自身の選択がライブの演目を左右する『Red Bull Jukebox 2023』に見た、音楽イベントの"新たな可能性"

 優里に歌ってもらいたい曲をその場でファンが決める「LIVE PICK」では、ちょっとした嬉しいハプニングも。「シャッター」と「レオ」の2曲のうち、オーディエンスの拍手の大きさによって披露曲を決めるという本企画。しかし、ここでどちらの拍手も示した数値は同じ95デシベルと奇跡的な展開が起こる。そのため、急遽2曲とも披露されることになったのだ。この不測の事態にも優里は臨機応変に対応、両曲とも難なく歌いこなし、ファンを喜ばせた。

 続いて「人として」と「かごめ」では、優里が選んだゲストであるSUPER BEAVERの渋谷龍太がステージに登場。2人の抜群の歌唱力に会場全体が聴き入る。鬼気迫るような2曲のパフォーマンスを歌い終えると、2人の見事な歌声に拍手喝采が鳴り響いた。

©︎Suguru Saito / Red Bull Content Pool

 ライブも終盤を迎え、ここでおこなわれたのは当日投票で見たい演出が決まる「FAN PICK」企画。これにより、優里がトロッコに乗って会場を周遊する演出が行われた。広い会場のため、それまで後方席のファンは肉眼で優里を見ることは困難だったが、この演出によって後方席も含め、会場全体のファンが湧く。

©︎So Hasegawa / Red Bull Content Pool

 会場が熱気に包まれたところで、投票によって披露曲が決まる「GREATEST HITS PICK」へ。選ばれた「メリーゴーランド」、「ベテルギウス」を力強く歌い上げると、優里はMCでこう話しはじめた。

©︎Suguru Saito / Red Bull Content Pool

「今日まで、僕の前にはいろんな選択肢がありました」

 そして、こう続ける。

「ロックバンドをやってみたり、介護士をやってみたり、諦めきれずにまた音楽をやってみたり……ここまでたくさんの選択をしてきました。今日みんなに伝えたいのは、一人ひとり、自分の人生を選択することを怖がらないでほしい。そんな歌を歌います」

©︎Suguru Saito / Red Bull Content Pool

 披露したのは「ビリミリオン」。曲中に〈僕が生きる理由は/僕が決めるから〉という印象的なフレーズのあるこの曲は、まさに「このライブの筋書きは、君次第。」と掲げているこのイベントにふさわしいものであった。ラストは〈頑張ろう 頑張ろう 頑張れ〉の歌詞を会場全員で大合唱。今後の人生を自ら選択していくことを、ファンが誓ったような一幕であった。アンコールでは「飛行船」を歌唱。会場には飛行船型の巨大風船も飛び、この日を彩った。

©︎So Hasegawa / Red Bull Content Pool

 優里を中心に行われた今回の『Red Bull Jukebox 2023』。しかし、終わってみればこのイベントを作り上げたのは、会場に居合わせた人たち全員であった。ひとりひとりの選択が、ライブで披露される楽曲や演出、果ては一人のアーティストの人生までをも左右するという、全員が主役となって作り上げるこのイベントに、音楽ライブの新しい形を見たような気がした。

©︎Suguru Saito / Red Bull Content Pool

〈写真=©︎Suguru Saito, ©︎Keisuke Kato, ©︎So Hasegawa/Red Bull Content Pool〉

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