初代『メイド イン ワリオ』の独特なテイストから思い返す、“シュール味”を突き詰めようとしていた当時の「ワリオ」シリーズ

『メイド イン ワリオ』独特のテイスト

 1992年発売の『スーパーマリオランド2 6つの金貨』で悪役としてデビューし、続編『スーパーマリオランド3 ワリオランド』にて主人公の座をマリオから奪い取り、自らのシリーズを旗揚げした「ワリオ」。

 そんなワリオの主演作で、ひときわ異彩を放つ新作として現れたのが『メイド イン ワリオ』である。“瞬間アクションゲーム”と称された本作は、5秒で終わる200種類もの「プチゲーム」を攻略していくという、一風変わったゲームシステムを特徴としていた。

 このシステムは『NINTENDO64(ニンテンドウ64)』の周辺機器『64DD』向けのゲームソフト『マリオアーティスト ポリゴンスタジオ』に収録されたミニゲーム「サウンドボンバー」を基にしており、それを独立・発展させたものとして『メイド イン ワリオ』は誕生した。

 『メイド イン ワリオ』は取っつきやすさと操作の手軽さ、そして全編に漂う“くだらなさ”から好評を博すと、後に続編も発売され、シリーズ化に至った。2023年現在も同シリーズは現役であり、2021年にNintendo Switch向けの完全新作『おすそわける メイド イン ワリオ』が発売されたのが記憶に新しいところだ。

 そんな初代『メイド イン ワリオ』は2023年2月9日から、「Nintendo Switch Online + 追加パック」購入者限定のダウンロードソフト『ゲームボーイアドバンス Nintendo Switch Online』でも遊べるようになった。

ゲームボーイ & ゲームボーイアドバンス Nintendo Switch Online [Nintendo Direct 2023.2.9]

 追加パックを購入済みの筆者は『ゲームボーイアドバンス Nintendo Switch Online』をすぐにダウンロードし、久しぶりに本編すべてをエンディングまで遊びきった。初代『メイド イン ワリオ』をガッツリ遊んだのは、オリジナルのゲームボーイアドバンス版が発売された当時以来のことだったのだが、改めてプレイして気づかされたことがあった。

 「初代って、シュール味が強いな……」というものである。

『コロコロコミック』のテイストが強化されていった『メイド イン ワリオ』

 初代『メイド イン ワリオ』が発売されたのは2003年3月21日だ。

 それから半年以上が経った10月17日、『あつまれ!! メイド イン ワリオ』なるニンテンドーゲームキューブ向けの新作が早くも発売されたところから、『メイド イン ワリオ』のシリーズ展開は始まった。

 その後、発売された新作としては『まわるメイド イン ワリオ』(2004年、ゲームボーイアドバンス)、『さわるメイド イン ワリオ』(2004年、ニンテンドーDS)、『おどる メイド イン ワリオ』(2006年、Wii)がある。この後にもさらなる新作が相次いで発売されているのだが、本稿の趣旨からは話が逸れるため、それらは割愛させていただく。

 『メイド イン ワリオ』は、シリーズ展開の始まりと同時に”ある部分”が大きく変わった。それはキャラクター、世界観のテイストである。

 特に2004年発売の『まわるメイド イン ワリオ』、『さわるメイド イン ワリオ』の2作では、その変化が顕著に表れている。全体的に漫画っぽさ、小学館の月刊漫画誌『コロコロコミック』に連載された作品を意識したテイストが強化されたのだ。

 具体的には各ステージ開始前のイベントデモでコミカルなやり取りが展開されたり、個々の登場キャラクターたちの特徴がクローズアップされるといった感じだ。初代の時点でもそのような要素は見られたが、続編からはより“漫画っぽさ”を強化している。

 ゲームデザイン周りにおいても、英単語の使用を抑えたり、視覚的に分かりやすい表現を採り入れるなど、低年齢層が遊ぶのを踏まえた改良を実施。若干、アメコミっぽさがあった登場キャラクターのデザインも、少し日本の漫画に寄せたものに改められている。

 元々、初代の時点でワリオ以外にも個性的なキャラクターたちが多数登場するのが作品の売りでもあった。続編ではその魅力をより強化する方向にシフトしていった形だ。シリーズとして展開を続けていくとなれば、理にかなった工夫といえる。

 実際、強化によって本シリーズに登場するキャラクターの人気は大幅に高まる結果に繋がっている。『さわるメイド イン ワリオ』で初登場し、人気を博した魔女っ娘「アシュリー」は、そうした方向性の強化が最もいい形で作用したキャラクターだろう。

画面は『おすそわける メイド イン ワリオ』のもの

 この傾向は2018年にニンテンドー3DSで発売された『メイド イン ワリオ ゴージャス』にて、日本語ボイスの採用やストーリー性の拡張と共にさらなる進化を遂げた。直近の新作『おすそわける メイド イン ワリオ』においてもそれを継承しつつ、少し行き過ぎだった部分については調整を図った形でうまくまとめられている。

 そうした変遷もあり、特に『まわるメイド イン ワリオ』以降からシリーズに入ったプレイヤーから見れば、『メイド イン ワリオ』シリーズにはキャラクターゲームとしてのイメージ、『コロコロコミック』的なテイストが強く印象づいているかもしれない。

 主人公のワリオ本人も、このシリーズでは本来のキャラクター性である「強欲さ」がクローズアップされているなど、ワイルドで一途なヒーローとして描かれた『ワリオランド』シリーズとは対照的になっている。仲間から反発を受ける自己中心的な行動に出たり、その果てに大失敗を仕出かす一幕も描かれるなど、まるで『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の主人公・両津勘吉のようである。

 そんなテイストが定着した現行シリーズに触れてから、あらためて初代『メイド イン ワリオ』で遊んでみると、その雰囲気の違いを強く感じやすい。基本的にはギャグを主体として、個性の強いキャラクターたちが騒動を巻き起こすといった展開で、以降の作品でも健在な部分はあるが、初代には独特の「どこかシュールな雰囲気」が漂っている。キャラクターがやたらカッコよく映し出されたり、サイレントコメディ的な展開が繰り広げられたり、アメコミ風のカットが挟まれる演出はその一例だ。(一応、後発の続編にも「ピザダイナソー」なるアメコミ“すぎる”キャラクターは存在するが)

 そうした“シュール味”が初代では強く、それによって独自の魅力を醸し出しているのである。

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