「(視聴者の)好きなことで生きていく」クリエイター育成校講師が語る イメージと異なるYouTuber志望の学生像
メディアで取り上げられることも増え、身近な存在となったYouTuber。誰でも気軽に動画をアップできる時代になったが、実際に専業YouTuberの知人を持つ人は多くないだろう。
2021年4月、YouTuberなど次世代クリエイターを育成する日本初の学校「バンタンクリエイターアカデミー」が開校。本格的にYouTuberを目指す環境に身を置く生徒たちは果たして、どんな動機や目的を持ってYouTube活動を始めているのだろうか。
今回は、サブカル解説グループYouTuber「おませちゃんブラザーズ」のメンバーであり、同校で講師を務める「わるい本田」さんに、現場で見たYouTuberを目指す人の特徴や動機などについて詳しく話を聞いた。
自身は理想のライフスタイルから逆算してYouTuberになった
――まずは本田さん自身がYouTuberになったきっかけを教えてください。
わるい本田(以下、本田):僕自身、仕事を決めることになったとき、笑っていられる場所にいきたいと思ったんです。それで友達に紹介してもらって、ラジオの制作会社に入りました。最初の5年くらいはADをやって、最後の1年は放送作家になったんですが、これがめちゃめちゃきつくて……。
――動画でも「向いてない」とおっしゃっていましたね。
本田:人が必要なものを先回りして置いておくみたいなのが苦手で、毎日怒鳴られていましたね。いま思えば、当時はかなり病んでいました。好きだった音楽や映画に触れる気力も失せてしまって……。だから、現状を打開するために、“どんな生活を送りたいか”という理想の予定表を作ったんです。月曜日は14時くらいに起きて、4時間しか仕事したくないみたいな(笑)。それで「友人としか働きたくない」と書いたときに、YouTubeを頑張っていれば、いつかこういう生活ができるんじゃないかと思ったんですよね。
――たしかに、作った動画が働いてくれるようなところがYouTubeにはありますしね。
本田:そうなんです。寝ている間も動画の中の自分が働いてくれると思いました。なので、理想のライフスタイルから逆算して、YouTuberになることを決めたという感じですね。
YouTubeを目指す人はとにかく「こだわりが強い」
――バンタンクリエイターアカデミーでは、YouTuberを目指している生徒と動画編集者を目指している生徒の割合はどのくらいなんでしょうか?
本田:YouTuberになりたい子をクリエイター志望と呼んでいるんですが、クリエイター志望の子は1クラスあたり2〜3割程度ですね。
――意外と少ないんですね。クリエイター志望の方の特徴があれば、お聞きしたいです。
本田:クリエイター志望の子は、目立ちたがりであったり、こだわりが強かったりする子が多いですね。2年生になるとコースが分かれるんですが、クリエイター志望の子が集まるコースは傍目から見ると、変わった子が多い気がします。
――変わった子というのはどういった意味でしょうか?
本田:落ち着きがなかったり、見た目が奇抜だったりとさまざまですね。例えば、4月の一番最初の授業のときに、後ろでカメラを立てて配信してる子がいたんです。圧をかけている感じというか、「俺はもうこんなに配信してるんだぞ」というのを周りに見せていた……現代風のマウントかなと思うんですけど。
――新しい形のカマし方ですね。(笑)
本田:「未来っぽいな〜」と驚きました。あとはマイペースかつ、かなり質問してきますね。モチベーションが高いんだと思います。偏見かもしれないですが、YouTuberになりたい子は結構積極的に行動するんじゃないかなと。あとは良いところを挙げると、こだわりが強い。
――こだわりが強い人ってどんな感じでしょうか?
本田:例としてあげるなら、「NSCと間違えて入りました」と言っていた尖った子がいましたね。お笑い芸人になりたいけどNSCに入るのもつまんない、みたいな。宿題でも一矢報いてやろうみたいな精神が垣間見える。ちょっと変わったものを作ってくるんですよ。
動画編集の授業で「丁寧に作ろう」というテーマで課題を出した時です。画像の切り抜きは授業的に綺麗に切り抜かないといけないんですが、その子はMADみたいな感じの質の粗いものを提出してきましたね。笑わせてやろうみたいな気持ちをすごく感じました。ネットとかでも、雑に切り抜いているのが面白いみたいな風潮もあるじゃないですか?
――“雑コラ”みたいな感じですかね?
本田:そうです。そういうのを狙ったのかもしれないなと。Photoshopで髪の毛まで綺麗に切り抜く授業で雑コラを出してくる尖りであり、こだわり。傍目から見たら、面白いんですよね。