんとか捻ってぶつける(笑)。その辺りはプロレスを積み重ねてきた歴史が生んだものかもしれませんね。格闘ゲームを広げていく上で、もしそういう楽しさが伝わらず炎上しそうになったら、そのときはもう僕が全面に受けます。(『SLAM DUNK』の)魚住の4ファールじゃないですけど、僕が最前線に立って、どこからNGなのか見極めながらガンガンいきます。

YamatoN:エンタメとして、戦い合う、煽り合う行為は必要だと思っています。プロレスもそうですけど、「それをいかに許容されやすい世界を作れるか」というのが、おそらく今後の課題になってきますね。格闘ゲームを経て、FPSにおいてもそういったエンタメ色の強い文化が、根付くといいなと考えてます。

こく兄

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