“表現者”として世界に入り込む GACKTがゲーム業界に与えた3つのインパクトを振り返る

GACKTがゲーム業界に与えた3つの衝撃

 2023年の元旦、親戚への挨拶回りもおおかた済ませた夕方ごろ、筆者は芸能人が格付けしあう某テレビ番組を見ていた。そこで2年ぶりに姿を現したのが、同番組で脅威の65連勝(当時)を達成していたGACKTだ。ただものでは無いオーラを纏い、威風堂々と格付け合戦に参加するGACKT。スタジオの空気や視聴者の期待にしっかりと応えるその姿は、もはや同番組の風物詩と言っても差し支えないほどだった。

 GACKTと言えば、1990年代から音楽業界で実績を収めてきた男性アーティストだ。1995年から1999年までロックバンド「MALICE MIZER」に参加(2代目ボーカル)した後、1999年にソロアーティストデビューを果たす。デビューシングル「Mizerable」を皮切りとし、2000年代初頭から精力的にシングル/アルバムを展開。音楽活動のみに限らず、モデル・俳優・声優……と多岐にわたってチャレンジすることでも知られている。2007年にはNHK大河ドラマ『風林火山』にて越後の竜・上杉謙信を演じたほか、2019年2月公開の映画『翔んで埼玉』では二階堂ふみとW主演を務め、日本アカデミー賞の優秀主演男優賞を受賞。2021年9月に活動を一時休止するも、2022年5月から再び芸能活動を再開させた。

GACKT「Vanilla」 MUSIC VIDEO

 自身を”表現者”と形容し、多分野で己の世界観を描き続けてきたGACKT。その一例にはゲーム関連コンテンツも含まれており、テーマソングの作詞作曲をはじめ、さまざまな手法でゲーム作品と関わり続けている。本稿ではこれまでの活動に敬意を表し、GACKTがゲーム業界に与えた3つのインパクトを振り返る。

『FF』に『武刃街』……ビデオゲームに入り込んだGACKTのチャレンジ精神

 音楽アーティストがゲーム作品向けにタイアップソングを手掛けることは珍しくないが、「アーティスト自身がゲームの世界に入る」のは中々ない事例だろう。というのも、楽曲提供とは異なる経費や手間がかかり、アーティスト自身がゲームの作風とマッチしていないとキャラクターとして実装するのが難しくなるからだ。「アーティストを主役に据えてゲーム作品を作る」といった手法も同様で、企画段階から多額の予算および人材が必要になる。厳密にはケースバイケースと言えるものの、音楽アーティストとゲームのタイアップは楽曲提供のみにとどまることが多いと言える。

『ダージュ オブ ケルベロス-ファイナルファンタジーVII-』 - 「ジェネシス」

 しかしGACKTはテーマソングの作詞作曲にくわえ、物語に深みをもたらす重要キャラクターとしてデジタルの世界に足を踏み込んだ。2006年1月26日発売のPlayStation2(PS2)用ソフト『ダージュ オブ ケルベロス-ファイナルファンタジーVII-』(DCFF7)にて、GACKTは「REDEMPTION」(テーマソング)・「LONGING」(挿入歌)の2曲を自ら手がけただけでなく、同作品の真エンディングにて姿を現す「ジェネシス」役を務めた。決意を胸に月夜を見上げるその顔つきは、劇中の作風と上手く調和していたように思う(約2分と短い出演ではあったが)。その後、GACKTは『クライシスコア ファイナルファンタジーVII』にもジェネシス役で出演。イベントシーン等で印象的な立ち回りを演じきっている。

『武刃街』-「劉王羽」

 また「ファイナルファンタジー」以前には、ハイスピード武侠アクションと謳われたPS2用ソフト『武刃街』にもキャラクター出演済み。こちらはGACKTが制作段階から携わっており、主人公「劉王羽」の3Dモデルおよび声優を担当している。意味深なメッセージ性を秘めていた『DCFF7』とスタイリッシュに3D空間を駆け巡る『武刃街』。ジャンルこそ違えど、両者ともビデオゲームに対するGACKTのチャレンジ精神が表出した作品だと言えるだろう。

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