「耳が聞こえない夫」と「聞こえる妻」の夫婦YouTuberが感じた『silent』への"共感と違和感" 「実際には割と冷たい人もいる」

当事者夫婦YouTuberが語る『silent』への"共感と違和感"

――ほかの動画の企画についても聞かせてください。普段は家族の日常を切り取っているとのことですが、ファミリーチャンネルをやることに難しさを感じるときはありますか。

とと:疲れているときとか、出たくないということもあります。

ゆうこ:かいちゃんが、いずれ出たくないと言うときもくるだろうなと思うので、YouTubeの軸は私たち2人じゃないといけないと私は思っていたんです。視聴者のみなさんに「かいちゃんが見たい、かいちゃん大好き」と言われても、かいちゃんを軸にしてしまうことで、その形が壊れたときに続かなくなってしまいます。なんとかして夫と2人でというふうにはずっと考えていましたが、それがこの『silent』でちょっと叶ったのかなという嬉しさはあります。

――やはりお子さんが出ている動画はかわいいし、子育てのことが知りたいという声も多いと思います。でもお子さんが大きくなったときに、これは友だちには見せたくなかったのにということも出てきてしまうかもしれませんよね。その辺りについて思っていることがあれば教えてください。

ゆうこ:そこはやはり子ども次第なのですが、私としては、この環境を利用できる子どもに育ってほしいと思うんですよ。でもそれを判断するのは子ども自身なので何とも言えないのですが。

とと:いまは出たいと言って出ています。でも出ることの意味はあまり深くわかってなくて。

ゆうこ:私は、やりたくないのに2歳からずっと日本舞踊を習っていました。小学生のときに勉強を頑張りたいと嘘をついてやめたのですが、習っていたころは学校の運動会をお休みしないといけないこともありました。学校のイベントよりも日本舞踊の世界を私に優先させた親のことは正直理解ができないと思うこともありますよ。でも日本舞踊があったからこそというものが私の中にあるのも事実。ですから、この環境は私たちの間に生まれたから仕方ないと思ってもらい、あとからそれを利用できるような子に育ってくれればという理想はあります。

――動画の編集はゆうこさんがやっているとのことですが、工夫している部分はありますか。

ゆうこ:自然な感じを動画の中で表現したいので、いまから撮りますということでなく、いつの間にか撮れている状態を作っています。その分撮影の時間が長くなり、10分の動画に2~3時間くらい平気で撮っていることも多い。ですから編集には本当に時間がかかってしまいます。いかに自然な姿を撮れるかということを意識しています。

――私が個人的にとても気になったポイントは、すべての音を「見える化」しているところです。テロップを入れるのはとても大変だと思いますが、非常に面白い試みだなと思いました。実際チャンネルを見ている方で、ととさんと同じように聴こえない境遇の方に向けて音を入れているという側面はあるのでしょうか?

ゆうこ:ありがとうございます。そこはいろいろなことが重なっているのですが……。実は私は高校生のときに漫画家になりたかったんですよ。だから(漫画の擬音のように)音をテロップで見せるのは自分の中では特別なことではないんです。それに耳が聞こえない人も漫画は楽しめるじゃないですか。そういう自分の中での良いと思うことが重なって今の動画に繋がっています。すべてが夫のためというよりは、結果として夫のためになったという感じです。

――ご自身の経験が生かされているところも大きいのですね。これから「みゆみゆチャンネル」をどのようなチャンネルにしていきたいと考えていますか。

ゆうこ:現状維持ができたらいいなと思います。自分たちもそんなに若くはないのでYouTubeで発信する期間もそう長くは残されていない。だから、いずれは自分たちが築き上げたものを子どもに託せたらいいなと思います。そこは残せる相手がいればですが。

――アカウントやチャンネルごと娘さんに譲ってしまうかもしれませんね。

ゆうこ:あると思います。私はYouTubeチャンネルというのは資産だと考えていますので。これは自分たちの子どもや孫にいい形で引き継げることができたら最高だし、今やっていることは何も無駄じゃないというふうに思います。

――ととさんは、どうですか。これからやってみたい企画、挑戦してみたいことなどあれば教えてください。

とと:いま考えているものは特にありませんが、これから孫が生まれるので動画制作も一緒に楽しめたらいいなと思います。

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