作曲をこれから始める人にすすめたい『Soundmain Studio』 ブラウザで利用可能なDAWで実際に曲を作ってみた

作曲をこれから始める人にすすめたい『Soundmain Studio』

 近い将来、DAWをライトに使うならウェブブラウザ上で動かすのが当たり前になるかもしれない。その先駆的な存在が「Soundmain Studio」。ソニー・ミュージックエンタテインメントが展開するプロジェクト「Soundmain」内の音楽制作サービスで、アプリなどのインストールなしにDAWを利用できることで注目されている。

 一般的な作曲ソフトとして使うことはもちろん、ソングライティング未経験でもAI技術を活かした各種機能によって気軽に利用できるのも特徴。「Soundmain」の月額はBasicプランが税込550円(取得・500ポイント)、Standardプランが税込1980円(取得・1800ポイント)と安価で、このポイントを使って「Soundmain Studio」の各種機能の使用、音源素材販売サービス「Soundmain Store」での音源素材の購入が可能だ。

 今回は本サービスでどんなことができるのか、筆者が実際に楽曲を作りながら、具体的にレビューしていこう。

 まず、筆者が「Soundmain Studio」を実際に用いて作った楽曲「atp」を聴いてほしい。

Lyrics

【ヴァース1・知声】
気楽にやりたいから
歌ってみた
どうせやるのならば
はずかしがってちゃダメさ
初めから楽しまないと損じゃん

ここどうなってるの?
さっぱりわかんない
やっぱりわかんない
ジャーニー、これはジャーニー

【フック(サビ)】
頭に浮かぶメロディを捕まえろ
浮かばぬなら救助して
音符と音符とでなぞる星座が旋律線
知らなかったな

【ヴァース2・小池】
書いては消すエンドーレス
繰り返し編む言葉
終わりはない 永遠
溶ける時間
まじでデイ&ナイト

刹那砂こぼすよな
非効率的クリエイト
タイトなリズムねじ込む
AIと愛を

【フック(サビ)】

 「atp」というタイトルは「Anti Time Perfomance」の略である。テーマは「作曲」。どんなに制作が手軽になっても作曲という行為に付随する「ああでもない、こうでもない」という試行錯誤はタイムパフォーマンスが悪いが、それこそが良いという想いを込めた。本楽曲を例にして以下に「Soundmain Studio」の機能を紹介していく。

「Soundmain store」

 まずはビート。今回は「Soundmain Store」にある素材「SoundPack」の豊富なカタログのひとつ「Indie Chill 2」のなかにあるものを中心に構成。各サンプルは権利処理済で気軽に公開できる。「Soundmain Studio」の編集画面はシンプルな構成で音源をドロップしながらプラモデル式に組み合わせていった。BPMとキーが違う素材もアジャスト可能だ。さらに自分で演奏したデータやSpliceなどで入手した音源もミックスできるので、使い方はほかのDAW機材とそこまで変わらない。

 「Indie Chill 2」のドラムはオーガニック系から、打ち込み調のものまでが並ぶが、「atp」では前者を採用。キーボードとベースのコード進行はどれも<Ⅱm→Ⅲm→Gm7→Ⅲm7>の、ほぼ「Just a two of us進行」または「丸サ進行」なので、どんなメロディでも合いやすい。あとは好みの音色を吟味するだけ。なお使用素材のキー設定がCm(E♭)になっていたが、正確にいえばGm(B♭)だと思われる。これが判別できないとメロディを考える時に苦労するので注意すべきだろう。といってもBGM楽曲を作る分なら、ここまでの工程で完了である。

 続いてメロディを乗せる時に役立つのが歌声合成システム。「Soundmain Studio」に実装されているのは「VoiSona」のシンガー・知声(ちせい/Chis-A)で、最新のAI技術によるリアルな歌唱を聴かせてくれる。メロディをステップ入力し、ひらがなで歌詞を当てていった。16部音符を中心にしたラップと歌の境目的な音使いでも本物の人間のようで驚き。

「知声」

 さらにAIボーカルとコントラストを付けるため、2ヴァース目は人間の声を入れることにした。僭越ながら私の声である。こだわろうと思えば高価なレコーディング用のマイクを使うが、「Soundmain Studio」の「音源分離」または「ボーカル抽出」を使うと、携帯のボイスメモでも高音質のサウンドに早変わり。実際の使用データは道路沿いで録ったものだが、もっとわかりやすく渋谷のスクランブル交差点でスマホ録音した歌を音源分離してみた音も聴いてみてほしい。

「ボーカル抽出」

 さすがに音空間が猥雑すぎて完全ではないが、しっかりボーカルだけが抜き出されている。これがディープラーニングを使った音源分離技術の実力。今回は歌を抽出しただけだが、ひとつの音源をボーカル、ベース、ドラム、その他に分割することも可能で、音声のノイズ除去や耳コピ、リミックスなど様々な場面で役立つことは間違いないだろう。

 あとはオートチューン機能があれば気軽に歌を入れることもできるので、個人的には実装されることに期待したい。なお私の歌は本サービスのAI歌唱で3連符のグリッドが使用できなかったこともあり、3連符を多用することで“人間らしさ”を演出している。

 最後に紹介するのが「AI作曲アシスト機能」だ。こちらは「StylePalette」と呼ばれるスタイル毎に分類されたベーストラック上に自動生成されたメロディをwav化して、そのままタイムラインに乗せることが可能。使い方は「StylePalette」を選択してコードやキーを指定、Harmony(和声との折り合い)、Duration(音の長さ)、Complex(複雑さ)を選択して、Composeをクリックするだけ。あとはガチャ感覚で気に入るメロディが出るまで、それを繰り返す。少しじゃじゃ馬っぽいラインだったり、時々スケール外の音が出てきたりもするが、自分で編集もできるので調整しながら使うといいだろう。

 「atp」では、アウトロ部分で生成したメロディにエフェクトをかけたものを直接使ったが、MIDI保存して「Garage Band」などで音色を編集すれば、もっと質感のよいものにできるはずだ。それをビートの上に載せるだけで旋律やスパイスとして機能する。

 以上が「Soundmain Studio」を実際に使った楽曲の制作ダイジェストである。扱ってみて思ったのは、YouTuberの動画やポッドキャストのBGM、デモ音源の制作やアイデア探し、本格的なDAW導入前に作曲を楽しむツールとして、存分に活用できそうなことだ。

 贅沢をいえば、エフェクトの数がもう少し増えてくれたり、パンなどの機能もあれば、より使いやすくなりそうだ。しかし、これだけの機能がブラウザで扱えるのだから相当に画期的と言えるだろう。

 そして「Soundmain」では、現在「春の作曲チャレンジキャンペーン」が開催中。3月31日までTrialプラン(無料)で「Soundmain Studio」が使用可能、また5月31日にかけてはBasicプラン(税込550円)でボーカル抽出と音源分離を利用できる。

 「SoundPack」を用いてプラモデル式に音楽を作ったり、AI技術を使って私が今回制作した「atp」のような曲はもちろん、ほかのジャンルの音楽を特別な準備なしで始められる本機会をお見逃しなく。

 たとえAIを用いたとしても、音の組み合わせを吟味したり、メロディを考えたり、ブレイクを入れたりと試行錯誤するのは「創造」の範疇だと個人的には思う。それに多くの人が触れるきっかけとして「Soundmain Studio」は最適かもしれない。

■関連リンク
Soundmain公式WEBサイト
Soundmain 春の作曲チャレンジキャンペーン キャンペーンサイト

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