言葉の誤用を辞書が煽る? 話題沸騰の『三省堂辞書スタンプ』制作陣が語る“振り切ったデザイン”に辿り着いた理由

『三省堂辞書スタンプ』制作陣が語るデザイン

 辞書でお馴染みの株式会社三省堂が2月1日にリリースした『三省堂辞書スタンプ』が、大きな注目を集めている。同社が出版している『新明解国語辞典第八版』と『三省堂国語辞典第八版』から40語をピックアップしており、辞書のような見出し語と語釈(説明文)がセットになった斬新なデザインだ。

 また、収録されている単語は「ありがとう」「むり」といった頻繁に使用するものから、「主語が大きい」「実社会」といったどこで使えば良いのか悩ましいものもある。さらには語釈も面白い。たとえば、「動物園」は「捕らえられて来た動物を、人工的環境と規則的な給餌とにより野生から遊離し、動く標本として一般に見せる、啓蒙を兼ねた娯楽施設。」とイメージと異なる内容である。

 斬新なデザインかつシュールな内容を楽しむ人は多く、2月中旬時点でダウンロード数は約5.1万回を超えているという。話題沸騰のLINEスタンプの制作に携わった同社の関浩治氏、保科潤氏、関口圭吾氏に話を聞いた。

検討の末に“LINEスタンプっぽさ”は捨てたデザインに

――まずスタンプをリリースした背景について教えてください。

関:学生時代に辞書は買ったものの、そのまま家に置きっぱなしになっているケースは珍しくありません。ただ、辞書を改めて読むと面白いことが書かれていたり、意外な発見に出会えたりなど、とても魅力的な内容になっています。ですので、辞書に親しんでもらう、もう一度開いてもらうきっかけになればという思いで企画を進めました。

――今回のタイミングでのリリースになった狙いはありましたか?

関:戦時中に刊行された『明解国語辞典』という辞書があるのですが、こちらが2023年で刊行80周年を迎えます。『明解国語辞典』の刊行以降は現在刊行されている『新明解国語辞典第 八版』や『三省堂国語辞典第 八版』などに徐々に枝分かれするようになったのですが、その源流には『明解国語辞典』があります。

 弊社を代表する辞書の礎となった辞書ですので、その節目をお祝いするためのキャンペーンを以前から検討していました。そんな折、以前から企画のあったLINEスタンプを、せっかくなので『明解国語辞典』をお祝いするタイミングと合わせてリリースすることになりました。

――秀逸なデザインでしたが、デザインはどのようにして決めたのですか?

左から保科潤、関浩治、関口圭吾

保科:制作に取り掛かった当初は、辞書をモチーフにしたポップなキャラクターに吹き出しをつけて、単語と語釈を載せる、というデザインを検討していました。また、「辞書っぽさを表現するためにはどうすれば良いのか?」ということを話し合った際には、「本が開いて中からテキストが出てくる」という動きのあるものも候補に挙がりましたが、予算の都合上断念せざるを得ず……(笑)。

――いろいろな検討がなされたのですね。

保科:はい。参考のためにいろいろなスタンプを見ていく中で、LINEスタンプは意外と自由度が高いことを知りました。たとえば、グループラインを退出した時に「〇〇が退出しました」と表示されますが、それをパロディにしたもの。「ありがとうございます」「ごめんなさい」という普通のメッセージの上にマッチョな人の画像が被さって見えにくくなっているものなど。どこか“LINEスタンプっぽさ”に縛られていて、可愛らしさばかりを意識していましたが、「振り切ったデザインでも良いんだ」と思えました。

――とはいえ、多少揉めたりなどはあったのでは?

保科:揉めた、ということはありません。ただ、「説明文の文字が小さくなるため、年配の方は若干読みにくいのでは?」ということは危惧していました。また、LINEスタンプって基本的に横書きですけど、辞書に書かれている文字って縦書きなんですよね。最終的に辞書らしさはフォントで補うということにして、横書きのスタイルで進めました。

 とはいえ、語釈を削る際には「編集部がなんというか……。」という点には気を遣いましたね。こだわり過ぎてしまい、リリースできなくなるのが1番の心配でした。そこは営業の社内調整能力で、なんとかリリースまで漕ぎ着けましたね(笑)。

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